米USTR、過剰生産能力巡り301条調査開始、日本など16カ国・地域対象、追加関税の可能性
(米国、日本、韓国、中国、台湾、EU、スイス、ノルウェー、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インド、バングラデシュ、メキシコ)
調査部米州課
2026年03月12日
米国通商代表部(USTR)は3月11日、日本を含む16カ国・地域の製造業における過剰生産能力や過剰生産に関連する政策や慣行について、1974年通商法301条に基づく調査を開始したと発表
した。調査結果によっては、対象国・地域の製品に対して追加関税などの輸入制限措置が講じられる可能性がある。
301条は、外国の措置、政策、慣行が不合理または差別的であり、米国の商業に負担や制限を与えるなどと調査を通じて判断された場合に、大統領の指示に従い、外国の製品に追加関税など輸入制限措置を講じる権限や、外国のサービスに料金や制限を課す権限などをUSTRに認めている。米国が2018年7月以降に中国原産品の輸入に課す7.5~100%の追加関税や(2024年12月12日記事参照)、2025年10月以降に外国建造船などの入港に課すサービス料金(ただし、2026年11月まで適用停止中、2025年11月11日記事参照)などの措置も同条に基づく。
USTRは、調査の開始と同時に公表した官報案
で、米国の主要貿易相手国・地域は国内外の需要動向と連動しないかたちで生産能力を拡大してきたと指摘し、こうした過剰生産能力が主要貿易相手国・地域の製造業(注1)における過剰生産、大規模で持続的な貿易黒字、生産設備の低稼働・非稼働の状態を生じさせていると問題視した。また、こうした状況が、サプライチェーンの国内回帰や高賃金雇用の創出を目指す米国の取り組みにとって深刻な課題となっているとの認識を示した。
調査対象には、日本、韓国、中国、台湾、EU、スイス、ノルウェー、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インド、バングラデシュ、メキシコの16カ国・地域が挙げられている。USTRは日本を対象とした理由について、「構造的な過剰生産能力と過剰生産の兆候がある」と説明し、自動車・自動車部品、光学・写真・技術・医療機器などの分野で米国や世界に貿易黒字を計上することを例示した。
今後、USTRは3月17日から4月15日まで、ウェブサイト
で301条調査に関連するパブリックコメントを受け付けるほか、5月5日から首都ワシントンで公聴会を開催する。また、USTRは調査開始と同時に、調査対象国・地域に協議を要請したことも明らかにした。
調査期間は、貿易協定に該当しない案件の場合、調査開始から12カ月の期限が規定される(注2)。ただし、USTRのジェミソン・グリア代表は2月20日に、今後の301条調査について、「迅速なスケジュールで実施する」との意向
を示しており、12カ月の期限を待たずに調査を完了させるものとみられる。トランプ政権は、2月24日から全貿易相手国・地域に1974年通商法122条に基づく10%の関税を適用している。122条関税は連邦議会が延長に同意しない限り150日後(7月24日)に失効するため、今回の301条調査に基づく措置がそれまでに導入される可能性もある。
なお、グリア代表は、301条調査を通じて、過剰生産能力の問題に加え、外国の強制労働、医薬品の価格設定慣行、米国テック企業およびデジタル製品・サービスに対する差別的措置、デジタルサービス税、海洋汚染、水産物・コメなどに関する貿易慣行といった米国の懸念事項に対処する意向を示している。そのため、これらの分野について、今後新たに301条調査が開始される可能性もある。実際にグリア代表は、3月11日の記者会見で、60カ国・地域の強制労働慣行に関する301条調査を開始する考えも示唆した(通商専門誌「インサイドUSトレード」3月11日)。
(注1)USTRは官報案の中で、過剰生産能力に直面する産業の代表例として、アルミニウム、自動車、バッテリー、セメント、化学品、電子機器、エネルギー関連製品、ガラス、工作機械、機械、非鉄金属、紙、プラスチック、加工食品・飲料、ロボット、衛星、半導体、船舶、太陽電池モジュール、鉄鋼、輸送機器を列挙した。
(注2)具体的な手続きは、同法302~309条で規定される。301条に基づく調査や発動の手続きは、2024年12月10日付地域・分析レポート参照。
(葛西泰介)
(米国、日本、韓国、中国、台湾、EU、スイス、ノルウェー、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インド、バングラデシュ、メキシコ)
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