米USTR、2026年外国貿易障壁報告書を公表、相互貿易協定に基づく取り組みを記載、301条調査との関連も
(米国)
ニューヨーク発
2026年04月02日
米国通商代表部(USTR)は3月31日、2026年版の「外国貿易障壁報告書(NTE)」を公表
した。NTEは、米国企業の輸出や投資に対して障壁となる外国の貿易慣行などについて、主要国・地域別に示した報告書で、1985年以降、毎年公表している。
2026年版のNTEは、前年の59カ国・地域から増え、63カ国・地域を対象とした。多くのページを割いたのは、中国(52ページ)、EU(45ページ)、湾岸協力会議(GCC、27ページ)、インドネシア(21ページ)、インド(19ページ)などだった。日本には12ページを割いた。NTEでは、各国・地域の貿易障壁を、輸入政策(関税など)、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生植物検疫(SPS)、政府調達、知的財産保護、サービス障壁、投資障壁、補助金、非競争的慣行、国有企業、非市場的政策および慣行(NMPPs)、労働、環境の主に13分野に分けて記載した。このうち、NMPPsは前年度の主要分野には含まれておらず、今回新たに加えられた(注1)。NPMPPsには、特定産業を対象に当該国の国内企業による支配を目的とした産業計画の策定・推進、米国からの輸入品ではなく国産品を購入するような圧力、非市場的な過剰生産能力の創出・維持、第三国の非市場的な政策や慣行に対処するための措置の欠如、などが含まれる。
NTEではまた、これまでに米国が結んだ相互貿易協定(ART)を列挙した(注2)。その上でARTには、米国の輸出拡大と輸入依存度の低減により、貿易収支を均衡させることを目的に、(1)貿易相手国による米国からの輸入品に対する関税および非関税障壁の大幅な引き下げ、(2)米国による貿易相手国からの輸入品に対する修正関税(最恵国待遇税率を上回る追加関税)の維持、という要件が盛り込まれていると説明した。今回のNTEには、ARTの条項がどのように貿易障壁に対処しているのかについて、具体例が記載されている(注3)。
なお、2026年のNTEは、USTRが進める1974年通商法301条に基づく調査との関連で注目されている。2026年2月に連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税などを無効と判断した後、トランプ政権は2月24日から、同法122条に基づき、輸入品に対して10%の課徴金を課している(2026年2月24日記事参照)。その後、USTRは301条に基づき、3月11日に16カ国・地域を対象に過剰生産能力について(2026年3月12日記事参照)、翌3月12日に60カ国・地域を対象に強制労働産品の輸入禁止措置について(2026年3月13日記事参照)、調査を開始した。122条に基づく課徴金が7月24日に期限を迎えることから、その前に301条調査を終え、新たな関税措置を導入するとみられている。ただし、301条に基づく調査は、通常、1カ国当たり12カ月程度の調査期間を要する(注4)。仮にトランプ政権が7月24日までに調査を終え、同法に基づき新たな輸入制限措置を取る場合、301条調査は4カ月程度で終える必要がある。そのため、NTEによる調査結果を活用する可能性が指摘されている。
(注1)前年度主要分野として記載されていたデジタル貿易障壁は、2026年度版ではサービス障壁に含まれている。
(注2)NTEでは、ARTに署名した国・地域として、アルゼンチン、バングラデシュ、カンボジア、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、インドネシア、マレーシア、台湾を、枠組み合意した国・地域として、EU、インド、日本、韓国、北マケドニア、スイスおよびリヒテンシュタイン、タイ、ベトナムを挙げている。
(注3)米国はARTを通じて、米国が安全保障上の理由で特定国・地域からの輸入に関税を課した場合などに、相手国・地域にも米国と同様の措置を取るよう求めている。詳細は2026年2月6日付地域・分析レポート参照。
(注4)301条は、外国の通商慣行が貿易協定に違反している場合や、不合理・差別的である場合に、大統領の指示に従ってUSTRに輸入制限措置を発動する権限を与えている。ただし、制限措置の発動前にUSTRによる調査が必要となる。301条の詳細については、2024年12月10日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国)
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