米USTR、ブラジルの高関税や非関税障壁、金融サービスによる米国企業の不利益を指摘、2026年外国貿易障壁報告書(ブラジル編)

(米国、ブラジル)

調査部米州課

2026年04月03日

米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2026年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2026年4月2日記事参照)で、ブラジルに関して、前年から2ページ拡大して、8ページを充てた。

冒頭では、2022年2月に発効した米国とブラジル間の貿易・経済協力協定(ATEC:Agreement on Trade and Economic Cooperation)の改訂版を挙げ(2020年10月21日事参照)、2国間の貿易投資において、「事務手続きの簡素化」等により透明性の高い環境が整ったと評価した。

ブラジルの関税率は、自動車、自動車部品、情報技術・電子機器、化学製品、プラスチック、産業機械、鉄鋼、繊維製品など幅広い分野で、比較的高いと記載した。ブラジルでは、多くの乗用車について、MFN税率がWTO上の譲許税率である35%に設定されている。また、ブラジルが加盟する関税同盟であるメルコスールでは、一定数の品目について各国の裁量下で独自に関税率を設定することが認められている(2025年10月29日付地域・分析レポート参照)。こうした背景から、「米国輸出企業はブラジル市場において不確実性に直面している」と記した。

ブラジルが2017年9月以降、米国産のエタノールに対して課している関税措置について、米国は、ブラジルにおけるエタノール輸入の多くを米国産が占めていることから、当該関税率の低減を求めている。米国政府は、ブラジル側で賦課される米国産エタノールの輸入関税を、現状の18%から引き下げるよう要求している(2025年4月15日記事参照)。

非関税障壁については、ブラジル農業・畜産省(MAPA)や保健省傘下の規制当局である国家衛生監督庁(ANVISA)による許可を必要とする製品輸入に対して、「対象となる製品は公開されているものの、許可取得にかかる時間が明文化されておらず、透明性の欠如が米国からの輸出の弊害になっている」と批判した。ANVISAの認証取得対象製品は、医療機器、医薬品、衛生関連製品、食品など多岐に渡る。なお、米国企業のみならず、在ブラジル日系医療機器企業からも、特に危険度の高いクラスIIIやクラスIVに分類される医療機器の認証取得について、所要時間の明確化、短縮化、コストの低減化が求められている(注1)。

電子決済サービスでは、ブラジル中央銀行が運営する即時決済プラットフォーム「PIX」によって「米国企業が不利益を被っている」と懸念を表明している。PIXは2020年11月に運用が開始され、企業間および個人間でのスマートフォンなどによる支払い、振り込み、送金などを低コストで、24時間365日実施できる(2020年12月1日記事参照)(注2)。中央銀行は、50万口座を超えるブラジル国内の金融機関に対し、PIXの利用を義務付けている。

なお、USTRは2025年7月、ブラジルの不公正な貿易慣行に関する1974年通商法301条に基づく調査を開始したと発表した(2025年7月17日記事参照)。USTRは、ブラジルの(1)デジタル貿易および電子決済サービス分野における米国企業に対する措置や制限、(2)特定国に対する不公正な特恵関税の適用、(3)腐敗行為などに対する不十分な取り締まり、(4)知的財産権の不十分な保護や侵害対策、(5)米国のエタノールに対する高関税の賦課、(6)違法な森林伐採に対する不十分な取り締まり、の6項目を挙げている。

(注1)詳細は、ジェトロレポート「ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)の認証・登録制度に関する概要(2021年3月)」参照。

(注2)PIXの利用者数は急拡大しており、中銀によれば、2026年3月時点で国内のPIX利用者は約1億7,005万人(うち法人利用が1,599万人、個人利用が1億5,406万人)。ブラジルの人口は2億1,161万人。

(辻本希世)

(米国、ブラジル)

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