中国当局、動力電池や蓄電池の有力企業に過当競争抑制や合理的で秩序ある海外進出を指導

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年12月08日

中国工業情報化部(以下、工信部)の発表(12月1日付)によると、同部は11月28日、動力電池および蓄電池産業の有力企業12社(注1)を集めた座談会を開催した。

座談会に出席した工信部の李楽成部長(同部の中国共産党組書記を兼務)は、中国共産党中央委員会(党中央)が同産業の発展を非常に重視しているとし、中国における電池産業の発展は急速であり、市場規模、イノベーション能力、産業体系などにおいて世界的な競争優位を築いていると評価した。その一方で、同産業の発展には依然として少なくない課題が存在するとも指摘した。

李部長はその上で、同産業の発展状況を客観的に認識し、党中央が「内巻」式の競争を総合的に是正するために策定した政策(注2)を厳格に実施すること、ターゲットを絞った政策措置の実施を加速すること、電池産業の非理性的な競争を法律や規定に基づいて是正すること、生産能力のモニタリングやアラート、およびマクロコントロールを強化すること、製品の品質に対する監督検査を強化することなどを表明した。

また、企業に対しては、生産能力の配置を科学的に行い、「出海」(中国企業の海外展開を指す)を合理的かつ秩序あるものとするよう指導するとした。

さらに、李部長は、非理性的な競争行為を断固抑制するようあらためて求めるとともに、企業に対して、研究開発投資の増加や弱点の補強によってコア競争力を向上させること、産業チェーンを通じた他企業との協力・連携を強化しシナジー効果を発揮すること、産業チェーンの自主コントロールレベルを高めることを要請し、業界団体には産業による自主規制や互恵的な産業エコシステムの構築を求めた。

中国では、各業界で「内巻」是正に向けた行政指導や業界による取り組みなどの動きが広がる中、有力産業である動力電池・蓄電池業界にも今回その波が及んだかたちとなる。バッテリー式電気自動車(BEV)のコストの多くを占めるとされる車載電池や再生可能エネルギーの普及・利用で重要な蓄電池において価格面などでの対応が進むのか、今後の具体的な取り組みなどが注目される。

(注1)報道によると、同会議には、最大手電池メーカーの比亜迪(BYD)の王伝福董事長をはじめ、寧徳時代新能源科技(CATL)、恵州億緯鋰能(EVEエナジー)、中創新航科技(CALB)、国軒高科(ゴーション・ハイテク)、欣旺達(Sunwoda)、トリナ・ソーラー(天合光能)など、有力電池メーカーなどの企業のトップや幹部が参加したとされている(「新浪科技」12月1日、2025年5月20日記事参照)。

(注2)中国では近年、「内巻」と称される過度な価格競争が見られ、特に自動車市場などで問題視されており、政府や業界、企業が各種対策や取り組みを打ち出している(2025年7月25日付地域・分析レポート前編後編2025年6月9日記事9月24日記事10月16日記事2025年12月4日付地域・分析レポート参照)。

(小宮昇平)

(中国)

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