中国自動車工業会、自動車産業の過当競争を是正するための提案を発表
(中国)
上海発
2025年06月09日
中国自動車工業会(CAAM)は5月31日、「公平な競争秩序の維持、産業の健全な発展を促進する提案」を発表した。中国自動車工業会はこの発表で、「5月23日以降、ある自動車メーカーが大幅な値下げ活動を開始し、多くの企業がそれに従い、新たな『価格戦争』のパニックを引き起こした」と指摘した。その上で、「無秩序な『価格戦争』が悪質な競争を激化させ、企業利益をさらに圧縮し、製品の品質やアフターサービス保証に影響を与えている」とし、これについて「産業自体の健全な発展を阻害するだけでなく、消費者の利益を損ない、安全上の危険をもたらす」との見方を示した。
このような状況を踏まえ、中国自動車工業会は次の4点について提案を行った。
- すべての企業は、公平な競争の原則を順守し、法律と規則に従って経営活動を展開する。
- 優位企業は、市場を独占するために、他の企業の生存空間を圧迫し、その合法的権益を損なうことがないようにする。
- 企業はコストを下回る価格で販売せず、消費者を誘導する虚偽の宣伝を行わない。
- すべての企業は、国家の関連法令に従って、自己調査と修正を行う。
同日、工業情報化部は公式アカウントの中で、中国自動車工業会の提案に賛同し、自動車業界の「内巻式」競争(注)の是正を強化することや公平な秩序ある市場環境を維持し、消費者利益を守り、自動車産業の質の高い発展を推進することを発表している。
中国自動車メーカーのBYDは、5月23日以降、22車種の販売価格を値下げすると発表していた。最も低価格帯の小型純電動車「海鷗(シーガル)」は5万5,800元(約111万6,000円、1元=約20円)となっていた。また、これに続き、吉利汽車なども価格値下げに追随していた。
全国乗用車市場情報聯席会(CPCA)の崔東樹・秘書長は5月10日、自身のWeChatアカウントで、2025年1~4月の自動車販売価格の値下げに関し、新エネルギー車(NEV)の平均値下げ額は2万7,000元、ガソリン車の平均値下げ額は1万8,000元に達したと発表している。また、2025年1~4月の自動車産業の売上高利益率は4.1%と、2024年平均の4.3%を下回り過去最低を記録しているとも指摘した。中国の自動車市場における値下げ競争および収益性の悪化については、問題視する声が相次いでいた。
こうした値下げ競争の是正に向けた中国自動車工業会および中国政府による今回の動きは注目を集めている。
(注)過度な競争のこと。
(神野可奈子)
(中国)
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