トランプ米大統領、11月から対中追加関税100%を発動の意向、中国のレアアース輸出管理強化に反発
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年10月14日
米国のドナルド・トランプ大統領は10月10日、SNS投稿を通じて、中国の希土類(レアアース)の輸出管理措置への対抗措置として、11月1日から中国に100%の追加関税を課すとともに、重要ソフトウエアの輸出管理措置を適用する意向を表明した。
中国政府は10月9日に、レアアースおよび関連製品・材料・技術の輸出管理を強化する措置を発表(2025年10月14日記事参照)した。トランプ氏は同投稿で中国の措置について、「中国が非常に攻撃的な姿勢を示した」「中国が製造する製品だけでなく、中国が製造していない製品に対しても大規模な輸出管理を実施すると表明している」「これは国際貿易において前代未聞で、他国との取引における道義的冒涜(ぼうとく)だ」などと批判した。
トランプ氏は、100%の追加関税について、既存の関税に上乗せされると説明したほか、中国の対応次第で適用開始を早める可能性も示唆している。なお、10月10日時点で米国は中国に対し、一部品目を除き、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき30%(注1)の追加関税、1974年通商法301条に基づきおおむね25%の追加関税を課している。仮に100%の関税が上乗せされれば、対中関税率は多くの品目で155%程度に達すると見込まれる。また、輸出管理強化を表明する重要ソフトの具体的な説明はないが、米国は2025年5月に特定企業の半導体設計ソフトの輸出管理を強化している(2025年5月30日記事参照)。
トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、10月27日から11月1日まで韓国・慶州で開催予定のAPEC首脳会合に合わせて首脳会談を実施する見通しだったが(2025年9月24日記事参照)、トランプ氏は10月10日に対抗措置の意向表明と別の投稿で、「いまや(首脳会談の)必要性は失われたようだ」と述べ、取りやめも示唆している。
米中両国は、トランプ政権の発足以降、関税に加えて輸出管理の分野でも応酬を続けてきた(注2)。最近では、米国が9月に中国の19事業体を、10月に23事業体
を輸出管理の「ブラックリスト」に当たるエンティティー・リスト(EL)に追加した。さらに、米国はEL掲載事業体の関連事業体に輸出管理の適用を拡大するなど(2025年9月30日記事参照)、輸出管理を強化していた。
中国の措置、米シンクタンクはFDPRに類似と指摘
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は10月9日、中国の措置の内容と米国への影響を解説する論考を公表した。CSISによれば、中国の措置により、外国企業が中国産のレアアースを使用して製造した磁石を輸出する場合、中国当局の許可取得が義務付けられる。CSISはこの措置が「中国が初めて『外国直接製品ルール(FDPR)』を導入したことを意味する」と指摘し、米国がこれまで先端技術分野で対中輸出管理を強化する際に用いてきたFDPRと同様の規制を、中国が米国に対して適用したと解説した。FDPRとは、米国の輸出管理規則(EAR)を米国外に域外適用する規則で、特定の米国製の技術・ソフトを使用して外国で生産された製品を輸出などするにあたり、米国当局の許可取得を義務付ける(注3)。
(注1)違法薬物の流入防止を目的とした追加関税20%、ベースライン関税10%(合計30%)。なお、米国は、対中相互関税の34%のうちベースライン関税10%を除いた24%の適用を11月10日まで留保している(2025年8月13日記事参照)。
(注2)トランプ政権の輸出管理の措置動向や政策展望は、2025年8月6日付地域・分析レポート参照。
(注3)FDPRの導入背景や活用経緯は、2024年1月15日付地域・分析レポート参照。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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