米相互関税は8月7日から適用、日本には15%、日米合意の実行に向けた米側の動向に注目

(米国、日本)

ニューヨーク発

2025年08月04日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月31日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく日本など69カ国・地域(注1)に対する相互関税率を変更し、それ以外の国・地域に引き続き10%のベースライン関税を維持する大統領令を発令した(2025年8月1日記事参照)。日本からの輸入に対する追加関税は、10%のベースライン関税から15%の相互関税に引き上げられる。ただし、相互関税率は当初の24%から15%に引き下げられた。

同大統領令によれば、変更された相互関税は2025年8月7日米国東部時間午前0時1分以降に通関した貨物に適用される。ただし、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税などに上乗せされない(注2)。日本原産品の輸入にあたっては、電子通関申告システム用の米国関税分類番号(HTSコード)9903.02.30を報告する必要がある。

なお、日本(2025年7月24日記事参照)や韓国(2025年8月1日記事参照)などの米国と合意を結んだ国・地域や、交渉を進める国・地域に対する相互関税は、「トランプ大統領が合意の条項を定める後続の命令を発令するまで〔同大統領令第2項(b)〕」適用すると記載されている。日本などに関しても、合意の詳細が確定するにつれ、将来的に米国の関税措置が変更される可能性はある。参考になるのが、米英合意の成立から実行までのプロセスだ。米英両国は関税交渉を通じて、米国の英国に対する10%のベースライン関税を基本的に維持しつつ、航空宇宙製品など一部の英国原産品は対象外とすることなどで合意した(2025年5月9日記事参照)。この合意にのっとり米国の関税措置を変更するため、トランプ大統領は2025年6月に「米英経済繁栄協定(EPD)の実行」と題した大統領令を発令した(2025年6月18日記事参照)。

なお、今回の大統領令では、232条に基づく自動車・同部品に対する追加関税率の変更などは盛り込まれなかった。相互関税率と一般関税率(MFN税率)の関係についても、引き続き詳細を精査する必要がある(注3)。

(注1)今回の大統領令は、中国に対する相互関税には影響しないと規定している。中国からの輸入に対しては8月12日まで24%の相互関税の適用が停止されている。中国国営新華社は、さらに90日間延長することで合意したと報道しているが、米政権からの発表はまだない(2025年7月30日記事参照)。

(注2)ジェトロの相互関税・ベースライン関税の概要資料PDFファイル(695KB)「対象外品目は?」を参照。

(注3)日本政府の発表資料によれば、日本からの輸入に対して、MFN税率が15%未満の品目にかかる関税率は、MFN税率と相互関税を合わせて15%が上限となる。MFN税率が15%以上の品目は相互関税が課されない(2025年7月28日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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