トランプ米政権、英国との通商交渉合意を発表、ベースライン関税10%は維持

(米国、英国)

ニューヨーク発

2025年05月09日

米国商務省は5月8日、英国との通商交渉で両国が合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ドナルド・トランプ大統領は4月2日に、世界各国・地域に10%のベースライン関税を課すとともに、各国・地域別に設定した相互関税を規定した大統領令を発表した(2025年4月3日記事参照)。このうちベースライン関税は4月5日に適用を開始した一方、相互関税は90日間の適用停止措置を講じており、米国と各国・地域が通商交渉を行っていた(2025年4月10日記事参照)。ベースライン関税と相互関税の発表後の通商交渉を通じて合意に至ったのは、英国が初めて。

商務省、ホワイトハウス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます米国通商代表部(USTR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの発表によると、主な合意内容は次のとおり。

  • 米国の英国市場アクセスを拡大し、50億ドルの英国への輸出機会を創出する。これには米国のエタノール、牛肉、果物、野菜、飼料、たばこ、貝類、化学品、繊維製品などが含まれる。
  • 米国の英国に対する10%のベースライン関税は維持する。
  • 1962年通商拡大法232条に基づく自動車への25%の追加関税(2025年4月3日記事参照)に関して、代替措置を設け、英国自動車メーカーの米国向け自動車輸出に対して、年間10万台まで10%、10万台を超える分は25%の関税を適用する(注)。
  • 232条に基づく鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税(2025年4月7日記事参照)に関して、代替措置を交渉する。また、鉄鋼・アルミニウムの貿易に関する連合(Trading Union)を創設する。

トランプ大統領は同日にSNS投稿を通じて、「英国との合意は、米英関係を今後も強化する全面的で包括的な合意だ」「現在、重大な交渉段階にある多くの他の取引も順次発表される予定だ」などと述べた。

一方で、USTRのジェミソン・グリア代表は同日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「英国が差別的なデジタルサービス税(DST)の適切な是正に同意しなかったことを遺憾に思う。DSTは差別的で不合理で、速やかに撤廃されるべきだ」などとして、引き続き両国の通商関係を問題視する姿勢も示した。

今回は米英両国が合意に達したとの発表だったが、代替措置について交渉を継続するとされているほか、詳細が明らかにされていない点も多い。今後のより詳しい発表が待たれる。

なお、トランプ政権が問題視する貿易赤字は対英貿易では発生してないため、4月2日に発表した相互関税は英国には設定されていなかった。2024年の財の対英輸出額は799億ドル、対英輸入額は681億ドルで、対英貿易は118億ドルの黒字だった。

(注)一般関税率(MFN税率)との関係は明らかになっていない。現時点で米国で乗用車を輸入する場合、関税率はMFN税率2.5%に232条に基づく追加関税25%を足した27.5%となっている。

(葛西泰介)

(米国、英国)

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