トランプ米大統領、米英合意の部分実施を発表、自動車・航空宇宙分野で対英関税削減

(米国、英国)

ニューヨーク発

2025年06月18日

米国のドナルド・トランプ大統領は6月16日、米英の通商協議を通じた合意内容を部分的に実施する大統領令を発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。近日中に官報で公示予定だ。

米英両国は5月に、2国間の通商協議を通じて、米国の農産品の英国市場へのアクセス拡大、英国の自動車の米国への輸入に対する関税割当(TRQ)の導入などを定めた、法的拘束力を持たない「米英経済繁栄協定」に合意したと発表した(2025年5月9日記事参照)。米国政府が公表した協定の一般条項外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、両国が合意内容の具体化や制度化に向けた協議を開始することが示されていた。その後、協議の進展を受けて、トランプ氏と英国のキア・スターマー首相は6月16日に、G7首脳会議の開催地のカナダで協定文書に署名していた(ロイター6月17日)。今回の大統領令の主な内容は次のとおり。

  • 1962年通商拡大法232条に基づいて25%の追加関税が課される英国の自動車(注1)の輸入に対してTRQを設け、年間10万台までは合計10%、10万台を超える分は合計27.5%の関税率を適用する(注2)。TRQは、官報公示日の7日後に発効する。
  • 232条に基づいて25%の追加関税が課される英国の自動車部品の輸入に対して、合計10%の関税率を適用する(注3)。税率変更は、商務長官が官報で公示した日に即日発効する。ただし、適用対象は英国で製造された自動車部品で、英国で製造された自動車に使用される場合に限る。
  • 英国の航空宇宙製品の輸入に対して、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく10%のベースライン関税、232条に基づく25%(注4)の鉄鋼・アルミニウム追加関税の適用を停止する。税率変更は、商務長官が官報で公示した日に即日発効する。
  • 232条に基づいて25%の追加関税が課される英国の鉄鋼・アルミ製品の輸入に対して、適切な時期にTRQを導入する。

なお、航空宇宙製品を除いてベースライン関税の適用停止に関する言及はないことから、米国は英国に対する10%のベースライン関税の適用を維持するものとみられ、引き続きトランプ政権発足前と比べて高い関税が残ることになる。また、232条に基づく鉄鋼・アルミ関税は今後TRQを導入するという暫定的な内容であるほか、米国の農産品の英国市場へのアクセス拡大などに関する詳細は明らかでなく、今後も米英両国で協議が続けられるものとみられる。

(注1)同大統領令では、(1)米国関税分類番号(HTSコード)8703項であり、(2)232条関税の適用対象の自動車と規定される。すなわち、8703.22.01、8703.23.01、8703.24.01、8703.31.01、8703.32.01、8703.33.01、8703.40.00、8703.50.00、8703.60.00、8703.70.00、8703.80.00、8703.90.01。

(注2)同大統領令では、年間10万台までは一般関税率(MFN税率)の2.5%にTRQの7.5%を足し合わせた10%の関税率を適用し、10万台を超える分は232条自動車関税に関する大統領令第10908号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで規定する関税率を適用すると規定している。大統領令第10908号は、232条自動車関税はその他の関税などに追加して適用すると規定していることから、10万台を超える分はMFN税率の2.5%に232条自動車関税の25%を足し合わせた27.5%の関税率を適用するものとみられる。

(注3)自動車部品に適用する10%の関税率には、自動車と同様にMFN税率を含む。232条自動車部品関税の適用対象は、ジェトロ作成資料「自動車関税の要旨PDFファイル(535KB)」参照。

(注4)米国政府は6月4日に、232条に基づく鉄鋼・アルミ関税の関税率を25%から50%に引き上げたが、英国製品に対しては関税率を25%に維持している(2025年6月4日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、英国)

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