日米関税協議、相互関税や232条自動車・同部品関税はMFN税率含め15%に

(米国、日本)

ニューヨーク発

2025年07月24日

日本の石破茂首相は7月23日の記者会見で「米国の関税措置に関する日米協議について、米国のドナルド・トランプ大統領との間で合意に至った」と述べた(首相官邸発表参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。トランプ氏は日本時間の同日、SNS投稿を通じて、日本と合意に至ったと明らかにしていた(2025年7月23日記事参照)。米ホワイトハウスはその後、日本との合意に関するファクトシートを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

石破首相の記者会見での説明によると、日本は米国からの輸入に対する関税を変更しない。一方で、米国は日本からの輸入に対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税率を15%に設定する。米国は4月5日から日本に対して10%のベースライン関税を適用しており(2025年4月11日記事参照)、合意後の追加関税率は5ポイント引き上げとなる。ただし、トランプ氏は8月1日から、10%のベースライン関税に代えて、25%の追加関税を適用する意向を表明していたことから(2025年7月8日記事参照)、これに比べれば10ポイント引き下げとなる。なお、赤澤亮正経済再生担当相の23日の説明では、一般税率(MFN税率)が15%未満の品目にかかる関税率は、MFN税率と相互関税を合わせて15%が上限となる。MFN税率が15%以上の品目は、MFN税率のみ適用され、相互関税は適用されない。

石破首相によると、米国が4月3日から適用している1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品に対する25%の追加関税については(2025年4月3日記事参照)、関税率を既存の税率を含めて15%に設定する。乗用車の輸入に対する米国のMFN税率は2.5%に設定されていることから、MFN税率2.5%と232条関税12.5%を累積して15%の関税率になるとみられる。232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品に対する50%の追加関税に関する言及はなかった。232条に基づく輸入制限措置の発動に向けた手続きが米国で進行中の半導体や医薬品などの品目について、石破首相は「経済安全保障上の重要物資について、仮に将来、(日本からの輸入に)関税が課される際も、日本が他国に劣後する扱いとはならないという確約を得ている」と述べた。

日本企業の対米投資に関しては、対米投資促進に向けて、政府系金融機関が最大5,500億ドル規模の出資、融資、融資保証の提供を可能にすることで合意した。具体的には、半導体や医薬品などの重要分野での日本企業が関与する対米投資に際して、国際協力銀行(JBIC)による出資・融資、日本貿易保険(NEXI)による融資保証の提供を想定する。

トランプ氏は米国時間7月22日、ホワイトハウスに連邦議会の共和党議員を招いたイベントでスピーチし、日本との合意について「史上最大の通商合意に署名した」「この合意は全ての人々にとって素晴らしいものだ」などと述べた。また、米国アラスカ州の液化天然ガス(LNG)関連事業に関して、「日本と契約を結ぶ」「ジョイントベンチャーを設立する予定だ」などと言及した。さらに、トランプ氏は23日、SNS投稿を通じて、米国製の乗用車やトラック、米国産のコメなどの日本市場へのアクセスが拡大すると強調した。

8月1日から発動予定の25%の相互関税の適用を回避するためには、同日までに大統領令や連邦官報を通じて関税の変更を公示する必要がある。そのため、少なくとも相互関税に関しては、今後1週間以内に米国政府から詳細が示されるとみられる。

(葛西泰介)

(米国、日本)

ビジネス短信 6d1fdfb672a49f9a