中国、3歳以下の子供に年間7万円超の補助金を支給
(中国)
北京発
2025年08月04日
中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁は7月28日、「育児手当制度実施プラン」を発表した。
実施プランでは、2025年1月1日以降、法律法規の規定に沿って出生した満3歳以下の乳幼児について、満3歳になるまで1人当たり毎年3,600元(約7万2,000円、1元=約20円)の補助金を支給するとした。2025年1月1日以前に出生した満3歳未満の乳幼児も補助対象とし、支給対象月数に応じて算出した額を支給する。なお、当該補助金は個人所得税の課税対象外となる(注1)。国家衛生健康委員会によれば、毎年2,000万余りの子育て世帯が補助対象となる見通しだ。
国務院が2024年10月に発表した「出産・育児支援に向けた政策体系整備の加速と出産・育児に優しい社会の建設に関する若干の措置」では、出産・育児手当制度の実施プランを策定することが盛り込まれており(2024年11月1日記事参照)、2025年3月5日に李強首相が発表した2025年の政府活動報告でも、育児手当の支給について言及されていた。
補助金支給のための原資については、東部、中部、西部の各地域に対し、定められた割合に応じて中央財政から補助金を交付するとした(注2)。各地方が独自に基準を引き上げた部分に必要な資金は、地方財政が自己負担する(注3)。支給時期については、各地方が現地の状況に応じて確定する(注4)。
国家統計局の発表によると、中国の出生数は2017年以降減少傾向が続き、2023年には902万人と2016年(1,789万人)からほぼ半減した。2024年の出生数は954万人と増加に転じたが、3年連続で1,000万人を下回った。中国政府は3人目の出産を容認するなど出産制限を緩和し少子高齢化への対応を進めている(2021年6月8日記事参照)。
首都経済貿易大学労働経済学院の姜全保教授は、育児手当の支給の効果について、「子育ての経済的負担をある程度軽減するが、出産を奨励するためには教育、保育、休暇、医療、住宅などの分野の支援など総合的な施策が必要だ」と指摘した(「第一財経」、7月28日)。
教育コストの引き下げに関して、7月25日に開催された国務院常務会議では、就学前教育の無償化を段階的に推進するための措置が打ち出された。各地方が実施プランを早急に具体化し補助金支給のための取り組みを行うよう指導すること、公立・私立幼稚園への補助政策を適切に調整すること、関連インフラ建設の強化や幼稚園教諭の待遇改善などが強調された。
(注1)2022年1月1日から3歳以下の乳幼児の養育費について、1人につき毎月1,000元を個人所得税の課税所得から控除することになった(2022年4月6日記事参照)。また、2023年1月1日からは同控除額が子供1人につき月2,000元に引き上げられている。
(注2)国務院が2025年7月30日に開催した記者会見で、財政部社会保障司の郭陽司長は中央財政が全体の約9割を負担すると言及し、2025年は「育児手当補助金」に約900億元の予算を割り当てるとした。
(注3)一部の地方ではこれまで独自の育児手当を導入しているが、補助内容は地域によってばらつきがある。例えば内モンゴル自治区フフホト市では、3人目以降の出産に対して年1万元の補助金を当該児童が満10歳になるまでの期間支給する政策を打ち出している。
(注4)国家衛生健康委員会人口家庭司の王海東司長は7月30日の記者会見で、現在、育児手当に関する情報管理システムの構築を行っており、8月31日までには各地で育児手当の受給申請の受付を開始する見込みと説明した。
(張敏)
(中国)
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