3人目の出産を容認、関連政策の整備が課題

(中国)

北京発

2021年06月08日

中国で5月31日に開催された中央政治局会議において、「出産政策の最適化による人口の均衡ある長期的発展の促進に関する決定」が審議され、夫婦1組につき3人までの出産を認める方針が示された。発表によれば、同方針は人口構造の改善、高齢化への対応、人的資本の優位性の維持にとって有益だとしている。

中国は少子高齢化に対応するため、1979年から導入していた「一人っ子政策」を徐々に見直し、2013年に「単独二人っ子政策」(注)を、2016年には全ての夫婦に2人目の出産を認める「二人っ子政策」を実施するなど、産児制限を段階的に緩和してきた。

他方、中国の毎年の出生者数は2017年以降、減少が続いている(添付資料図参照)ほか、国家統計局が5月11日に発表した第7回人口センサスの結果(2021年5月20日記事参照)によると、中国の合計特殊出生率は1.3となった。

南京大学人口・発展研究所の李建民教授は、1.3という数値は相当低く、出産政策の調整が必須だと指摘した上で、二人子持ち世帯が少ないため、今回の決定による短期的な影響は「二人っ子政策」より限定的で、効果を発揮するには、結婚に要する不動産コスト、出産・産児コスト、教育コストなどを引き下げるような関連措置を併せて整備することが必要だとコメントした。中国社会科学院人口・労働経済研究所の王智勇研究員も、今回の決定の効果は関連支援措置次第だと指摘し、二人子持ち世帯の多くは、乳幼児の保育、教育、医療などの面においてどのような支援措置が講じられるのかを注視していると述べた(「財経」5月31日)。

政府も、出産を実質的に支援するような政策を想定しているとみられる。2021年3月の全国人民代表大会で決定された第14次5カ年(2021~2025年)規画の目標に、1,000人当たりの3歳以下乳幼児預かり枠数について、2020年の1.8個から2025年に4.5個に増やすという政策目標が盛り込まれた(2021年3月9日記事参照)。また、今回の中央政治局会議においても、3人目の出産を容認する決定と併せて、結婚、出産、育児、教育を統一的に考慮すること、保育サービスの普及、公平・良質な教育サービスの提供、産休や出産保険の制度の完備、税や住宅などの面における支援策を強化することなどが強調された。こういった支援策が、今後どのように具体化されるか注目される。

(注)「単独二人っ子政策」とは、夫婦のどちらか一方が一人っ子である場合には2人目の出産を認めるという政策で、2014年1月から各省・自治区・直轄市で順次実施された。なお、夫婦が2人とも一人っ子の場合、2人目の出産を認める政策「双独二人っ子政策」は2002年から開始されている。

(張敏)

(中国)

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