中国、自然科学の論文数、注目論文数で1位、NISTEPが発表

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年08月15日

日本の文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は8月8日、日本の科学技術活動を体系的に把握するための基礎資料「科学技術指標2025」を発表した。情報サービス企業大手クラリベイトのデータを基に、自然科学分野の主要国の論文数などを分析しているが、論文数(2021~2023年平均)では、中国が59万9,435本で1位(全体に占める構成比29.1%)となった。米国が28万9,791本で2位(14.1%)、日本は7万225本で5位(3.4%)だった(注1)。

また、引用された回数が上位10%に入る論文数(Top10%補正論文数、2021~2023年平均)でも、中国が7万3,315件で1位(35.6%)、米国が3万2,781件(15.9%)で2位だった。日本は3,447件で13位(1.7%)だった。量を示す論文数よりも、注目度の高い論文数で中国の全体に占める構成比がより大きいことが分かる。ちなみに、2011~2013年平均で引用された回数が上位10%に入る論文数では、中国は1万4,920件の2位、構成比が11.8%だった。2021~2023年平均では構成比が20ポイント以上拡大しており、同分野の研究で近年急速に力を付けてきたことが分かる。

引用された回数が上位10%に入る論文数(2021~2023年平均)の分野別(注2)の国別構成比では、中国は材料科学(59.8%)、工学(49.9%)、化学(47.2%)、環境・地球科学(42.5%)で、それぞれ4割を超えて存在感を示した。米国の構成比が中国を上回った分野は臨床医学(28.1%)のみだった。各分野で米国の構成比が高かった上位3分野を挙げると、臨床医学、基礎生命科学(18.7%)、物理学(17.7%)となる。日本の構成比が高かった上位3分野は、物理学(3.2%)、臨床医学(2.7%)、化学(1.7%)だ。

中国の2025年3月の第14期全国人民代表大会(全人代)第3回会議の政府活動報告で示されたとおり、中国政府は2025年に取り組む重点任務に「各地の実情に即して新たな質の生産力(注3)を発展させ、現代的産業体系の整備を加速する」を掲げた(2025年3月6日記事参照)。具体的には、民間宇宙開発、低空経済、深海科学技術などの新興産業、バイオ製造、量子技術、エンボディドAI(人工知能、注4)、第6世代移動通信システム(6G)といった未来産業などを積極的に振興している。それらの振興に寄与する研究は着実に積み重ねられているとみられる。

(注1)機関レベルでの重み付けを用いた国単位での集計を行う分数カウント法による。例えば、日本のA大学、日本のB大学、米国のC大学の共著論文の場合、各機関は1/3と重み付けし、日本2/3本、米国1/3本と集計する。従って、1本の論文は、複数の国の機関が関わっていても、1本として扱われる。

(注2)化学、材料科学、物理学、計算機・数学、工学、環境・地球科学、臨床医学、基礎生命科学の8分野。

(注3)イノベーションが主導的役割を果たし、伝統的な経済成長モデルや生産力の発展ルートを脱した高い技術や効率、品質という特徴を備え、新発展理念に符合する生産力とされる。

(注4)物体を操作したり、人とコミュニケーションを取って物理的な作業を支援したりする、身体性を持つエージェントベースのAIシステム。

(宗金建志)

(中国)

ビジネス短信 0186707a65586ee7