トランプ米大統領、日本・フィリピンと関税協議で合意発表、インドネシアとは共同声明

(米国、日本、インドネシア、フィリピン)

調査部米州課

2025年07月23日

米国のドナルド・トランプ大統領は米東部時間の7月22日(日本時間は23日)、日本、フィリピンと関税協議でそれぞれ合意に至ったと自身のSNSで明らかにした。

トランプ氏はSNSへの投稿で「日本は5,500億ドルの対米投資を行い、米国はその利益の90%を受け取る。この協定は何十万もの雇用を創出する」「おそらくこれまでで最大の取引となる」と記した。また、日本に対する相互関税率は15%になるとした。トランプ氏は7月7日に公開した日本宛ての書簡で8月1日から25%の相互関税を課すとしていたが、合意により税率は10ポイント引き下げられた(2025年7月8日記事参照)。トランプ氏の発表は、訪米した赤澤亮正経済再生担当相との会談後に行われた。

トランプ氏は、ホワイトハウスでフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領と会談した後、同国との合意を発表した。トランプ氏のSNSへの投稿によると、フィリピンは米国産品に対する関税をゼロにする一方、米国はフィリピンに19%の追加関税を課す。フィリピンに対する相互関税率は当初17%に設定されていたが、トランプ氏は7月9日に公開した同国宛ての書簡で税率を20%に引き上げていた(2025年7月10日記事参照)。

トランプ政権は同日、インドネシアとの通商協定の枠組み合意に関する共同声明も発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

トランプ氏は7月15日にインドネシアとの通商協議で合意に達したと発表していた(2025年7月17日記事参照)。ホワイトハウスが発表したインドネシアとの共同声明によると、インドネシアは工業製品や食品、農産品など米国産品の約99%に対する関税を撤廃する一方、米国はインドネシアに対する相互関税率を32%から19%に引き下げる。また、米国とインドネシアは「協定の利益が主に両国にもたらされるような原産地規則」を交渉する。これは、第三国の産品がインドネシアを経由して米国に迂回輸入されることを防ぐことが念頭にあるとみられる。米国政府高官によると、非市場経済国の産品を一定割合含むインドネシアからの輸入品について、米国は40%の追加関税を課す方針という(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」7月22日)。

共同声明では、自動車や医薬品、知的財産、食品に関するインドネシアの非関税障壁への対処も盛り込んだ。インドネシアはデジタル貿易分野で、WTOにおける電子的送信に対する関税不賦課のモラトリアム(注)の恒久化への支持などを約束した。加えて、重要鉱物など工業製品の米国への輸出制限を撤廃するとした。両国は今後数週間かけて合意内容を確定し、協定発効に必要な国内手続きを行うとしている。

(注)インドネシアは、WTOにおけるデジタル製品の国際的取引に係る関税不賦課モラトリアムの2026年3月31日までの延長に合意し、デジタル製品など無形財について、関税率を0%としつつも、HSコード9901項を利用して輸入申告するなどの具体的な手順が規定されている(2024年3月13日記事参照

(甲斐野裕之)

(米国、日本、インドネシア、フィリピン)

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