日米関税合意、有識者は関税率引き下げを評価も、今後の協議内容注視と指摘
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年07月24日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月22日(米国東部時間)、日本と関税協議で合意したと発表した(2025年7月23日記事参照)。日本政府も23日(日本時間)、合意したことを明らかにした(2025年7月24日記事参照)。ジェトロがヒアリングした米首都ワシントンの日米関係に詳しい有識者からは、相互関税が発動予定の8月1日を前に合意に至ったことを評価する声と同時に、今後も継続されるだろう協議の行方を注視する必要があるといった指摘が聞かれた。
有識者からは、米国は10%のベースライン関税を堅持したいと考えており、これを下回ることは難しいと考えられていたことや、1962年通商拡大法232条に基づいて課している自動車・同部品への追加関税で、撤廃はならずとも現状の25%よりも低い税率で合意できたこと、米国の主要な貿易相手国の中では初めての合意であり、相互関税率が当初提示されていた25%から15%に引き下げられたことなどから、総合的にみて「想定よりも良い合意内容だった」との評価が複数聞かれた。
今後については、15%の関税率は「恒久的でないにしろ、比較的長期間継続されるだろう」とみられている。将来的に米国の関税措置に影響を与え得る要因には、関税措置などによるインフレへの影響や、相互関税の根拠となっている国際緊急経済権限法(IEEPA)に対する司法判断の行方などが挙がった(2025年6月12日記事参照)。また、EUや韓国など、米国の他の主要な貿易相手国・地域が今後、日本に対する関税率15%をベンチマークに協議を加速していくだろうとの指摘もあった。
今回の関税率と日米貿易協定との関係性や対米投資の詳細など、不明な内容が残されていることもあり、「今回の合意は、終わりではなく、出発点」「短期的には予見可能性が保たれたが、中長期的には不確実性が継続している」との意見もあった。
また、メキシコ、カナダから米国に自動車を輸入する際には25%の追加関税がかかっており、日本からの輸入の方が関税率は低くなることから(注)、2026年に控える米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しの議論にも注目する必要があるとの声も複数聞かれた。
今回の合意により、日本からの輸出で25%という関税率はいったんは回避できることになったものの、WTOによると、米国の2024年の単純平均関税率は3.3%となっており、米国への輸入に異例の高関税率が継続していることに変わりはない。中長期的に米国の関税率がどのようになっていくのか、引き続き注視する必要がある。
(注)USMCAの原産地規則を満たした車両の場合、非米国産分価値に対してのみ25%の追加関税が課される緩和措置が設けられている(2025年5月21日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、日本)
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