トランプ米政権、「米国第一の通商政策」報告書の要約発表、通商政策の方針示す
(米国、世界)
ニューヨーク発
2025年04月07日
米国のトランプ政権は4月3日、「米国第一の通商政策(AFTP)」に関する報告書の要約を公開した。ドナルド・トランプ大統領は就任初日の1月20日、商務長官、財務長官、米国通商代表部(USTR)代表などに対して、貿易赤字の原因など通商に関する広範な分野について調査し、4月1日までに報告するよう指示していた(2025年1月22日記事参照、注1)。
発表では、米国は無数の不公平で非互恵的な、ゆがんだ慣行を用いてきた諸外国に、雇用やイノベーション、富、安全保障を奪い取られてきたとし、その証左が米国の巨額かつ持続的な貿易赤字だとした上で、各調査指令に沿った調査結果を紹介している。
主な項目の詳細は次のとおり。
(第1章)貿易赤字の原因〔Section2(a)〕:米国が貿易相手国から受ける待遇に根本的な不公平性と互恵性の欠如があるとし、これらが米国の競争力を損ない、雇用を喪失させ、国家安全保障の衰退につながっていると批判した。貿易赤字削減のため、特定の輸入品への関税賦課などを大統領に提言した。
(第2章)外国歳入庁〔Section2(b)〕:創設の必要性をあらためて強調し、歳入徴収の仕組みを現代化することで、米国企業と納税者の双方に利益をもたらす公平かつ強制力のある貿易システムを再構築できる。
(第4章)米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の再交渉〔Section 2(d)〕:USMCAは米国に新たな市場アクセスをもたらし、米国への製造業の回帰を奨励したとしつつ、2026年7月の見直しにも触れ、非市場経済国のコンテンツ流入を減らすための原産地規則の強化など、数多くの変更が必要だ。
(第7章)市場アクセス確保〔Section 2(g)〕:新たな貿易協定は、農産物に関する非互恵的な障壁を撤廃し、サプライチェーンの強靭(きょうじん)性、製造業の米国内回帰、相手国との経済・国家安全保障を促進するかたちで、世界の貿易システムを再構築できると評価した上で、米国第一の通商協定の交渉に適した国やセクターを特定した。
(第13章)1974年通商法301条の見直し〔Secgtion 3(b)〕:措置が目的にかなったものであることを確認するために見直し結果を評価した(注2)。
(第14章)301条に基づく新たな措置の特定〔Section 3(c)〕:中国の非市場政策、慣行のさまざまな要素を検討した。
(第15章)恒久的正常貿易関係(PNTR)の評価〔Section 3(d)〕:PNTRに関連する立法案を慎重に検討し大統領に助言した。
(第17章)1962年通商拡大法232条に基づく新たな措置の特定〔Section 4(a)〕:医薬品、半導体、特定の重要鉱物など、新たな調査の開始を検討する分野を特定したと記載した。今後232条関税の対象になり得る品目は相互関税の対象外と発表されている(2025年4月3日記事参照)。
(第19章)輸出規制の見直し〔Section 4(c)〕:先端技術が敵対者に流出しないようにしなければならないとしつつも、輸出規制はシンプルで厳格かつ効果的であるべきで、同時に米国の人工知能(AI)の優位性を促進しなければならないとした(注3)。
(第23章)カナダ、メキシコ、中国からの不法移民や合成麻薬フェンタニルの流入に関する評価〔Section 4(g)〕:商務省と国土安全保障省が米国への不法移民、麻薬の流入をさらに食い止めるための対策を特定した(注4)。
(第24章)電子商取引〔Section 3(f)〕:電子的取引に関税が課されない「モラトリアム」が恒久化されるよう提言した(注5)。
なお、大統領に提出された報告書全文は非公開となっている。
(注1)行政管理予算局(OMB)長官に対して指示した、外国政府による補助金などが米国連邦調達プログラムに与える影響の評価などの報告期限は4月30日に設定されているが、その結果も今回の報告書に含まれている。また、トランプ氏が2月に指示した相互関税導入に向けた調査(2025年2月14日記事参照)と、外国のデジタルサービス税に関する調査(2025年2月26日記事参照)の結果も含まれている。トランプ氏は、4月2日に発表した相互関税はこの報告書に基づいていると述べている(2025年4月3日記事参照)。
(注2)301条に基づく措置は4年ごとに見直しが定められており、バイデン前政権は2024年12月に見直しを終えている(2024年12月12日記事参照)。
(注3)バイデン前政権では、AI向けの先端半導体などを中心に、輸出管理を強化してきたが(2025年1月14日記事参照)、トランプ氏はAI規制の緩和を指示している(2025年1月27日記事参照)。
(注4)トランプ政権は不法移民や合成麻薬フェンタニルの流入阻止を目的に、追加関税を課している(2025年3月4日記事、2025年3月7日記事参照)。
(注5)トランプ政権はデジタル貿易の障壁の撤廃を重視している(2025年4月2日記事参照)。
(赤平大寿)
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