トランプ米大統領、相互関税の適用停止と中国への税率引き上げの大統領令に署名
(米国、世界、中国)
ニューヨーク発
2025年04月11日
米国のドナルド・トランプ大統領は4月9日、56カ国・地域に対する相互関税を90日間停止する一方、中国に対しては同税率を引き上げて適用を継続する大統領令に署名した。トランプ氏は同日、SNSでその概要を発表していた(2025年4月10日記事参照)。
トランプ氏は4月2日、全ての国から輸入される実質的に全ての品目に10%の追加関税を課すベースライン関税と、大統領令14257号の付属書1(Annex I)に記載した57カ国・地域に対して、より高い追加関税を課す相互関税を発表した。ベースライン関税は4月5日から、相互関税は9日から有効になっていた(2025年4月3日記事参照)。だが、今回発表の大統領令では、相互関税の適用は、米国東部時間4月10日午前0時1分から7月9日午前0時1分までに通関された、中国を除く56カ国・地域の原産品に対して、停止することを定めた。この間に輸入された同国・地域の原産品に対しては、ベースライン関税の10%を適用する。相互関税を一時停止する背景について、大統領令では、相互関税の発表以降、付属書1に列挙した国・地域を含む75以上の国・地域が米国との経済関係で貿易の非互恵性と、その結果生じる国家安全保障、経済安全保障にかかる米国の懸念に対処するための交渉を申し入れてきたとし、これらの国・地域が非互恵的な貿易協定を是正し、経済や国家安全保障の問題について米国と十分に足並みをそろえるための重要な一歩と判断したためと説明している。
一方で、中国に対しては、4月10日以降に通関した製品に対する相互関税率を125%に引き上げる(注1)。さらに、中国の少額貨物に対する関税率の再度の引き上げも定めた。米国東部時間5月2日午前0時1分以降、国際郵便ネットワークを通じて中国または香港から出荷された輸入申告額が800ドル以下の少額貨物に対して(注2)、従価税を120%、または従量税を郵便物1件につき100ドル課す。従量税は6月1日以降、200ドルに引き上げる。中国の少額貨物に対する関税も、最近引き上げたばかりだった(2025年4月10日記事参照)。なお、中国の相互関税と少額貨物に対する関税の適用終了期限は定めていない。中国に対する一連の厳しい措置について、大統領令では、米国の対抗措置に中国がさらに対抗措置を重ね、米国産品に対して84%の追加関税を課すと発表したこと(2025年4月10日記事参照)が要因だと説明している。
今後、ベースライン関税も削減されるかが注目される。トランプ氏は4月10日、貿易相手国が米国に提示する譲歩内容次第では、ベースライン関税率の引き下げ、または免除の可能性があると述べた(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」4月10日)。一方で、国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長は同日のCNBCのインタビューで、「誰もが10%のベースライン関税が基本税率になると予想しており、それを下回るには、大統領と何らかの特別な取引が必要になるだろう」との見解を示している。
(注1)香港、マカオも含む。なお、米国東部時間4月10日午前0時1分より前に最終輸送手段によって輸送中だった製品は、対象外となる。中国に対する相互関税率は当初の34%から84%に引き上げたばかりだった(2025年4月9日記事参照)。
(注2)米国では、輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどが免除される非課税基準額(デミニミス)ルールが適用される。トランプ氏は中国に対して、このデミニミスルールの適用停止を発表していた。マカオにも適用を停止するか否かは、今後判断する。また、相互関税を導入した大統領令では、全ての国に対しても適用を停止する意向を示しているが、商務長官が大統領に対して「関税を完全かつ迅速に処理し、徴収する適切なシステムが整っていることを通知するまで」利用可能とのステータスになっている。
(赤平大寿)
(米国、世界、中国)
ビジネス短信 ea3a6799d758cab2