現代自動車、米ジョージア州のEV生産工場を本格稼働

(米国)

アトランタ発

2025年04月01日

現代自動車グループ(以下、HMG)は3月26日、米国ジョージア州に建設した電気自動車(EV)専用工場、メタプラント・アメリカ(HMGMA)の本格稼働を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。当初の計画どおり、2022年10月下旬の着工から2年半での竣工(しゅんこう)となった。現代、ジェネシス、起亜のEVを生産予定で、初期生産能力は年間30万台となる。

HMGは2022年5月、2021年5月に発表した米国での74億ドルの新規投資(2021年5月20日記事参照)の一環として、55億ドルを投じたHMGMA建設を発表した(2022年5月23日記事参照)。2022年8月に成立したインフレ削減法(IRA)の下で定められたEV購入にかかる優遇措置(注1)を受けてHMGMAでの生産開始を急ぎ(AP通信2023年9月19日)、着工から2年に満たない2024年10月にバッテリー式電気自動車(BEV)のスポーツ用多目的車(SUV)「アイオニック5」を、その後、BEVの3列SUV「アイオニック9」の生産を開始した。2026年には起亜の車両の生産を予定している。また、ハイブリッド車(HEV)も生産する予定で、将来的にHMGMAで生産される車両の3分の1はHEVになる見込みだ(「アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション」紙電子版3月26日)。

HMGMAの正式稼働に先立ち、HMGは3月24日、2025~2028年にかけて米国で210億ドルの大規模投資を発表した(2025年3月31日記事参照、注2)。そのうち、86億ドルは、HMGMAを含むジョージア州とアラバマ州の既存工場の現代、ジェネシス、起亜の3ブランドの年間生産能力を120万台に高めることに充てられ、これに伴いHMGMAの年間生産能力は20万台増の50万台に拡張される計画だ。

今回の発表と同日の3月26日、ドナルド・トランプ大統領により自動車・同部品に対する25%の追加関税が発表された(2025年3月27日記事参照)。発表に先立ち、現代自動車のホセ・ムニョス社長兼最高経営責任者(CEO)は、フォックス・ビジネスに対し「当社はトランプ政権1期目に、最大市場の米国で、126億ドルという世界最大の投資を決断した。潜在的な関税に対処するには、米国で生産を現地化し、雇用を創出するほど有効な方法はない」「アイオニック5は当社の(車種の中で)最も米国で売れているEVであり、2025年は約8万台を生産し販売する予定だ」「IRAが存続すれば、約7,500ドルの税額控除を得ることが可能だろうが、そうでなくても当社の計画に変更はなく、生産は継続する」と語った。

なお、ジョージア州におけるHMGの投資額は126億ドルに上り(注3)、HMGMAはその重要な柱となっている。また、州史上最大の経済開発プロジェクトでもあり、2022年7月には州史上最大となる18億ドルのインセンティブ付与が合意され(2022年7月29日記事参照、注4)、2031年までにHMGMAで8,500人の雇用が創出される予定だ。加えて、州内12郡のHMGMAサプライヤーは、2024年末現在、25億ドル以上の投資と約6,900人の雇用を発表している。

(注1)クリーンビークル(CV)購入の際に適用される税額控除(内国歳入法30D)。クリーンビークルは、BEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。購入に際し、1台当たり最大で7,500ドルの税額控除が受けられるが、購入車両の最終組み立てが北米で実施されている必要がある(2022年8月18日記事参照)。2025年2月、米共和党上院議員団によりEV税額控除を廃止する「エリート自動車法案」が提出されたが、審議は進んでいないもよう(2025年2月17日記事参照)。

(注2)加えて、鉄鋼事業への投資として、HMG傘下の現代製鉄がルイジアナ州に年間鉄鋼生産能力270万トンのアーク式電気炉を導入した製鉄所を設立する。2029年に同製鉄所での商業用鋼鉄生産が開始されれば、HMGMAに自動車用鋼板が供給される予定。

(注3)HMGMAのほか、HMGMAに隣接して、韓国LGエナジーソリューションと合弁でEV用バッテリー製造会社を設立(2023年6月5日記事2023年9月8日記事参照)。また、同州北西のバートウ郡に韓国SKオンとの合弁EV用バッテリー工場(2022年12月13日記事参照)を建設中。

(注4)2023年9月に発表された20億ドルの追加投資(2023年9月8日記事参照)を受け、インセンティブの総額は21億ドルとなった。

(横山華子)

(米国)

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