米テネシー州のVW工場、UAW傘下の労組結成を従業員投票で可決

(米国、ドイツ)

アトランタ発

2024年04月23日

米国テネシー州にあるフォルクスワーゲン(VW)のチャタヌーガ工場で4月17~19日、全米自動車労働組合(UAW)傘下の労働組合結成の是非を問う従業員投票が実施され、賛成2,628票、反対985票で可決された。米国自動車大手3社(注1)以外の自動車メーカーの南部の工場での労働組合結成は初めてだ。

UAWが2023年11月29日に、米国で組合を持たない自動車メーカー13社(注2)で勤務する約15万人の労働者向けに、組合への加入を促すキャンペーンを開始して以降(2023年12月8日記事参照)、対象の自動車メーカーで投票が行われたのは、VWのチャタヌーガ工場が初めてだ(注3)。なお、同工場では、2014年と2019年に労働組合を組織化するための投票が行われたが、いずれも否決されており(2019年7月2日記事参照)、投票日直前の2024年4月16日には、テネシー州のビル・リー知事ら南部6州(注4)の共和党の知事がUAWのキャンペーンへの反対を共同で表明していた(2024年4月23日記事参照)。

今回の投票結果の背景について、過去2回の投票時とは異なり、VWの組合組織化への反発が少なかったと報道されており、ドイツで2023年1月1日から施行されているサプライチェーン・デューディリジェンス法(注5)も一因と指摘されている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版2024年4月20日)。さらに、コーネル大学産業労使関係学部のアーサー・ウィートン労働研究部長は、ジョー・バイデン大統領のUAW支持や米国民の労働組合支持の機運の高まりが投票に及ぼす影響を指摘していた(「ヤフー・ファイナンス」2024年4月19日)。米国調査会社ギャラップの調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2023年に米国民の67%が労働組合を支持しており、1965年以来の高い数値を記録した2022年の71%よりは減少したものの、長期平均の62%を5年連続で上回っている。2024年大統領選挙でUAWからの支持を受けるバイデン大統領は、VWチャタヌーガ工場での投票実施が申請された際に、祝福する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2024年3月26日記事参照)。また、バイデン大統領は投票後にも声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、労組結成可決への祝辞を述べるとともに、南部6州の共和党知事の共同声明への反対を表明した。

UAWは4月18日、メルセデス・ベンツのアラバマ州タスカルーサ工場でもUAW加入のための投票を5月13~17日に実施すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。VWチャタヌーガ工場とは異なり、UAWによると、同工場での組合組織化運動は経営層からの激しい反発に直面しているとのことだ(2024年4月10日記事参照)。米国南部での組合組織化が広がりを見せるのか、注目を集めている。

(注1)ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティス。

(注2)今回対象となっている自動車メーカーは、日系のトヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダ、韓国系の現代、欧州系のメルセデス・ベンツ、BMW、VW、ボルボ、米国電気自動車(EV)メーカーのテスラ、リビアン、ルーシッドの13社。

(注3)メルセデス・ベンツのアラバマ州タスカルーサ工場、現代自動車の同州モンゴメリー工場、トヨタ自動車のミズーリ州トロイ工場でも組合結成に向けた動きが発表されている(2024年2月2日記事2024年2月7日記事2024年3月4日記事2024年3月12日記事参照)。

(注4)ジョージア州、テネシー州、サウスカロライナ州、アラバマ州、ミシシッピ州、テキサス州。

(注5)ドイツの「サプライチェーン・デューディリジェンス法(Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz:LkSG)」は、ドイツを拠点とする一定規模以上の企業に対し、国内外の自社のサプライチェーンにおける人権および環境問題に関するデューディリジェンス実施を義務付けており、団結の自由の否定も禁止している。詳細はジェトロ調査レポート「ドイツ サプライチェーンにおける企業のデューディリジェンス義務に関する法律(参考和訳)(2022年5月)」参照。

(檀野浩規)

(米国、ドイツ)

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