米テネシー州のVW工場、UAW加入のための投票実施を申請、バイデン大統領も祝福

(米国)

アトランタ発

2024年03月26日

全米自動車労働組合(UAW)は3月18日、フォルクスワーゲン(VW)のテネシー州チャタヌーガ工場で、工場労働者の圧倒的多数が組合授権カード(注1)に署名したことを受け、同工場労働者が全米労働関係委員会(NLRB)に対し、UAW加入のための投票実施を申請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

UAWが2023年11月29日に、米国で組合を持たない自動車メーカー13社(注2)で勤務する約15万人の労働者向けに、組合への加入を促すキャンペーンを開始して以降(2023年12月8日記事参照)、VWのテネシー州チャタヌーガ工場、メルセデス・ベンツのアラバマ州タスカルーサ工場、現代自動車の同州モンゴメリー工場で組合結成に向けた動きが発表されている(注3、2024年2月2日2024年2月7日2024年3月4日記事参照)。キャンペーン開始以降、対象の自動車メーカーで投票実施の申請まで至ったのは、VWのチャタヌーガ工場が初めて。

NLRBは、従業員の団結権を保護し、労働組合を交渉代表とするかを決定する権限を与えられた独立連邦機関で、労働組合の結成や加入などに関する投票実施の請願書を受け付けている(注4)。請願書などの受理後、NLRBは、投票日時、投票場所、投票資格者の決定方法などに関して、雇用主や労働組合、その他の当事者間で合意するよう求める。合意後、当事者はNLRB地域ディレクターに投票の実施を許可し、通常は実務上可能な限り早い時期に投票が実施される。

2024年大統領選挙でUAWからの支持を受けるジョー・バイデン大統領は、3月18日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「チャタヌーガのVWの工場労働者がUAW加入のための投票実施を申請したことを祝福する」「米国史上最も労働組合加入を支持する大統領として、(他国のVWの工場労働者と同様)私は米国の労働者も職場で発言権を持つべきだと信じている。UAWに加入するかどうかの決定は労働者に属する」と述べた。一方で、VWも同日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「労働者が民主的な手続きをとり、自分たちの利益を代表する者を決定する権利を尊重する」と述べた。

同工場では、2014年と2019年に労働組合を組織化するための投票が行われたが、反対833票、賛成776票の僅差で否決されている(2019年7月2日記事参照)。当時は、テネシー州共和党の著名な政治家が労働者に対して、組織化反対票を投じるよう投票期間中に促すなど水面下での攻防があったとのことだ(WSFA12 3月19日)。一方で、デトロイト3との交渉結果(2023年11月21日記事参照)がUAWにとって好意的に報道されているほか、同工場は従業員の入れ替わりが激しいといった点から、「今回は違う」とUAWは期待を示している(AXIOS 3月18日)。

(注1)労働者が労働組合を交渉の際の代表として支持することを示す署名入りのカード。

(注2)今回対象となっている自動車メーカーは、日系のトヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダ、韓国系の現代、欧州系のメルセデス・ベンツ、BMW、VW、ボルボ、米国電気自動車(EV)メーカーのテスラ、リビアン、ルーシッドの13社。

(注3)UAWは「30・50・70戦略」という方針をとっており、組合に加入していない工場の労働者の30%がUAW加入を求めるカードに署名すれば、それを公表している。また、50%の労働者が加入を希望すれば、UAWのショーン・フェイン会長や賛同者とともに集会を開き、この取り組みを宣伝するとしている。さらに、70%の労働者がUAWへの加入を希望し、全ての部署やライン、シフトでボランティア組織委員会が設置されると、UAWは当該企業に対し、組合結成の承認を求めるか、投票に持ち込むとしている。

(注4)投票手続き開始のためには、少なくとも30%の従業員からの支持を示す請願書と関連書類の提出が求められる。

(檀野浩規)

(米国)

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