英国におけるEUのFTA/EPAの継承は2割が未完

(英国、EU)

ロンドン発

2020年12月28日

英国政府は、12月に合意したEUとの通商・協力協定(2020年12月25日記事同日付記事参照)や、10月に署名した日本との経済連携協定(EPA)(2020年10月23日記事参照)、交渉を続けている米国やオーストラリア、ニュージーランドとの新たな自由貿易協定(FTA)(2020年3月4日記事6月25日記事参照)のほか、EUがこれまでに締結したFTA/EPAの継承に向け、2018年から順次、40弱の国・経済圏と協議を進めてきた。

EUとFTA/EPAを締結している国・経済圏との間で、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間が終了するまでに、英国としてFTA/EPAを継承する取り決めを結べないと、移行期間終了後の2021年1月1日以降は、それぞれの協定に基づく特恵税率を利用することができなくなる。WTO加盟国との間では最恵国待遇(MFN)税率に基づく関税が適用され、開発途上国からの輸入では英国の一般特恵関税制度(UK GSP)が適用される(2020年11月12日記事参照)。このため、各国・経済圏とのFTA/EPA継承は、締結できなくても通商条件が変わらない米国、オーストリア、ニュージーランドとの交渉以上に重要でもあった。

政府は2019年1月末のEU離脱までに約半数の20カ国・経済圏と継承に合意。しかし、その後は2020年秋口まで状況が変わらず、先行きが危ぶまれていた。しかし、移行期間終了が近づくにつれて交渉を加速、10月からカナダ(2020年11月25日記事参照)、ノルウェーとアイスランド(2020年11月30日記事参照)、シンガポール(2020年12月14日記事参照)、ケニア(2020年12月16日記事参照)など10カ国・経済圏との間で継承協定の合意・署名にこぎつけた(添付資料参照、注)。

交渉継続中の8カ国のうち、EUと関税同盟の関係にあるトルコは、英国とEUの通商・協力協定妥結に先行して交渉をまとめることはできなかったが、英EU間の合意を受け、近く取り決めが結ばれるとみられる(2020年12月25日記事参照)。

発効が間に合わない国も

一方で、英国政府はセルビアとボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、アルジェリアの4カ国との間では、移行期間終了までに継承協定は合意・発効できないとの見解を公式に表明(英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。アルジェリアからの輸入にはUK GSPが適用され、他の3カ国からの輸入にはMFN税率「UKグローバル・タリフ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が適用されることになる。さらに、12月にようやく署名にこぎつけたカナダ、メキシコとの間でも協定の批准手続きが間に合わず、英国とこれらの国で輸出入を行う事業者は年明けからしばらくの間、WTOルールに基づく取引を余儀なくされる。

これまでに署名した継承協定は、日英EPAと同様に、EU原産品を双方の原産に含めることができる「拡張累積」の規定を定めている(ジェトロ解説レポート「英EU通商協定における原産地規則」参照PDFファイル(0.0B))。また、EU以外の第三国についても、対象国を示した上で、双方がFTAを将来結べば累積を認める規定を設けているものも多く、事業者のメリットになりそうだ。

(注)12月31日時点の情報に更新。12月末までに、トルコ、カメルーンなどとも合意し、経過措置が発効。他方、署名済みのカナダ、メキシコに加え、ヨルダンも1月1日からの発効に間に合わないことが確定している。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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