フードテックで広がるこんにゃくの輸出と用途(日本)
2026年8月14日
近年、人口増加や環境負荷低減、健康志向の高まりを背景に、多様な食ニーズへの対応や社会課題解決の手段として、フードテックが注目されている。日本の伝統食品であるこんにゃくは、低カロリーで豊富な食物繊維を含むヘルシーな食品であるだけではなく、加工のしやすさからプラントベースフード(注1)の食品原料としても活用されている。そこで、本稿ではこんにゃくの特性を生かした企業の新たな取り組みについて聞き、今後の海外展開や新たな需要創出の可能性を検討する(取材日:2026年6月26日)。
低カロリーで加工適性も高いこんにゃく
こんにゃくは、こんにゃく芋(サトイモ科の球茎)を原料とする加工食品であり、栽培から収穫まで約3年を要するなど、生産に手間のかかる作物だ。グルコマンナンに由来する豊富な食物繊維を含み、この成分が水と結合してゲル状に固まる性質を利用して加工される。
こんにゃくはその大部分が水分で構成されており、100グラム当たり約7キロカロリーと低カロリーである点が特徴だ。また、グルコマンナンは水を吸収して膨らむ性質を有することから、少量でも満腹感を得やすいとされる(注2)。
さらに、味や香りにクセが少なく、グルコマンナンに基づく成形性などの機能を有することから、食品素材としての応用範囲が広い。ヘルシーな食品である点や加工適性を兼ね備える点が、こんにゃくの大きな特性といえる。


輸出は世界に拡大も、認知度向上が課題
こんにゃく加工品(注3)の輸出は近年拡大傾向にある。一般財団法人日本こんにゃく協会「こんにゃく業界における海外展開強化に向けた調査
(2.4MB)」によると、輸出額は2019年度の5億4,300万円から、2020年度には11億4,200万円へと倍増した(図参照)。その後も増加が続き、2021年度は前年比14.2%増の13億400万円、2022年度には35.0%増の17億5,900万円に達した。2023年度は、一部企業における前年度の大幅伸長の反動から前年割れの13億9,700万円となったが、2021年度の水準は上回った。こんにゃく加工品の輸出増の背景について、調査報告書は近年の健康志向の高まりによる需要拡大を指摘している。主な輸出先は米国、香港、シンガポール、台湾、フランスなどだ。
出所:一般財団法人日本こんにゃく協会「こんにゃく業界における海外展開強化に向けた調査」からジェトロ作成
一方で、海外展開における課題として、報告書は認知度の低さを挙げている。今後も、調理方法や用途の理解を含めた情報発信や、現地の嗜好(しこう)に対応した商品開発などが求められる。実際に、おでんや煮物などの和食用途だけでなく、即席食品やプラントベースフードなど、近年では用途展開が多様化してきた。
代替肉からクラフトジンまで、広がるこんにゃくの新領域
プラントベースフード市場の拡大を背景に、こんにゃくの新たな用途開発が進んでいる。特に、弾力や食感を再現できる特性や、つなぎとしての機能性から、代替肉・代替麺分野との親和性が高い。
こんにゃくの製造卸販売を行う茂木食品工業
(群馬県甘楽郡下仁田町)は、従来の板こんにゃくやしらたき(白滝)のみならず、こんにゃくと大豆を組み合わせた代替肉製品「サラダバーグ」や「エシカルソーセージ」などを展開している。こんにゃくをつなぎとして活用することで、肉のような食感を実現している点が特徴だ。同社取締役副社長の茂木大悟氏は「海外ではこんにゃくの知名度が低いことが依然として課題だが、加工原料として代替肉製品に活用することで、プラントベース市場へのアプローチが可能となった。これをきっかけにこんにゃくの認知度が高まり、産業全体の活性化につながれば良い」と述べる。同社は今後、他社が追随できない部分で商品の差別化を図りながら、海外売上比率10%の達成を目指す。



こんにゃくやしらたきの製造・販売を手がけるツトム食品
(群馬県富岡市)では、こんにゃく粉に大豆たんぱくを加えた麺「SoyNyack(ソイニャック)」を輸出の中心商品として展開している。同商品は、グルテンフリー、低糖質、低カロリーといった特徴を備え、健康志向の高まりを背景に、米国などを中心に20カ国以上への輸出実績を有する。同社は海外展開にあたり、単なる販路拡大にとどまらず、現地市場の理解を重視している。専務取締役の土屋和巳氏は「年に何度か、現地に商流を持つ商社を訪問し、営業活動を行っている。単に商品を売り込むだけでなく、輸出先国それぞれに関心を持ち、現地の嗜好や食文化をよりよく知ることを心がけている」と述べる。さらに、今後の展開については「文化の異なる海外市場では、商品をローカライズしていくことも重要」との認識を示した。現地消費者にもアプローチしつつ、新たな機会に柔軟に挑戦していく姿勢だ。



さらに、こんにゃく粉の製造卸を行う津金沢
(群馬県富岡市)では、こんにゃく芋を原料としたクラフトジン「MIYAMA」を開発した。同社営業・品質管理部長の津金澤敦氏は「こんにゃくの国内需要が減退する中、日本の伝統食品であり群馬県の特産物でもあるこんにゃくの需要拡大と認知度向上を国内外で図るべく、新たな取り組みとして酒類の製造に挑戦した」と述べる。この取り組みは、こんにゃくを従来の食品用途にとどめず、近年、海外でも認知度が高まっている日本産ジンの原料として高付加価値化を図る事例だ。また、地域産品としてのストーリー性を付加することで差別化を図るとともに、海外市場での新たな需要層の開拓につながる動きといえる。

用途提案と認知度向上が海外展開加速のカギ
こんにゃくは、低カロリー・豊富な食物繊維といった特性に加え、優れた加工適性を兼ね備えていることから、フードテック分野における食品原料として高い潜在力を有する。特に、弾力性や成形性は、プラントベースフードにおける食感再現やつなぎの機能として寄与する点で重要だ。あわせて、低カロリー、グルテンフリー、低糖質といった健康志向の価値を前面に打ち出した訴求も有効と考えられる。
今後の輸出拡大に向けては、現地の食文化や嗜好に合わせた用途提案を進めるとともに、調理方法や食べ方を含めてこんにゃく自体の認知をいかに広めていくかが重要となる。また、代替肉や代替麺などの用途開発を通じて、海外市場での新たな需要創出も期待される。
- 注1:
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プラントベースフードとは、近年、多様な消費者の嗜好を反映し、動物性原料ではなく植物由来の原材料を使用して、畜産物や水産物に似せて作られた食品。
- 注2:
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日本産こんにゃくについては、ジェトロ「日本産食材ピックアップ こんにゃく」を参照のこと。
- 注3:
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こんにゃく加工品:板こんにゃく、玉こんにゃく、つきこんにゃく、さしみこんにゃく、しらたき(糸こんにゃく)、粒こんにゃく、その他こんにゃく加工品(こんにゃく麺やこんにゃくを使った総菜類)を含み、荒粉や精粉、こんにゃくゼリーは含まない。
- 執筆者紹介
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ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム
庄田 幸生(しょうだ こうき) - 2025年、ジェトロ入構。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の市場情報や輸入規制、法令などの調査を担当。
- 執筆者紹介
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ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム 課長代理
古城 達也(ふるじょう たつや) - 2011年、ジェトロ入構。人材開発支援課、ジェトロ横浜、ジェトロ・ニューヨーク事務所、ジェトロ諏訪を経て、2024年11月から現職。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の輸入規制、法令や市場情報などの調査や、日本企業からの輸出相談窓口を担当。
- 執筆者紹介
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ジェトロ群馬 係長
上嶋 友也(うえじま ともや) - 2021年、ジェトロ入構。農林水産食品部市場開拓課を経て、2024年9月から現職。群馬県内企業の海外展開支援・輸出促進を担当。





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