インド最大港湾と工業団地が融合するムンドラ
アダニが開発する工業都市

2026年8月3日

グジャラート(GJ)州の中心都市アーメダバードから西へ約300キロ、カッチ地方に位置するムンドラ港は、貨物取扱量、コンテナ取扱量ともにインド最大の港湾だ。地理的に見ると、ムンドラ港はインド西端に近く、アラビア海を挟んで中東、アフリカに面し、さらにスエズ運河経由で欧州にもつながる。もっとも、ムンドラ港の強みはこうした地理的優位性だけにとどまらない。最大の特徴は、港湾に隣接してインド最大規模の経済特区(SEZ)や国内市場向けの工業エリアを擁し、物流機能に加えて生産機能も備えている点にある。東西40キロメートルを超える海岸線を持つ広大な用地を有し、将来的な拡張余地も大きい。港湾を核に工業団地やエネルギー施設、居住機能を一体的に整備した工業都市として発展していることが、ムンドラの最大の特徴だ。

ムンドラ港およびSEZの全体像

ムンドラ港は、アダニ・グループの主要企業の1つであるアダニ・ポーツ・アンド・SEZが開発、運営している。インド最大のコンテナ取扱量を誇り、2024年の実績では約822万TEU(世界25位)と、約705万TEUで世界31位のマハーラーシュトラ(MH)州ナビ・ムンバイのジャワハルラル・ネルー港(JNPT、ナバ・シェバ港)を大きく上回った。ムンドラ港は、インド北部の海の玄関口として年々存在感を高めており、2024/2025年度(2024年4月~2025年3月)には、インドの港湾で初めて貨物取扱量が2億トンを超えた。主要貨物である「3つのC(Container:コンテナ、Crude Oil:原油、Coal:石炭)」に加え、RORO(自動車)、ガス、化学品、肥料などのバルク貨物も多く取り扱う。

しかし、このエリアの特徴は港湾機能だけではない。広大な工業用地を中心に、電力や水などのインフラ、従業員とその家族向けの居住区、さらには空港まで備えた工業都市としての側面も持つ。工業用地の大半を占めるSEZ内では、化学、テキスタイル、石油、食品関連の企業に加え、アダニ・グループの銅精錬所(カッチ・カッパー)やソーラーパネル関連工場(ムンドラ・ソーラー、ビシャカ・グラス)が稼働している。アダニやタタの石炭火力発電所も立地しており、アダニ・グループが開発する一大工業都市と捉えるのが実態に近い。

こうした工業都市が、インド最大の港湾を通じて海外と、また専用鉄道を通じてインド各地と接続されている点も大きな特徴だ。ムンドラ港からガンディーダムを結ぶ専用鉄道をアダニ・グループが自社で整備し、インド国鉄や専用貨物回廊(DFC)の鉄道網と接続している。北インド向けでは、ナバ・シェバ港と比べて輸送距離を短縮でき、輸送日数やコストの削減余地が大きいという。また、港内作業から内陸輸送までをアダニ・グループ内で一気通貫して担える体制も強みの1つとなっている(2026年1月28日付地域・分析レポート参照)。

ムンドラ港およびSEZの主要ファシリティー

ムンドラ港およびSEZ周辺の主要なファシリティーを概観したい。

(1)コンテナターミナル

ムンドラ港(サウス・ポート)には、CT1からCT4までの4つのコンテナターミナルがあり、合計で750万TEUの処理能力を持つ。35を超える定期航路サービスを通じて、グローバルな航路をカバーしている。CT1、CT2はアダニ、CT3はアダニとスイスの海運会社MSCとの合弁企業、CT4は同じくアダニとフランスの海運会社CMA CGMとの合弁企業が運営している。もっとも、CT3およびCT4についても、港湾オペレーション自体はアダニが担っている。アダニはバース使用率を55~60%程度に抑え、コンテナ船の沖待ちが生じにくい運営を目指している。これらに加え、DPワールドもムンドラ国際コンテナターミナル(MICT)と呼ばれるコンテナターミナルを30年の長期リースで運営しており、2025年のコンテナ取扱量は約150万TEUとされる。

さらに拡張も着々と進められており、2026年10月の稼働を目指してCT5が建設中だ。需要動向を見極めつつ、さらなるコンテナターミナルの建設も計画されている。東西40キロメートルに及ぶ海岸線を持つ土地を自社保有していることは、アダニ・グループならではの拡張余地の大きさを示している。

(2)原油・LPG・石炭などバルク貨物

ムンドラ港は、原油、LPG、石炭などのバルク貨物の受け入れでも大きな存在感を持つ。2基のSPM(Single Point Mooring)を通じた原油受け入れと、北インドの製油所へつながるパイプライン網との接続を強みとしている。原油は、ハリヤナ州パニパット、パンジャブ州バティンダ、ラジャスタン州バルメルの石油精製施設へパイプラインで輸送される。2026年1月には、約33万立方メートルの原油を積載した超大型原油タンカー(VLCC)「MT New Renown」をインドで初めて受け入れた。

石炭はウエスト・ポートで荷揚げされ、その大半が工業団地内に立地する2カ所の石炭火力発電所で使用されている。


ウエスト・ポートの様子(ジェトロ撮影)

(3)RORO・自動車

自動車の輸出も盛んであり、マルチ・スズキが主要な輸出拠点の1つとして活用している。車両をヤードからRORO船へ移動させる専用レーンも整備されている。GJ州を含む北西インドでは、マルチ・スズキが年産400万台を目指して生産能力の拡張を進めており、完成車輸出拠点としてのムンドラ港の重要性は、今後さらに高まる可能性がある。

(4)工業用地・ユーティリティー

ムンドラには約1万5,000ヘクタールの工業用地があり、このうち8,300ヘクタールがSEZ、140ヘクタールが自由貿易倉庫地域(FTWZ)、6,500ヘクタールが国内関税地域(DTA)に区分されている。化学、石油、テキスタイル、食品加工、エンジニアリング、エレクトロニクス、物流などの分野ごとのクラスターが形成されている。SEZでは輸出向け企業が60~70社操業している一方、インド国内向けに製品を供給する産業はDTAに立地できる。いずれも、アダニ・グループ企業に限らず外部企業が土地を取得することが可能だ。

これらの工業団地内では、石炭火力発電所(アダニ・パワー4,620MW、タタ・パワー4,150MW)、水(海水淡水化)、排水処理施設(CETP)、LNG・LPGターミナル、空港、鉄道、道路、港湾といったインフラが一体的に提供されている。電子・再エネ分野では、約800エーカーの電子製造クラスター(Electronic Manufacturing Cluster)が整備されており、太陽光セル・モジュール、ソーラーガラス、風力発電、電解槽、グリーン水素など、再生可能エネルギー関連企業の集積が進められている。日系企業にとっても、分野によっては物流拠点としてだけでなく、生産拠点として活用する余地があるだろう。

(5)鉄道・道路・航空

ムンドラの競争力を支える基盤は、専用鉄道を軸とした内陸接続にある。ムンドラ港とガンディーダムのアディプール間を結ぶ約64キロメートルの専用電化複線鉄道を自社で整備し、インド国鉄や専用貨物回廊(DFC)の鉄道網と接続している。コンテナ2段積みのダブルスタックコンテナ列車にも対応しており、同社線区では1日35~40本程度の列車が運行されている。

一方で、ムンドラ港はアーメダバードをはじめとする主要都市からのアクセスの弱さが課題とされてきたが、約1,900メートルの滑走路を持つ空港が整備されており、エア・タクシーが小型機の定期便を運航している。さらに、2026年6月には、地場航空会社のスター・エアがムンドラとムンバイ、デリー(ガジアバード空港)を結ぶ直行便を就航させた。


ムンドラ港を出発したダブルスタックコンテナ列車(ジェトロ撮影)

(6)社会インフラ

敷地内には従業員向けの居住区(コロニー)が整備されており、病院や学校のほか、クリケット場、レストラン、商業施設なども備える。また、一般利用者向けにはコンテナを改造したホテル「ビートル・スマートテル」が営業しており、レストランを含め、誰でも利用可能だ。

このように、ムンドラ港は単なるインド最大の港湾ではなく、港湾、工業団地、エネルギー、物流インフラ、生活インフラが一体となって整備された総合的な工業都市として発展している点が最大の特徴だ。こうした一体開発により、原材料の調達から製造、国内外への輸送までを効率的に行える。特に、港湾に隣接して大規模なSEZやDTAを擁し、原材料の輸入から生産、完成品の輸出、国内輸送までを効率的に行える体制は、インド国内でも際立つ。専用鉄道を通じたインド各地との接続を基盤に、今後も拡張が可能な広大な工業用地と電力や水などのユーティリティーを一体提供する開発モデルは、製造業や物流業にとって大きな魅力となっている。さらに、再生可能エネルギー分野での産業集積の進展も注目すべき点だ。アダニ・グループによるムンドラ港および周辺SEZの開発は、港湾、工業団地、物流、エネルギーを一体的に整備する開発モデルとして、インド全体の産業の中で、ますます重要な地位を占めていくと考えられる。

執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所次長
吉田 雄(よしだ ゆう)
2005年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ徳島、ジャカルタ事務所、ジェトロ茨城、アーメダバード事務所などを経て、2026年7月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ企画部法人評価課
飯田 覚(いいだ さとる)
2015年、ジェトロ入構。農林水産食品部、ジェトロ三重、アーメダバード事務所を経て、2026年6月から現職。