拡大するブルガリアの日本食市場

2026年8月26日

ブルガリアは人口約642万人、首都をソフィアとするバルカン半島に位置する国だ。ブルガリアヨーグルトは日本で有名であるが、そのほかにもオーガニック(BIO)認定を受けた養蜂家が多く、近年は日本へのはちみつ輸出国としても知られている。一方で、同国では日本食への関心が高まっており、日本食レストランの増加や日本産食品の流通拡大など、その浸透が進んでいる。本稿では、ジェトロが6月に実施した日本食イベントの様子と、日本食材の輸入・販売を手掛ける事業者への取材内容を紹介しながら、ブルガリアの日本食市場の今を概観する。

ジェトロ、ソフィアで日本食をPR

ジェトロは6月24日、在ブルガリア日本大使館との共催で、ソフィア市内の大手小売りチェーンのメトロ(ドイツ系)のキッチンスタジオにおいて、日本食の普及と市場拡大を目的とした日本食PRイベントを開催した。

開会に当たり、駐ブルガリア日本大使の鷲見周久氏は、日本文化がブルガリアの幅広い世代に浸透していることに触れ、同イベントを契機とした日本食のさらなる普及と提供機会の拡大に期待を示した。続いてジェトロは、海外における日本産食材サポーター店認定制度を紹介した。また、調理講習(マスタークラス)で使用する醤油(しょうゆ)、塩、ごま油、麺類などの日本産食材の特徴や活用方法を説明し、参加者に対して今後のメニュー開発や店舗での活用を呼びかけた。

その後、在ブルガリア日本大使館料理人の高橋達彦シェフによるラーメンのマスタークラスが開催された。ブルガリアの主要都市であるソフィア、ヴァルナ、プロブディフ、ヴラッツァなどの日本食材取り扱いレストラン9店舗から、シェフやオーナーらが参加した。高橋シェフは、日本のだし文化や「うまみ」の歴史、成分について解説するとともに、だしを活用した料理の作り方を紹介し、醤油ラーメンと冷やしラーメンの調理実演を行った。


イベントの様子(ジェトロ撮影)

参加者からは、完成したラーメンについて、だしの風味が効いていておいしいといった声が聞かれた。また、冷やしラーメンについては、ブルガリアで親しまれている冷製スープ「タラトール」との共通点から、現地でも受け入れられやすいとの意見もあった。さらに、ラーメンとあわせて紹介した日本酒など複数種類の日本産品にも注目が集まり、参加者からは今後の調達を検討したいとの声が上がった。

農林水産省の調査によると、2025年のブルガリアにおける日本食レストラン数は90店舗となり、前回(2023年)調査時の30店舗から2年間で3倍に増加した。レストラン数の増加を背景に、日本食のさらなる普及が見込まれている。

ブルガリアで広がる日本食需要

また、ジェトロは、同イベントの実施にあわせ、ブルガリアで日本食の輸入を手がける2社に話を聞いた(取材日:タコフーズ・2026年6月24日、メトロ・7月7日)(注)

ブルガリアで日本食材の輸入および卸、EC販売を手掛けるタコフーズの創業者であるスタンミル・イヴァノフ氏は、同国の日本食市場について、現在は日本料理というと寿司(すし)というイメージが強いものの、ラーメンをはじめとする多様な日本料理を広めることで、同市場はさらに拡大する可能性があるとの見方を示した。また、日本食の味付けはブルガリア人の嗜好(しこう)との親和性が高く、市場のポテンシャルは高いと述べた。

また、ブルガリア市場で日本食材を販売するドイツ系大手スーパーマーケットチェーンのメトロによると、ブルガリア人の日本食への関心は年々高まっているという。依然、寿司関連商品は人気があり、米、のり、醤油、わさび、ガリなどの需要が安定していると説明した。また、日本の調味料、照り焼きソース、パン粉、味噌(みそ)、ラーメンに加え、日本風カレー商品や抹茶商品、発酵食品、日本の菓子類への注目も高まっており、消費者がより本格的で新しい日本の味を求めている傾向を指摘した。 同社では、日本食は「高品質」「安全」「健康」「本格的」といったイメージで認識されていると分析している。特に日本料理用の魚介類については、鮮度や品質への要求が高く、安全性やトレーサビリティーが確保されたプレミアム商品への需要が増加しているという。また、日本の食品メーカーが同国市場に参入する際には、高品質で本格的な日本食品が大きく成長する可能性があると指摘した。成功するためには、消費者への商品の使い方や調理方法の提案、本物の味や品質の訴求、現地パートナーとの長期的な関係構築などが成功のカギになるとの見方を示した。

ブルガリアの日本食市場は、西欧諸国と比較すると規模は限定的であるものの、今後の成長が期待できる市場といえる。現在、同国の日本食市場では寿司が人気を牽引する一方、ラーメンや日本酒、発酵食品などへと需要の裾野が広がりつつある。今後、多様な日本産食品の認知度が向上することで、ブルガリアが日本産食品の有望な輸出先市場となることが期待される。


注:
7月7日メトロへのヒアリングは、メトロブルガリアとしてのメール回答に基づく。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ企画部企画課
太田 響子(おおた きょうこ)
2023年、ジェトロ入構。デジタルマーケティング部、ジェトロ・ブカレスト事務所を経て、現職。