ゲーム機が牽引する山東省の対日輸出(中国)
食品・衣料品は安定、鉱物・電機は縮小

2026年8月13日

山東省は、中国の中で対日輸出への依存度が最も高い地域の1つだ。2025年の対日輸出額は202億ドル、対世界輸出に占める日本向け比率(日本集中度)は6.7%と全国(中国本土)で最も高い(表1参照)。同年の対日貿易収支は156億ドルの黒字であり、規模・集中度の両面で対日関係の強さが際立つ。対日輸出額は広東省、江蘇省に次ぐ全国3位で、上海市や浙江省を上回る。

広東省や江蘇省が汎用(はんよう)的な電機・電子製品を中心とするのに対し、山東省では食品やゲーム機、衣料品といった特定用途に特化した品目が主力である点が特徴だ。

本稿では、2021年から2025年までの貿易データを基に、食品・衣料品の安定供給、ゲーム機の拡大、そのほかの分野の縮小という3つの動きから対日輸出構造を整理する。

表1:主要省・市の対日輸出などの状況(2025年)(単位:億ドル)(△はマイナス値)
省・市 対世界輸出 対日輸出 日本集中度 対日収支
広東省 8,447 283 3.4% △133
江蘇省 5,536 283 5.1% 26
山東省 3,024 202 (全国最高)
6.7%
(全国最大)
156
上海市 2,818 174 6.2% △188
浙江省 5,848 155 2.7% 35

出所:S&P Global GTA(輸出、輸入額)を基にジェトロ作成

食品分野:高シェアで安定した対日供給基盤

山東省は中国の日本向け農水産物の輸出において高いシェアを占める。2025年時点で、中国の対日輸出に占める同省のシェアは、野菜53.2%、魚介類55.2%、調製食品48.4%といずれも高水準にある(表2参照)。これらのシェアは2021年から大きな変化がなく、安定的に推移している。

表2:中国の日本向け主要農水産物輸出に占める山東省のシェア (単位:100万ドル)注:山東省のシェアは、山東省の対日輸出額÷中国全体の対日輸出額で算出。
HS 品目 山東省
2021年
山東省
2025年
全国
2021年
全国
2025年
山東省シェア
2021年
山東省シェア
2025年
7 野菜 671 783 1,288 1,471 52.1% 53.2%
3 魚介類 961 997 1,743 1,806 55.1% 55.2%
16 調製食品 1,351 1,217 2,768 2,513 48.8% 48.4%

注:山東省のシェアは、山東省の対日輸出額÷中国全体の対日輸出額で算出。

出所:S&P Global GTA(輸出、輸入額)を基にジェトロ作成

2025年の輸出品目別に見ると、野菜では「冷凍野菜」が2億7,900万ドルと首位で、「玉ねぎ」(8,100万ドル)、「冷凍ほうれん草」(7,000万ドル)が続く。「玉ねぎ」や「乾燥にんにく・生にんにく」など、山東省が中国内でも主要産地として知られる品目が並ぶ。魚介類では「冷凍魚フィレ」が2億7,000万ドルと最大品目で、「冷凍イカ」(1億5,400万ドル)と「冷凍カレイフィレ」(7,000万ドル)が続く。黄海・渤海に面した地理条件と加工設備の集積が、この高シェアを支えている。

調製食品では、「調製鶏もも肉」(2億5,000万ドル)と「調製保存魚」(2億3,300万ドル)が主要品目だ。鶏肉調製品は日本の外食・食品加工業向けに安定した需要があり、5年間を通じて大きな変動なく、輸出が続いている。

一方、「調製うなぎ」は2021年の8,100万ドルから2025年の6,000万ドルへと26%縮小しており、資源量の変動が影響しているとみられる。「調製イカ」も1億7,400万ドルから1億4,300万ドルへ減少している。資源制約や需給の変化の影響がみられるが、食品分野全体としては高いシェアと安定した輸出を維持している。

山東省の食品輸出が安定している背景には、産地としての地理的優位性だけでなく、対日向けの加工・品質管理体制が蓄積されてきたことがある。野菜の輸出額は2021年の6億7,100万ドルから2025年の7億8,300万ドルへと16.8%増加しており、一定のシェアを維持しながら輸出額も拡大している。魚介類も2021年の9億6,100万ドルから9億9,700万ドルへとほぼ横ばいで推移し、安定した供給が続いている。日本の食品流通・加工業が山東省からの調達を長期的にサプライチェーンに組み込んでいることが、こうした供給安定の一因とみられる。

衣料品:調達先多様化の中で高シェアを維持

衣料品は山東省の対日輸出において最大規模の品目群であり、2025年の輸出額は31億7,300万ドルと全体の15.7%を占める(表3参照)。2021年の35億3,600万ドルから10.3%縮小したが、日本の衣料品輸入総額は横ばいで推移している。日本市場における中国産シェアは低下しており、メリヤス編み衣類で60.2%(2021年)から51.5%(2025年)に、織物製衣類で56.2%から42.5%に低下し、調達先多様化(中国以外の国への移行)が進んでいる。一方、山東省は中国全体の対日衣料品輸出の約4分の1を占め、そのシェアは25.7%(2021年)から28.2%(2025年)へとむしろ上昇している。山東省が特に減少しているわけではなく、中国全体の日本向け衣料品生産拠点としての地位が低下していることがうかがえる。

衣料品産業は労働集約的であり、中国全体の人件費上昇を背景にベトナムやバングラデシュなどへの生産移転が続いている。山東省が相対的に高い地位を維持しているのは、長年にわたり構築された対日向けの品質管理・加工体制と、日本市場に特化したバイヤーとの長期的な関係の蓄積によるものとみられる。こうした供給基盤は短期的なコスト変化で容易に代替されるものではないが、中国全体の地位低下が続く中、中長期的には縮小圧力が及ぶ可能性がある。

表3:山東省の衣料品の対日輸出額と日本市場における中国産シェアなどの状況(2021・2025年)(単位:100万ドル)(△はマイナス値)注:山東省の全国シェアは、各年の山東省の対日輸出額÷中国全体の対日輸出額で算出。日本市場における中国産シェアは、日本の衣料品輸入総額に占める中国産の比率(日本輸入統計ベース)。
HS 品目 山東省の
輸出額
2021年
山東省の
輸出額
2025年
変化率 山東省の
全国シェア
山東省の
全国シェア
2025年
日本市場
中国産シェア
2021年
日本市場
中国産シェア
2025年
61 メリヤス編み衣類 2,667 2,379 △10.8% 34.7% 35.7% 60.2% 51.5%
62 織物製衣類 869 794 △8.7% 14.3% 17.4% 56.2% 42.5%
HS61+62 3,536 3,173 △10.3% 25.7% 28.2% 58.3% 47.3%

注:山東省の全国シェアは、各年の山東省の対日輸出額÷中国全体の対日輸出額で算出。日本市場における中国産シェアは、日本の衣料品輸入総額に占める中国産の比率(日本輸入統計ベース)。

出所:S&P Global GTA(輸出額、輸入額)を基にジェトロ作成

ゲーム機:急拡大する対日輸出の成長分野

山東省の対日輸出で近年最も拡大しているのがビデオゲーム機だ。玩具・ゲームの輸出額は2021年の13億900万ドルから2025年には25億800万ドルへと91.6%増加した。そのうち、コンソール本体および関連部品は22億7,200万ドルと全体の90.6%を占める(表4参照)。

2025年の日本の輸入統計(CIFベース)では、ゲームコンソールの96.2%が中国から輸入されている(日本の中国からの輸入額26億4,600万ドル、日本の全世界からの輸入額27億5,100万ドル)。そのうち、山東省が92.8%を占めており、日本向け輸出は同省に高度に集中している。

表4:山東省および中国全体のゲームコンソール対日輸出(2021~2025年)(単位:100万ドル)注:コンソール本体・パーツは、2021年はHS95045011・95045019・95045091・95045099、2022年以降はHS95045020・95045030・95045080の合計とする(HSコード体系は2022年に改定されており、本稿では時系列での比較可能性を確保するため、新旧コードを統合して集計している)。
指標 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
山東省 HS95全体 1,309 1,552 1,968 1,297 2,508
うちコンソール本体・パーツ 943 1,201 1,707 997 2,272
中国全体 HS9504コンソール系 1,498 1,578 2,031 1,222 2,448
山東省シェア(コンソール系) 62.9% 76.1% 84.1% 81.6% 92.8%

注:コンソール本体・パーツは、2021年はHS95045011・95045019・95045091・95045099、2022年以降はHS95045020・95045030・95045080の合計とする(HSコード体系は2022年に改定されており、本稿では時系列での比較可能性を確保するため、新旧コードを統合して集計している)。

出所:S&P Global GTA(輸出額、輸入額)を基にジェトロ作成

山東省のコンソール関連の対日輸出シェアは2021年の62.9%から2025年の92.8%に約30ポイント上昇しており、この間に他省からの出荷が縮小し、山東省への集中が進んだことが読み取れる。

輸出額の変動は、主要ゲームコンソールの製品ライフサイクルとおおむね連動している。2023年の増加は半導体不足解消後の需要回復を反映し、2024年の減速は需要の一巡による自然調整を背景としている。2025年はモデル刷新による需要喚起とみられる。このように本分野は、食品分野の安定性とは対照的に、高成長と高変動を併せ持つ特性がある。

鉱物・電機・化学品:縮小が続く従来型分野

鉱石・スラグは2021年の16億3,200万ドルから2025年の9億9,800万ドルへと6億3,500万ドル(2021年比38.9%)減少した。中国全体に占める山東省のシェアは70.8%と依然高水準であるが、規模は縮小している(表5参照)。背景には、日本の製鉄業の需要変化や調達先の分散が影響しているとみられる。

電機・電子機器も18億8,800万ドルから12億1,300万ドルへと6億7,500万ドル(35.7%)減少した。同分野における山東省の全国シェアは3.2%にとどまり、広東省(92億3,600万ドル)、江蘇省(80億7,200万ドル)、上海市(44億8,100万ドル)など電子産業集積の大きな省・市が主要な供給元となっている。縮小の背景には、スマートフォン関連の生産・輸出が中国国内で他省と比べ相対的に伸び悩んでいることにあるとみられる。日本のスマートフォン輸入に占める中国産シェアは88~89%で安定(日本の輸入総額は2021年180億ドルから2025年208億ドルに上昇、うち中国製は同160億ドルから184億ドルに上昇)しており、中国依存度の低下は確認されない。この間、河南省の同品目の対日輸出は16億8,500万ドル(2021年)から53億4,700万ドル(2025年)へと3.2倍に拡大した。江蘇省は17億7,900万ドル(2021年)から22億7,600万ドル(2025年)へと27.9%増加した。一方、山東省は7億7,200万ドル(2021年)から2億5,800万ドル(2025年)へと66.6%減少しており、中国内での省ごとの輸出動向の違いを反映した動きとみられる。また、青島市に本拠を置くハイアールのように、山東省発の家電メーカーが日本国内でR&D・製造・販売体制を構築し現地化を深めた結果、山東省からの輸出統計には表れないかたちで日本との経済関係が継続している側面もある。

プラスチックや有機化学品もそれぞれ2021年比27.4%減、13.5%減と縮小し、化学品全般で縮小傾向がみられる。日本の輸入統計では、中国産シェアは横ばいで推移しており、日本側の調達先の変化は確認されない。日本全体の化学品輸入需要の縮小が、山東省の輸出減少に反映されているとみられる。

一方、機械類は14億7,900万ドルから14億400万ドルへとわずか5.1%の減少にとどまり、他の品目と比較して相対的に安定している。全国シェアも4.9%と、電機・電子に比べてやや高い。品目別では、建設・土木機械用部品が3億3,800万ドルと全体の約4分の1を占め、安定的な対日供給を維持している。また、ドラム式全自動洗濯機やスプリット型エアコンは、2021年比で合計1億1,300万ドル超増加しており、冷蔵庫や縦型洗濯機など旧世代の家電製品の減少を補うかたちで全体を下支えしている。機械類の相対的な維持は、山東省の産業との親和性よりも、建設機械部品という固有の需要基盤の安定と、家電品目内での構成シフトによるものとみられる。

表5:山東省の主要工業製品品目別対日輸出の変化(2021→2025年) (単位:100万ドル)(△はマイナス値)注:全国シェアは、2025年の山東省の対日輸出額÷中国全体の対日輸出額で算出。
HS 品目 輸出額
2021年
輸出額
2025年
変化額 変化率 全国シェア
2025年
26 鉱石・スラグ 1,632 998 △635 △38.9% 70.8%
85 電機・電子 1,888 1,213 △675 △35.7% 3.2%
39 プラスチック 686 498 △188 △27.4% 9.3%
84 機械類 1,479 1,404 △75 △5.1% 4.9%
29 有機化学品 701 606 △95 △13.5% 16.7%

注:全国シェアは、2025年の山東省の対日輸出額÷中国全体の対日輸出額で算出。

出所:S&P Global GTA(輸出、輸入額)を基にジェトロ作成

三極化する対日輸出構造

以上のように、山東省の対日輸出は総額こそ安定しているものの、内訳の構造転換が進んでおり、「維持(食品・衣料品)」「拡大(ゲーム機)」「縮小(鉱物・電機・化学品)」へと再編されつつある。日本企業の実務の観点からは、山東省関連のビジネス検討にあたり、これら3つの動きを参考とすることが有益だ。

  1. 食品・農水産物は高シェアの維持が続いており、供給体制は安定している。衣料品は対日供給基盤としての地位を維持しているものの、日本の輸入に占める中国全体のシェアは低下傾向が続いており、中長期的な調達先の変化を注視する必要がある。
  2. ゲーム機は製品ライフサイクルの影響を受けやすく、次世代機の投入時期が山東省の対日輸出全体に影響しやすい構造にある点に留意が必要だ。
  3. 鉱物・電機・化学品は建設機械部品のように日本向けに特化したサプライチェーンが構築されている分野では、中長期的に安定供給がなされるかを確認しつつ、取引先との関係を維持することが現実的な対応となろう。
執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所長
皆川 幸夫(みながわ ゆきお)
1992年、ジェトロ入構。ジェトロ・北京事務所、海外開発協会(出向)、海外展開支援部主幹、日本台湾交流協会(出向)などを経て、2024年8月から現職。