韓国コンテンツ産業の現在地を語る
コンテンツ輸出が関連産業の輸出拡大に寄与

2026年8月27日

2026年7月27日時点のネットフリックス(Netflix)のグローバル非英語テレビ番組週間ランキングでは、トップ10に韓国作品が5本ランクインした。

映像コンテンツのみならず、BTSをはじめとするK-ポップアーティストも世界的に人気を集めている。このような韓国コンテンツの人気・躍進がもたらす関連産業への波及効果は極めて大きい。実際、コンテンツ輸出はIT機器や化粧品、衣類など関連産業の輸出拡大にも寄与している。本稿では、韓国のコンテンツ関連政策を概観しつつ、コンテンツ輸出の現状、関連産業への波及効果などを紹介する。

韓国政府、グローバルソフトパワー5大文化強国の実現を目指す

まず、韓国政府のコンテンツ関連政策を紹介しよう。韓国が国を挙げてコンテンツ産業を支援・育成し始めたのは2009年にさかのぼる。同年、韓国政府は、コンテンツ関連の5つの機関を統合し、「韓国コンテンツ振興院(Korea Creative Content Agency、以下、KOCCA)」を設立した。翌年の2010年には、既存の「オンラインデジタルコンテンツ産業発展法」を全面改正した「コンテンツ産業振興法」を制定し、コンテンツ産業の支援・育成の土台を作った。なお、韓国のコンテンツ関連政策は、文化体育観光部(部は日本の省に相当)が主担当となっており、同部傘下のKOCCAなどの関係機関が関連政策を実施する構造となっている(KOCCAの詳細は2024年12月12日付お知らせ参照)。

韓国政府は、コンテンツ産業支援・育成の総合対策である「第1次コンテンツ産業振興基本計画(2011年)」「第2次コンテンツ産業振興基本計画(2014年)」を相次いで発表・実施した。現在は、2024年6月発表の「第3次コンテンツ産業振興基本計画」がコンテンツ産業支援・育成政策の基本方針となっている。同計画は「2027年グローバルコンテンツ4大強国」の実現に向けて、「250億ドルの輸出達成」「74万人の雇用」などの目標を掲げており、コンテンツ産業を国家戦略産業の1つに格上げした点で意義が大きい(図1参照)。

図1:第3次コンテンツ産業振興基本計画の骨子

図:PDF版を見るPDFファイル(432KB)

第3次コンテンツ産業振興基本計画の骨子。ビジョンは、グローバルコンテンツ4大強国へ飛躍(2027年)。方向は、グローバルコンテンツ産業リーダー国へ飛躍、経済的価値の創出と良質な雇用の創出、世界の日常文化への浸透。目標は、(K-コンテンツ売上高)2022年151兆ウォンから2027年200兆ウォン。(K-コンテンツ輸出額)2022年132億ドルから2027年250億ドル。(K-コンテンツ関連雇用)2022年64万人から2027年74万人。その他、戦略として、4つを策定。4つは、K-コンテンツ、国家戦略産業に育成、コンテンツ企業の成長を通じた雇用創出、海外進出を乗り越え、グローバル主流文化へ跳躍、主要ジャンル集中支援を通じた経済的価値創出。

出所:韓国文化体育観光部プレスリリース(2024年6月18日付)

2025年6月に発足した李在明(イ・ジェミョン)政権も前政権のコンテンツ支援・育成政策を継承している。同年8月に発表した「12大重点戦略課題(2025年8月14日付ビジネス短信参照)」では、戦略課題の1つとして「グローバルソフトパワー5大文化強国実現」を掲げた。これは、文化の力で世界をリードする国を目指し、2030年までに文化輸出50兆ウォン(5兆5,000億円、1ウォン=0.11円)、K-カルチャー市場規模300兆ウォンを達成することなどを目標としている。従来のコンテンツ政策がコンテンツそのものの支援・育成に焦点を当てたのに対し、「12大重点戦略課題」では「文化」という広い概念を使っている。つまり、今後はコンテンツに関連したビューティー、フード、観光などの分野へ領域を拡張していくことを意味する。

コンテンツは韓国の12番目の輸出品目

次に、韓国のコンテンツ輸出の現状を見てみよう。2025年の韓国のコンテンツ輸出額は149億1,000万ドルで、2021年から2025年までの年平均成長率は4.6%だった(表参照)。ジャンル別ではゲームが最も多く、音楽、放送・映像、知識情報(注1)などが続いている。ゲームはコンテンツ輸出の5割以上を占め、存在感が圧倒的に大きいが、近年は伸び悩んでいる。その一方で、音楽、放送・映像などの輸出は大幅に増加している。

表:コンテンツのジャンル別輸出額(単位:億ドル)(△はマイナス値)
項目 2021年
金額
2022年
金額
2023年
金額
2024年
金額
2025年 2021~2025年
年平均
成長率
金額 構成比 前年比
増減率
ゲーム 86.7 89.8 83.9 85.0 86.0 57.7% 1.1% △2.3%
音楽 7.8 9.3 12.2 18.0 23.9 16.0% 32.4% 34.0%
放送・映像 7.2 9.5 10.5 12.6 13.5 9.1% 7.3% 32.4%
知識情報 6.6 7.0 7.9 8.7 9.1 6.0% 3.5% △0.2%
キャラクター 4.1 3.9 4.9 4.6 5.2 3.5% 12.8% 4.0%
出版 4.3 3.8 5.0 4.0 3.9 2.6% △3.1% △9.4%
漫画 0.8 1.1 1.8 2.6 2.6 1.8% 0.2% 17.1%
コンテンツソリューション 2.4 2.5 2.0 2.4 2.2 1.4% △10.3% △16.9%
広告 2.6 3.3 3.4 1.2 1.2 0.8% 4.6% 5.8%
アニメーション 1.6 1.6 1.2 1.1 1.1 0.7% △7.6% 8.2%
映画 0.4 0.7 0.6 0.4 0.5 0.3% 19.9% △3.1%
合計 124.5 132.4 133.5 140.8 149.1 100.0% 5.9% 4.6%

出所:韓国コンテンツ振興院

このような成長を受け、コンテンツ輸出額は今や、二次電池、家電、繊維、コンピューターを上回る規模となっている(図2参照)。ちなみに、2025年のコンテンツ輸出額は同年の韓国の総輸出額7,093億ドルの2.1%に相当し、韓国の12番目の主力輸出品目として位置付けられる(注2)

図2:2025年における韓国の主要品目の輸出額
2025年、韓国の主要輸出品目の輸出額。半導体1734.1億ドル、自動車719.8億ドル、一般機械469.0億ドル、石油製品454.6億ドル、石油化学425.2億ドル、船舶318.2億ドル、鉄鋼302.9億ドル、自動車部品212.0億ドル、無線通信機器172.6億ドル、ディスプレイ169.9億ドル、バイオヘルス162.8億ドル、コンテンツ149.1億ドル、コンピューター137.4億ドル、繊維96.8億ドル、家電72.7億ドル、二次電池72.3億ドル。

注:コンテンツは企業アンケート調査結果を基にした推計。その他の品目は関税庁輸出統計。
出所:韓国コンテンツ振興院「韓流産業輸出の経済効果」

1億ドルのコンテンツ輸出は、2億200万ドルの関連産業の輸出を誘発

コンテンツ輸出が、他の産業などに及ぼす効果を紹介する。KOCCAは2026年7月9日、コンテンツ輸出による関連産業の輸出、国内経済への影響などを分析した「韓流(注3)産業輸出の経済効果」報告書を発表した。同報告書は、コンテンツ産業の輸出増加によって誘発される食品・化粧品・衣類・IT機器など関連産業の輸出額を推定した上で、コンテンツおよび関連産業の輸出品を国内で生産することが韓国経済に及ぼす効果を推計している。主な内容は次のとおり。

  • コンテンツ輸出による輸出誘発効果(注4)
    コンテンツ産業の輸出が1億ドル増加すると、関連産業の輸出が2億200万ドル増加する。品目別にはIT機器、化粧品、衣類、食品の順で輸出増加額が多い。
  • 国内経済への波及効果:
    コンテンツ産業の輸出が1億ドル増加すると、合計5億7,000万ドルの生産が誘発される。5億7,000万ドルの内訳は次のとおり。(1)コンテンツ産業の輸出1億ドルは、コンテンツ製作などにより1億7,000万ドルの生産を誘発する、(2)コンテンツ産業の輸出1億ドルは、2億200万ドルの関連産業の輸出を誘発し、関連産業の輸出品生産のために4億ドルの生産を誘発する。
    また、コンテンツ産業の輸出が1億ドル増加すると、3,389人の雇用(コンテンツ産業生産1,251人、関連産業生産2,138人)が創出される。

以上、韓国のコンテンツ産業政策、輸出の現状、輸出による波及効果を概観した。韓国のコンテンツ産業はゲーム、音楽、映像・放送など、日本のコンテンツ産業に比較優位にあるジャンルもある半面、アニメーション、コンソールゲームなど、グローバル展開が出遅れているジャンルもある。日韓のコンテンツ産業は世界的に見た際、競争関係にあることは間違いないが、特定のジャンルでは協力も可能であろう。実際、「俺だけレベルアップな件」(注5)などをはじめとする協力や共同制作の事例も多数みられる。日本もコンテンツ産業の海外進出に力を入れている昨今、韓国のコンテンツ産業から学ぶべき点は学び、協力できる分野では協力していくことが求められている。


注1:
知識情報とは、E-ラーニング、各種データベースなどのデジタル知識サービス、就業・不動産情報などの生活情報サービスなどを言う。 本文に戻る
注2:
韓国のコンテンツ輸出は、ライセンス契約、海外公演、デジタル転送などの多様な輸出方式が混在している。コンテンツ輸出額は、企業アンケートの結果を基に推計している。 本文に戻る
注3:
韓流は、「韓流産業振興基本法」で「韓国の文化が海外で広く広がったり、これによる文化商品またはこれに関連した商品が消費される現象」(同法第3条)と定義されている。コンテンツが「製品」であれば、韓流は「現象」と言え、韓流はコンテンツを含む広義的な概念。ただし、本稿では韓流とコンテンツを同様のものと想定。 本文に戻る
注4:
2006~2024年の関連データを活用し、関連産業輸出額を目的変数とし、コンテンツ輸出額・輸入地域のGDP・韓国のGDP・両地域間の距離・為替レートなどを説明変数として回帰分析を行ったもの。なお、過去にも同様の研究が行われている(2024年1月11日付地域・分析レポート参照)。 本文に戻る
注5:
韓国原作のウェブトゥーンを日本がアニメーション化した作品。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所
李 海昌(イ ヘチャン)
2000年から、ジェトロ・ソウル事務所勤務。本部中国北アジア課勤務(2006~2008年)を経て、現職。