インドネシアでカプセルトイ市場を開拓、ファンボックスの現地戦略

2026年9月8日

インドネシアは、人口規模や経済成長を背景に有望な消費市場として注目を集める一方、輸入規制や国家規格への対応に加え、現地で受け入れられる価格帯、流通構造への適応など、日本企業が克服すべき課題も少なくない。こうした中、文具・雑貨、キャラクターIP(知的財産)商品、カプセルトイ関連事業を手掛けるファンボックス(本社:東京都千代田区)は、同国に拠点を設け、現地生産・販売に取り組んでいる。同社の林基史代表取締役に、インドネシア市場に着目した背景、現地での生産や販路開拓、日本事業への波及効果、事業推進上の課題と今後の展望を聞いた(取材日:2026年7月13日)。


林基史代表取締役(ファンボックス提供)

事業概要紹介

ファンボックスは、文具・雑貨、キャラクターIPを活用したグッズ、カプセルトイ関連商品の企画・製作・販売を手掛ける企業だ。カプセル自販機や販促ツールの企画・製造、「街ガチャ」事業(自治体や観光地と連携し、地域限定のカプセルトイを制作・販売する事業)なども展開している。1958年創業で、東京都に本社を置き、愛知県と香川県に事業拠点を有する。近年は海外展開にも注力しており、ジェトロの「海外展開ハンズオン支援事業(注1)」も活用しつつ、インドネシアでは現地法人「funbox manufacture Indonesia(ファンボックス・マニュファクチャー・インドネシア)」を設立。カプセルトイやキャラクターグッズの現地生産・販売を進めるとともに、カプセルトイ自販機を活用した販促事業や販売チャネルの開拓に取り組んでいる。


インドネシアで展開するカプセルトイ自販機とキャラクターグッズ(ファンボックス提供)

日本のアニメ・漫画人気と市場成長性に着目し、インドネシア市場へ

質問:
インドネシア市場への展開に取り組んだ背景は。
答え:
日本の国内市場が縮小する中、今後の成長に向けて海外市場に活路を見いだす必要があると考え、日本のアニメや漫画・キャラクター商品への関心が高いアジア市場に着目した。ASEAN各国を比較し、特にインドネシア、タイ、シンガポール、ベトナムなどを有力候補として検討した。一方中国市場については、カプセルトイ業界の競合が多いことなどから展開先候補から外した。最終的にインドネシアを選択した理由は、人口規模の大きさや経済成長への期待に加え、日本で人気のあるアニメや漫画作品が現地でも広く浸透しており、当社が手掛けるキャラクターグッズやカプセルトイとの相性が良い市場と考えたからだ。一方で、同国では輸入時に国家規格であるSNI認証(注2)の取得が必要となるなど、現地の規制・制度への対応が容易ではない点もある。ただし、こうした参入障壁の高さをいったん乗り越えることができれば競合企業が限られるため、将来的な競争優位につながる要素になると捉えた。ジェトロの支援を活用しながら、現地での企業ヒアリングを通じて需要や市場性を何度も検証した。

規制・認証・価格の壁、現地生産に活路

質問:
カプセルトイは、なぜ輸出ではなく、現地生産を選んだのか。
答え:
当初は日本からインドネシアへ商品を輸出することも検討したが、関税によるコスト負担や、先述のSNI認証(注2)などが課題となった。カプセルトイ・雑貨などの商材は多品種展開が前提となるため、アイテムごとにSNI認証対応が必要となり、認証取得費用や手続き面での負担が大きい。また、玩具そのものに加え、プラスチックのカプセルなど、部材の輸出も容易ではなかった。日本から完成品を輸出して販売するモデルでは、現地消費者が購入しやすい価格帯を実現することが難しい。そのため、正規品を手ごろな価格で流通させるには、現地生産が不可欠と判断した。現在は、生産設備を日本から持ち込みつつも、原材料は可能な限り現地で調達し、生産体制の構築を進めている。

日本や他国での売り方は通用せず、販路・商品・品質を現地仕様に

質問:
現地での販路開拓はどのように進めているのか。
答え:
当初はショッピングモール中心に営業を行い、カプセルトイやキャラクターグッズを展開することを想定していた。大手企業や大手玩具チェーンへの営業も試みたが、当初は思うように進まなかった。実際には、モールへの出店ではなく、モール内のテナントや玩具チェーン、雑貨店などに個別に営業する必要があることが判明した。そこで、最初に事業化したのは、販促用途だった。例えば日本では、飲食店などで子ども向けの特典としてメダルを渡し、カプセルトイを回してもらうような販促活用がある。こうしたモデルをインドネシアでも提案し、カプセル自販機と中身の玩具を組み合わせた形で事業を始めた。その後、日本のアニメや漫画などのキャラクターIPの使用許諾を取得し、インドネシアで製造したグッズを現地の書店やコンビニエンスストアの一部店舗、ゲーム・ホビー系小売店などに提案している。販路開拓は現在も試行錯誤の段階だが、設置店舗や取扱店舗は少しずつ増えている。

インドネシアで展開するカプセルトイ自販機(同社提供)

海外での販路開拓が、日本での新たな取引機会や、社員の自信の醸成に

質問:
インドネシアでの取り組みは、日本側の事業にも影響しているか。
答え:
インドネシアでの取り組みは、現地での売り上げ拡大にとどまらず、日本本社の事業にもプラスの効果をもたらしている。現地で開拓した顧客や取引先との関係が、日本国内での新たな取引につながった例もある。日本国内では接点を持つことが難しかった大手企業から、インドネシアでの取り組みをきっかけにオファーを受け、新たな取引につながった事例もあった。また、海外での実績が日本での評価につながり、社内でも自信や誇りの醸成につながっている。一方、インドネシア進出を通じて、日本と同じビジネスモデルがそのままでは現地で通用しないことを実感した。営業手法についても、当初は日本のようにIP商品を作れば、大手小売店経由で一気に販路拡大できると思っていたが、この手法は通じないことが分かった。そのため現在は、各地の展示会への出展や現地日系企業への個別営業など、地道で時間はかかるが地に足のついた方法で、着実に販路を開拓してきている。製造面でも、缶バッジやアクリルグッズだけでは十分ではないことが分かり、顧客の要望に応じてさまざまな商品を内製できる体制づくりを進めている。

品質管理と生産体制を整え、さらなる市場拡大へ

質問:
現地生産で苦労している点について。
答え:
原材料については、日本と遜色ないものを調達できている。一方で、工場の品質管理や工程管理には課題がある。例えば、カプセル製造では、かみ合わせ部分の調整が品質を左右するため、細かな対応が欠かせない。特に日本のキャラクターIP商品では、IPホルダー(コンテンツの権利者)や日本側の品質基準を満たすため、色味や素材、造形の再現性など、高い品質水準が求められる。現地基準では流通可能な商品であっても、日本のキャラクターIP商品として求められる再現性や品質を満たすには、品質管理や生産技術のさらなる高度化が必要になる。人材面では、採用自体は比較的順調に進んでいる。現地法人は約40人体制で、日本人は1人のみという現地中心の体制で運営している。一方で、生産管理や工程管理、現場マネジメントを担う人材の育成は今後の課題となっている。
質問:
今後の展望は。
答え:
まずは、カプセル自販機の設置店舗を現在の約50店舗から100店舗へ拡大することを目指している。将来的にはさらに大きな規模での展開も視野に入れており、インドネシア市場での事業基盤を一層強化していきたい。
あわせて、より多くの日本のキャラクターIPの使用許諾を取得し、現地での商品展開を強化していく考えだ。IP商品の展開には一定の販売量や事業規模が必要となるため、まずは販売体制と生産体制を整えていく。また、販促用途の拡大にも取り組む。例えば、飲食店で食事をするとガチャを楽しめるようなモデルを、インドネシアでも広げていきたい。現地の価格帯や消費者ニーズに合わせながら、カプセルトイやキャラクターグッズの楽しみ方を広げていく方針だ。

注1:
ジェトロ「新輸出大国コンソーシアム」による支援事業。海外展開計画の策定や販路開拓、海外拠点設立などについて専門家が伴走型で支援する。 本文に戻る
注2:
インドネシア国家標準(Standar Nasional Indonesia)への適合を証明する認証制度。対象製品については取得が義務付けられている。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課
籏 あかね(はた あかね)
2026年、ジェトロ入構。アジア大洋州課でASEANおよびオセアニア関係の調査を担当。