2024年の新車自動車販売は80万台突破、電動車拡大の見込み(マレーシア)
2025年5月8日
マレーシアの2024年の自動車市場は引き続き好調で、新車販売台数は3年連続で過去最高を更新し、初めて80万台を突破した。メーカー別にみると、第2国民車メーカープロドゥアが販売台数全体を押し上げた。
新車販売台数は過去最高更新、80万台突破
2024年のマレーシアの新車販売台数は、前年比2.1%増の81万6,747台だった。前年に記録した過去最高水準を上回り、初めて80万台を超えた。マレーシア自動車協会(MAA)はその要因として、堅調な国内経済と、3.0%に維持されている政策金利(OPR)による良好な車両ローン環境、安定した社会政治環境、低失業率などがあるとした。また、MAAは、Aセグメント(注1)での高い受注残により、小型車を主力とする国産車のシェアが2.0%上昇したことに言及した。また、バッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数が、発売された新モデルが市場で好評を博したことや税制優遇措置から、45.3%増になったと強調した。
新車販売台数の内訳をみると、全体の9割強を占める乗用車は前年比3.9%増の74万7,180台、商用車は13.8%減の6万9,567台だった(表1参照)。MAAによると、乗用車では、とりわけプロドゥアを中心に国産車販売が好調だった。また、商用車は、2024年6月に実施されたディーゼル補助金の撤廃により、ピックアップトラックの需要縮小を主要因として、前年よりも販売が減少した。
乗用車の車種別では、普通乗用車が7.9%増の47万5,250台、多目的車(MPV)が6.6%増の6万9,237台、窓付きバンが42.2%増の1,128台と、いずれも前年を上回った(表1参照)。一方、スポーツ用多目的車(SUV)は5.4%減の20万1,565台だった。商用車の車種別では、最大シェアのピックアップトラックが16.4%減の4万9,003台だった。
車種 | 2023年 | 2024年 | |||
---|---|---|---|---|---|
通年 (台) |
シェア (%) |
通年 (台) |
シェア (%) |
前年比 (%) |
|
乗用車 | 719,145 | 89.9 | 747,180 | 91.5 | 3.9 |
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440,319 | 55.1 | 475,250 | 58.2 | 7.9 |
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213,096 | 26.6 | 201,565 | 24.7 | △ 5.4 |
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64,937 | 8.1 | 69,237 | 8.5 | 6.6 |
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793 | 0.1 | 1,128 | 0.1 | 42.2 |
商用車 | 80,676 | 10.1 | 69,567 | 8.5 | △ 13.8 |
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58,600 | 7.3 | 49,003 | 6.0 | △ 16.4 |
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15,264 | 1.9 | 14,213 | 1.7 | △ 6.9 |
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4,737 | 0.6 | 3,948 | 0.5 | △ 16.7 |
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1,845 | 0.2 | 2,081 | 0.3 | 12.8 |
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230 | 0.0 | 322 | 0.0 | 40.0 |
合計 | 799,821 | 100.0 | 816,747 | 100.0 | 2.1 |
注:シェアの母数は、新車販売台数合計。
出所:マレーシア自動車協会(MAA)
2024年の新車販売台数を月別にみると、12月は同月としては過去最高の8万1,735台を記録し、初めて8万台を超えた(図1参照)。同年末の各社によるプロモーション活動が大きく寄与したと、民間調査会社ケナンガ・リサーチは指摘した。

出所:表1に同じ
メーカー別の市場シェア差が際立つ
2024年の新車販売台数をメーカー別にみると、国民車メーカー2社(プロトン、プロドゥア)が市場シェアの61.9%を占めた(表2参照)。商用車を販売しないこの2社は、乗用車の市場シェアでは67.7%を占めた。
項目 | 2023年 | 2024年 | |||
---|---|---|---|---|---|
通年 (台) |
シェア (%) |
通年 (台) |
シェア (%) |
前年比 (%) |
|
乗用車 | 719,145 | 89.9 | 747,180 | 91.5 | 3.9 |
商用車 | 80,676 | 10.1 | 69,567 | 8.5 | △ 13.8 |
国民車(乗用車) | 481,300 | 60.2 | 505,689 | 61.9 | 5.1 |
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330,325 | 41.3 | 358,102 | 43.8 | 8.4 |
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150,975 | 18.9 | 147,587 | 18.1 | △ 2.2 |
国民車以外(乗用車+商用車) | 318,521 | 39.8 | 311,058 | 38.1 | △ 2.3 |
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106,206 | 13.3 | 100,701 | 12.3 | △ 5.2 |
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80,032 | 10.0 | 81,699 | 10.0 | 2.1 |
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21,719 | 2.7 | 16,167 | 2.0 | △ 25.6 |
新車販売台数合計 | 799,821 | 100.0 | 816,747 | 100.0 | 2.1 |
注1:プロトン、プロドゥア、ホンダは乗用車のみ。トヨタ(レクサスを含まず)と三菱(三菱ふそうを含まず)は、乗用車と商用車の合算。
注2:シェアの母数は、新車販売台数合計。
出所:表1に同じ
日本のダイハツ工業が25%、三井物産が7%出資する第2国民車プロドゥアは、前年比8.4%増の35万8,102台で、43.8%のシェアを占め、引き続き首位に立った。同社はモデル別の販売台数内訳を公開していないが、総販売台数は過去最高だったと発表した。また、2025年の見通しについて、同社は工場の改修や、新モデルの開発と生産能力強化の設備投資に重点を置くため、生産台数は4.9%減の35万台となり、これにより販売台数も3.7%減の34万5,000台になると予測した。プロドゥアによるわずかな減産は、マレーシアの2025年の新車販売台数に影響を与えることが予想される。
2017年に中国の吉利汽車が49.9%を出資した第1国民車プロトンは、2.2%減の14万7,587台で、シェアは18.1%と前年から横ばいだった。同社はプレスリリースで、競合モデルの台頭により市場競争が激化した側面もあったが、輸出の拡大により好調な販売実績を維持した。同社によると、ベストセラーモデルの代表的な小型セダン「サガ」が引き続き好調で、前年比3.7%増の7万2,769台を販売した(注2)。さらに、2023年末に新たに発表した「S70」は、総計1万9,182台を納車し、マレーシアで最も人気のあるCセグメント・セダン(注3)となった。加えて、SUVも好調で、とりわけ4年連続でベストセラーモデルの「X50」が2万3,647台、「X70」が8,992台、「X90」が3,553台販売された。
日系を含む外資系メーカーでは、トヨタが前年比5.2%減の10万701台と減速したものの、市場シェアの12.3%を占有し、外資系メーカーでは4年連続で首位を独走した。同社は乗用車と商用車を販売しているが、モデル別の販売台数内訳は公開していない。
市場シェアの1割を占めるホンダは前年比2.1%増の8万1,699台で、2位だった。同社は最も売れた上位3モデルとして、「HR-V」(SUV、同社売り上げシェア26.0%)、「シティ」(セダン、同25.0%)、「CR‑V」(SUV、同14.0%)を挙げた。なお、商用車を販売していないホンダは、乗用車カテゴリーではトヨタを抜き、外資系メーカーとしては11年連続で首位を維持した。
新車への需要拡大を反映し、2024年の生産台数は前年比2.0%増の79万347台だった。そのうち、乗用車は2.7%増の74万4,604台だった一方、商用車は8.0%減の4万5,743台だった。月別では、販売台数とほぼ同じ傾向がみられた(図2参照)。

出所:表1に同じ
メーカー別の生産台数をみると、国民車では、プロドゥアが前年比7.9%増の36万1,000台に対し、プロトンが3.4%減の14万9,568台だった(表3参照)。国民車以外では、トヨタが3.6%減の9万4,597台、ホンダが8.1%増の8万9,857台、三菱自動車が13.3%減の1万802台だった。
項目 | 2023年 | 2024年 | |||
---|---|---|---|---|---|
通年 (台) |
シェア (%) |
通年 (台) |
シェア (%) |
前年比 (%) |
|
乗用車 | 724,891 | 93.6 | 744,604 | 94.2 | 2.7 |
商用車 | 49,709 | 6.4 | 45,743 | 5.8 | △ 8.0 |
国民車(乗用車+商用車) | 489,348 | 63.2 | 510,568 | 64.6 | 4.3 |
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334,482 | 43.2 | 361,000 | 45.7 | 7.9 |
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154,866 | 20.0 | 149,568 | 18.9 | △ 3.4 |
国民車以外(乗用車+商用車) | 285,252 | 36.8 | 279,779 | 35.4 | △ 1.9 |
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98,094 | 12.7 | 94,597 | 12.0 | △ 3.6 |
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83,111 | 10.7 | 89,857 | 11.4 | 8.1 |
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12,454 | 1.6 | 10,802 | 1.4 | △ 13.3 |
新車生産台数合計 | 774,600 | 100.0 | 790,347 | 100.0 | 2.0 |
注1:プロトン、プロドゥア、ホンダ、三菱自動車は乗用車のみ。トヨタは、乗用車と商用車の合算。
注2:シェアの母数は、生産台数合計。
出所:表1に同じ
2025年は前年を下回る見込み、電動車の展望は良好
2025年通年の新車販売台数見通しについて、MAAは1月21日、前年比4.5%減の78万台(うち、乗用車が71万台、商用車が7万台)と予測した。プラス面として、(1)世界経済の成長率がわずかに加速する見込みであること、(2)堅調な国内消費と投資を前提に、マレーシア経済も4.5~5.5%成長が見込まれること、(3)中央銀行の政策金利(OPR)据え置きによる自動車需要の継続、(4)2025年2月の最低賃金引き上げと公務員給与の引き上げ、(5)安定した労働市場による購買力の下支え、(6)2025年末に予定されるBEVの免税措置終了による駆け込み需要、(7)新ブランドやモデルの登場と、これに伴う戦略的な販売促進活動や付加価値サービスによる市場への刺激などを挙げた。
他方で、マイナス面として、(1)米中貿易摩擦による経済の不確実性、(2)ガソリン補助金の合理化が大排気量車の販売に影響を与える可能性〔一方、同政策は電動車(xEV)の販売を促進する可能性もある〕、(3)(特に地方部での)充電設備の不足がxEVの普及や販売台数に影響を与えることなどを指摘した。
その後、民間調査会社ケナンガ・リサーチは1月28日時点で、2025年の予測販売台数を80万5,000台とし、MAAの予測を上回る見通しを発表した。その背景には、新物品税(注4)の導入延期により、消費者の先行購入意欲が引き出されたとの見方がある。この恩恵を最も受けるのはプロドゥアで、市場シェアの44.0%を占めるとの予想だ。同社は加えて、魅力的な新モデルの発売や、家計収入の増加、安定した労働市場など、MAA同様のプラス要因を挙げた。また、2024年末時点で15万台の受注残があることから、自動車市場の見通しは依然として良好との楽観的な見方も示した。
なお、2024年はxEVの販売台数も好調に推移し、2023年の3万8,214台から19.2%増の4万5,562台に増加した。新車販売台数に占めるシェアは前年の4.8%から5.6%へと拡大した。うちBEVが45.3%増の1万4,766台、ハイブリッド電気自動車(HEV)が9.8%増の3万796台だった。2025年は輸入BEVに対する輸入税や物品税の全額免除が適用される最後の年のため、xEVへの駆け込み需要が見込まれるとMAAは見込んでいる。証券会社CIMBセキュリティーズは、2024年に最も売れたEV上位3ブランドとして、中国EV大手「BYD」(マレーシア道路交通局によると、市場シェア39.3%)、米国の「テスラ」(同23.6%)、ドイツの「BMW 」(同9.1%)を挙げた。同社は2025年も中国メーカーの台頭が続くと予想している。xEVの市場拡大に伴う充電設備拡充の必要性を意識するマレーシア政府は、2025年までに1万カ所のEV充電施設設置を目指しているが(2024年10月3日付地域・分析レポート参照)、2024年12月末時点で、同国内のEV充電施設数は計3,611カ所(うち、急速充電の直流施設が1,095カ所、普通充電の交流施設が2,516カ所)にとどまる。
- 注1:
- 重量が1,000 キログラム以下の車で、最も小型の車両カテゴリーを指す。
- 注2:
- 同社のモデル別販売台数は輸出台数を含む。
- 注3:
- 重量が1,251~1,400キログラムの車で、「小型ファミリーカー」とも呼ばれる。
- 注4:
- 現地組み立て車に対する物品税の範囲を拡大し、販売費用、マーケティングおよび管理費用、利益などの非製造項目を含むようにする規制。この規制導入により、現地組み立て車の平均価格が10~30%上昇すると予想される。当初は2020年1月にこの規制を導入する予定だったが、新型コロナウイルス禍などを経て導入延期を繰り返している。

- 執筆者紹介
- ジェトロ・クアラルンプール事務所
-
戴可炘(タイ・カーシン)
2024年、ジェトロ入構。ジェトロ・クアラルンプール事務所で調査アシスタント・ダイレクターを務める。