中国で着実に店舗増、存在感強めるローソン
中国・華南地域のコンビニ市場と企業の戦略

2025年4月17日

日本を代表するコンビニエンスストアチェーンの1つ、ローソンが中国各地で着実に店舗数を増やしている。ローソンは1996年7月に上海政府の要請を受け、現地子会社(上海ローソン)を設立し、中国初の日系コンビニとして上海市に進出した。2022年9月に広州市で最初の店舗をオープンして以降、華南地域でも存在感を強めている。

同社が発表した2025年2月期第1四半期決算短信によると、同社の中国事業は景気減速や消費者購買行動の変化に、コストコントロールなどの対応をとって増益となった。2024年5月末日時点の中国の店舗数は6,335店舗で、2024年2月末時点から3カ月で47店舗増加した。

中国で出店エリアと店舗数の拡大を加速させているローソン。ジェトロは広東・深セン羅森(ローソン)便利有限公司の八木康寿副総経理に、同社の華南地域での戦略について聞いた(メール形式でのヒアリング、2024年12月~2025年2月)。

質問:
現在の華南地域や中国大陸での業務展開状況は。
答え:
現在、広東省(深セン市、東莞市、広州市、中山市、佛山市、江門市、珠海市)と、福建省(厦門市、泉州市、漳州市)の10都市に300店舗以上を出店している。また、中国大陸では、上海市とその周辺、重慶市とその周辺、遼寧省、北京市とその周辺、湖北省など17地域に出店しており、2024年11月末時点で約6,500店舗ある。
質問:
華南地域の業務展開の中で特に力を入れている商品やサービスは。
答え:
おでんや揚げ物、麺などのカウンターフーズ、入れたてコーヒー、店内で焼いたホットサンド、チルドデザートなどのオリジナル商品に力を入れており、華南地域のお客さまに広く受け入れられている。
質問:
華南地域の消費傾向で、華東や華北地域と異なる点や特徴的な点は。
答え:
華南地域は朝食、昼食、夕食だけでなく、間食と夜食の需要も大きいことが他の地域と異なる。そのため、当社としても、いつ来てもどこでも食べられるオリジナル商品の展開に注力している。また、高温多湿の地域のため、ミネラルウオーターや茶といった飲料などもよく売れる。
質問:
ターゲット顧客とそのニーズは。
答え:
ターゲット顧客は10代から30代前半までの若年層だ。若年層の顧客は流行に敏感なため、ホットサンドやチルドデザートなど、今までにない新しい商品を提供している。
質問:
同じおにぎり、サンドイッチ、弁当という分類で、日本と中国では中身が全く異なるものがあるようだが、なぜか。
答え:
日本と中国の嗜好(しこう)は異なるため、地域社会のニーズを捉えた商品の企画・開発を推進している。また、健康志向のニーズも高まっており、健康を訴求した商品(雑穀米を使用したおにぎりや、全粒粉を使用したサンドイッチなど)の開発に取り組んでいる。日本のロ―ソンでヒットした商品を当社独自のレシピで開発・発売している。
質問:
中国では、日本以上にECが発達しており、淘宝や天猫などのECプラットフォームで食品・日用品を購入する消費者も多い。貴社のリアル店舗のターゲット層は。
答え:
特定のターゲット層ということではなく、地域社会のさまざまなお客さま全てに安心して店舗をご利用してもらえるように努めている。また、それぞれのお客さまのニーズに合う品ぞろえと、新鮮な驚きのある商品・サービスの提供、そして、いつでも立ち寄りたくなる店舗環境の整備に取り組んでいる。
質問:
日系/地元系の小売店舗やコンビニエンスストアとの競争に勝つための工夫は。
答え:
日本式のコンビニエンスストアとして中国上海市に初進出した1996 年から蓄積してきたノウハウがある。それらのノウハウを取り入れた加盟店対応や、商品とサービスを提供するとともに、華南地域のお客さまに適したオリジナル商品の開発・販売を行い、日系/地元系の小売店舗やコンビニエンスストアとの差別化を図っており、華南地域のお客さまに好評をいただいている。
質問:
他の日系企業との差別化で特に意識している点は。
答え:
ローソンの強みのチルドデザート、フライドフーズ、米飯などオリジナル商品の開発を推進している。また、お客さまに喜んでもらえる品ぞろえを行うと同時に、キレイな店舗と心のこもった接客により、お客さま満足度の向上に努めている。
質問:
華南地域にも、LuckinコーヒーやCottiコーヒーなど、現地のコーヒー店が次々と出店している。貴社は入れたてコーヒーに力を入れているように思うが、どのように差別化を図っているか。
答え:
お客さまが買い求めやすい価格帯で提供し、「毎日飲みたいコーヒー」を目指している。また、コーヒーと相性の良い商品をお手頃なセット価格で提供し、お客さまに喜んでもらえるように努めている。

地下鉄の林和西駅改札口前の店舗
(ジェトロ撮影)

広州市内のローソン、カフェスペースを備える
(ジェトロ撮影)
質問:
華南地域で新商品を出す頻度は。
答え:
具体的な頻度は申し上げられないが、今まで華南地域のコンビニエンスストアにはなかった商品を常に提供するように努めている。
質問:
最近、中国の景気減速の影響で、消費者の財布のひもが固くなっている、あるいは、以前より店舗が借りやすいといったことはあるか。
答え:
中国の景気の影響はあるかわからないが、どんな状況にあっても、お客さまにとって買い求めやすい価格で提供するように努めている。店舗が以前より借りやすくなっているということは特に感じていない。
質問:
新しい店舗を出店する際、どういったところに力を入れているか。
答え:
中国は人材の流動性が高いため、人材の確保が難しい。また、接客の質を高めるため、出店前後の研修には特に力を入れている。
質問:
今後の業務展開、地域展開の計画について、どう考えているか。
答え:
広東省は経済規模が最も大きいエリアだ。グレーターベイエリア(粤港澳大湾区)としてさらなる拡大が見込まれるため、省内の出店を加速していく。また、華南地域は日系/地元系の小売店舗やコンビニエンスストアが数多く出店しており、競争が他の地域と比べて非常に激しいため、オリジナル商品力のさらなる強化、売り上げが拡大している美団(注1)や餓了么(注2)をはじめとしたデリバリーサービスの継続的な獲得に取り組むほか、グループチャットやSNSでのライブ配信を活用したマーケティングを展開するなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく。

観光スポットの広州タワー付近にあるコンテナ型店舗(ジェトロ撮影)

注1:
美団:2010年に開設された生活関連サービスの電子商取引(EC)プラットフォーム。中国のフード宅配アプリ大手。
注2:
餓了么:2008年設立。2018年から中国インターネット大手のアリババ集団の子会社が運営。中国のフード宅配アプリ大手。
執筆者紹介
ジェトロ・広州事務所 経済分析・企業支援部 部長
西村 京子(にしむら きょうこ)
メーカー、商社勤務を経て、2021年4月、ジェトロ入構。海外展開支援部で機械環境・日用品関連の日本企業の販路開拓支援に従事し、2023年11月からジェトロ・広州事務所に駐在。2025年1月から現職。