2024年大学ランキングでTN州が上位、インド人材採用に連携も有効

2024年9月9日

インド教育省が上位100大学を選ぶ大学ランキング(NIRF)で、引き続き南部タミル・ナドゥ(TN)州がランクイン最多の大学を抱えていることが明らかになった。日本企業や進出済み日系企業によるTN州学生の採用期待も高い。日本と比較して、インドの学生の就職における大学の担当部署による役割は大きく、企業と大学の連携も有効な手段となる。

TN州は引き続き州別首位、理工系が上位

インド教育省は8月12日、2024年のインド国内大学ランキング(NIRF)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。NIRFは、「教育力・学習力」「研究実績」「卒業生による成果」「大学の開放性」「知名度」から決定されており、分野別および、総合ランキングを毎年発表している。タミル・ナドゥ(TN)州チェンナイ市に所在するインド工科大学マドラス校(IITM)が前年に引き続き、総合ランキング1位となった。

総合ランキング100位以内には、前年のランキング(2023年11月27日付地域・分析レポート参照)に引き続き、TN州の大学18校がランクインし、州別第1位となった(表1参照)。人口規模の大きいマハーラーシュトラ州(第2位)、ウッタル・プラデシュ州(第3位)より上位に位置していることからも、TN州の大学がインドで評価されていることがうかがえる。TN州は工科大学生数が州別で最多であり、高等教育に進む学生の割合も高い州として知られ、「人材」はTN州の強みの1つとなっている。

表1:2024年のインド大学ランキングにおける100位以内の学校数(州別)
州名 総合ランキング100位以内の学校数
タミル・ナドゥ州 18
マハーラーシュトラ州 11
ウッタル・プラデシュ州 8
デリー準州 7
パンジャブ州 6
カルナータカ州 6
西ベンガル州 6
ウッタラカンド州 4
テランガナ州 4
ラジャスタン州 4
ケララ州 4
オディシャ州 3
アッサム州 3
アンドラ・プラデシュ州 3

注:3校以上がランクインした州を記載。
出所:NIRFを基にジェトロ作成

表2は、TN州から総合ランキングトップ100位にランクインした大学のリストである。これらの大学は、企業が人材採用や研究開発などで大学と連携を模索する場合の候補となってくるであろう。もちろん、ランキングに入っていない大学でも、日本語教育に力を入れている大学や、特定分野の研究に強い大学、進出先の立地に近い大学などが連携の候補となり得る。

なお、日本において「インドの大学」といった場合、インド工科大学(IIT)の名前が挙がることが多い。インド工科大学は国立の理系大学群(23校)であり、立地によって、その評価は若干異なる。どのIITも地域を代表する良い大学ではあるが、グジャラート州のガンディナガール校(第29位)、ウッタル・プラデシュ州のバラナシ校(第30位)、マディヤ・プラデシュ州のインドール校(第33位)などと比較すると、インド工科大学よりも評価の高い州立大学や私立大学も存在する。ランキングを参考に、インド工科大学以外の大学との連携も検討することが有効だ。

表2:TN州の総合ランキング100位以内の大学
順位 日本語名 英語名称 所在地
1 インド工科大学マドラス校 Indian Institute of Technology Madras チェンナイ
18 アムリタ・ビシュワ・ビダヤピタム大学 Amrita Vishwa Vidyapeetham コインバトール
19 ベロール工科大学 Vellore Institute of Technology ベロール
20 アンナ大学 Anna University チェンナイ
21 エス・アール・エム理工科大学 S.R.M. Institute of Science and Technology チェンナイ
22 サビタ医療科学大学 Saveetha Institute of Medical and Technical Sciences チェンナイ
31 国立工科大学ティルチラパッリ校 National Institute of Technology Tiruchirappalli ティルチラパッリ
44 バラティヤール大学 Bharathiar University コインバトール
47 シャンムーガ・アーツサイエンス科学学園 Shanmugha Arts Science Technology and Research Academy タンジャブル
50 カラサリンガム学園 Kalasalingam Academy of Research and Education スリビリプトゥル
55 バラティダサン大学 Bharathidasan University ティルチラパッリ
64 マドラス大学 University of Madras チェンナイ
76 アラガッパ大学 Alagappa University カライクディ
81 スリ・シバスブラマニア・ナダール工科大学 Sri Sivasubramaniya Nadar College of Engineering カーラバッカム
85 サトゥヤバマ工科大学 Sathyabama Institute of Science and Technology チェンナイ
91 バーラト高等教育大学 Bharath Institute of Higher Education and Research チェンナイ
96 スリ・ラマチャンドラ高等教育大学 Sri Ramachandra Institute of Higher Education and Research チェンナイ
100 ペリヤール大学 Periyar University セーラム

出所:NIRFを基にジェトロ作成

インド人材採用の関門となるスクリーニング

インド人材の採用にあたっては、スクリーニングが課題となる。世界的な企業の代表として活躍するインド人や、米国シリコンバレーで活躍するエンジニア人材などのイメージから、インド人がICT(情報通信技術)などの技術を中心に非常に優れているイメージが先行している。一方、インドの人口は約14億人であり、玉石混交となっているのが実態だ。そこで、優秀な人材を採用するためにはスクリーニングが関門となる。インドに進出する日系企業の中にも、人材の採用を課題としてあげる企業は多い。

課題となるスクリーニングを解決する1つの手段が、大学との連携である。インドの大学からの新卒採用プロセスは、それぞれの大学によって異なり複雑だが、就職支援の担当部署が存在する場合が多い。日本と比較して、インドにおける就職支援担当部署の役割は大きい。企業との折衝から、学内での公募、マッチングまでを担う場合もある。また、私立大学を中心に、非常に柔軟な対応が可能なのもインドの特徴だ。必要な技能がある場合は、カリキュラムの変更や、特別コースを用意してくれる大学も存在する。

求める人材像が明確な場合は、大学と連携の上、人材を確保していくことも有効である。TN州では、日系企業との連携に関心の高い大学をリストアップしている日系企業との連携に関心のある タミル・ナドゥ州大学リスト (採用、インターンシップ、CSR等)資料PDFファイル(2.2MB)参照。参考に利用いただければ幸いである。

執筆者紹介
ジェトロ・チェンナイ事務所
山下 純輝(やました じゅんき)
2016年、ジェトロ入構。本部で農林水産物・食品の輸出支援業務に従事後、ジェトロ・アディスアベバ事務所、ジェトロ新潟を経て2023年3月から現職。事業担当として、主にスタートアップ、大学連携、日本製品の輸出支援業務を担当。