自動車生産と新車登録、ともに増加(ルーマニア)
EVの登録も好調

2023年7月20日

ルーマニアの2022年の自動車生産台数は、前年比21.1%増の50万9,465台。新型コロナ禍前の2019年の実績を超えた。

新車登録台数も6.7%増加した。中でも、バッテリー式電気自動車(BEV)は83.5%増と大きく伸びた。その結果、BEVのシェアが9.0%まで拡大した。

2022年の国内生産台数は前年比21.1%増

2023年1月16日付ルーマニア自動車製造者協会(ACAROM)発表(ルーマニア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、国内自動車生産台数は2022年、新型コロナ禍前の2019年を超えた。当地での自動車生産は、地場の自動車メーカー・ダチアと米国系フォードの2社体制だ。前者が前年比22.1%増の31万4,228台、フォードが19.5%増の19万5,237台。2社合計で、21.1%増の50万9,465台だった(表1参照)

表1:国内完成車メーカー別生産台数(単位:台、%)
メーカー 2019年 2020年 2021年 2022年
台数 伸び率
ダチア 349,528 259,099 257,405 314,228 22.1
フォード 140,884 179,008 163,350 195,237 19.5
合計 490,412 438,107 420,755 509,465 21.1

出所:ルーマニア自動車製造者協会(ACAROM)のデータを基にジェトロ作成

なお、ダチアは従来、国内で通常のエンジン車だけを生産してきた。しかし2023年1月からは、ハイブリッド車(HV)「ジョガーハイブリッド140(Jogger HYBRID 140)」の生産を開始した。

新車登録台数でトヨタがシェア拡大

内務省運転免許自動車登録所(DRPCIV)のデータによると、2022年の国内乗用車の新車登録台数は前年比6.7%増。12万9,328台だった(表2参照)。

グループ別にみると、首位はダチアを擁すルノー・グループ。12.7%増の4万8,363台(シェア37.4%)だった。以下、2位がフォルクスワーゲン(VW)グループ〔9.6%増、2万632台(16.0%)〕、3位に現代グループ〔0.7%減、1万2,279台(9.5%)〕、4位ステランティス・グループ、5位トヨタ・グループ(レクサスを含む)と続く。現代グループのシェアが減少した一方で、トヨタ・グループは12.7%増の1万311台。シェアが0.5ポイント拡大し8.0%になった。

メーカー別にみると、ダチアが14.8%増の3万9,920台でトップだった。2位はトヨタで13.1%増、1万110台。3位は現代で0.2%増の9,551台だった。

表2:メーカー・グループ別新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・グループ(G) 2019年 2020年 2021年 2022年
台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 伸び率
ルノーG 63,589 39.8 49,903 39.9 42,913 35.4 48,363 37.4 12.7
階層レベル2の項目ダチア 50,315 31.5 39,940 32.0 34,788 28.7 39,920 30.9 14.8
階層レベル2の項目ルノー 13,274 8.3 9,963 8.0 8,125 6.7 8,443 6.5 3.9
フォルクスワーゲンG 25,855 16.2 21,900 17.5 18,830 15.5 20,632 16.0 9.6
階層レベル2の項目シュコダ 12,372 7.7 10,288 8.2 7,967 6.6 8,669 6.7 8.8
階層レベル2の項目フォルスワーゲン 10,306 6.5 9,441 7.6 7,914 6.5 8,203 6.3 3.7
階層レベル2の項目アウディ 1,607 1.0 1,154 0.9 1,712 1.4 2,337 1.8 36.5
階層レベル2の項目セアト 1,188 0.7 620 0.5 740 0.6 658 0.5 △ 11.1
階層レベル2の項目ポルシェ 331 0.2 335 0.3 285 0.2 350 0.3 22.8
階層レベル2の項目クプラ 3 0.0 145 0.1 325 0.3 124.1
階層レベル2の項目ベントレー 24 0.0 26 0.0 38 0.0 58 0.0 52.6
階層レベル2の項目ランボルギーニ 27 0.0 33 0.0 29 0.0 32 0.0 10.3
現代G 10,540 6.6 8,908 7.1 12,360 10.2 12,279 9.5 △ 0.7
階層レベル2の項目現代 8,019 5.0 6,852 5.5 9,532 7.9 9,551 7.4 0.2
階層レベル2の項目起亜 2,521 1.6 2,056 1.6 2,828 2.3 2,728 2.1 △ 3.5
ステランティスG 16,306 10.2 12,561 10.0 10,493 8.7 10,493 8.1 0.0
階層レベル2の項目プジョー 3,655 2.3 3,517 2.8 3,403 2.8 3,532 2.7 3.8
階層レベル2の項目シトロエン 2,609 1.6 2,170 1.7 2,336 1.9 2,058 1.6 △ 11.9
階層レベル2の項目オペル 7,896 4.9 2,766 2.2 2,009 1.7 1,714 1.3 △ 14.7
階層レベル2の項目ジープ 513 0.3 1,476 1.2 1,358 1.1 1,511 1.2 11.3
階層レベル2の項目フィアット 1,490 0.9 2,388 1.9 1,191 1.0 1,255 1.0 5.4
階層レベル2の項目アルファロメオ 105 0.1 186 0.1 88 0.1 142 0.1 61.4
階層レベル2の項目DS 16 0.0 43 0.0 82 0.1 237 0.2 189.0
階層レベル2の項目マセラティ 22 0.0 14 0.0 24 0.0 44 0.0 83.3
トヨタ 7,001 4.4 6,554 5.2 9,147 7.5 10,311 8.0 12.7
階層レベル2の項目トヨタ 6,714 4.2 6,363 5.1 8,942 7.4 10,110 7.8 13.1
階層レベル2の項目レクサス 287 0.2 191 0.2 205 0.2 201 0.2 △ 2.0
フォード 11,908 7.5 6,874 5.5 8,195 6.8 8,665 6.7 5.7
メルセデス・ベンツG 3,785 2.4 3,073 2.5 3,744 3.1 3,855 3.0 3.0
階層レベル2の項目メルセデス・ベンツ 3,540 2.2 2,972 2.4 3,653 3.0 3,735 2.9 2.2
階層レベル2の項目メルセデス・AMG 20 0.0 37 0.0 85.0
階層レベル2の項目スマート 245 0.2 101 0.1 71 0.1 83 0.1 16.9
BMW G 3,930 2.5 3,138 2.5 3,555 2.9 3,243 2.5 △ 8.8
階層レベル2の項目BMW 3,696 2.3 2,861 2.3 3,274 2.7 2,982 2.3 △ 8.9
階層レベル2の項目ミニ 228 0.1 267 0.2 269 0.2 246 0.2 △ 8.6
階層レベル2の項目ロールス・ロイス 6 0.0 10 0.0 12 0.0 15 0.0 25.0
スズキ 4,960 3.1 3,956 3.2 4,381 3.6 2,635 2.0 △ 39.9
マツダ 2,776 1.7 2,121 1.7 2,498 2.1 2,298 1.8 △ 8.0
KGモビリティ(旧サンヨン) 138 0.1 194 0.2 536 0.4 1,690 1.3 215.3
ホンダ 1,510 0.9 1,023 0.8 890 0.7 1,074 0.8 20.7
テスラ 18 0.0 62 0.0 223 0.2 1,020 0.8 357.4
ボルボ 941 0.6 669 0.5 975 0.8 996 0.8 2.2
日産 4,896 3.1 2,700 2.2 1,562 1.3 871 0.7 △ 44.2
ランドローバー 696 0.4 598 0.5 509 0.4 477 0.4 △ 6.3
三菱 575 0.4 560 0.4 187 0.2 232 0.2 24.1
ジャガー 212 0.1 147 0.1 118 0.1 61 0.0 △ 48.3
フェラーリ 19 0.0 20 0.0 31 0.0 49 0.0 58.1
スバル 16 0.0 30 0.0 35 0.0 47 0.0 34.3
合計(その他含む) 159,696 100.0 125,006 100.0 121,208 100.0 129,328 100.0 6.7

注1:「−」はデータなし。台数15台未満のものは省略しているため、メーカー・グループ別の内訳の合計値が総計と合わない場合がある。
注2:自動車製造業者・輸入業者協会(APIA)は2022年分からメーカー・ブランド別の新車登録データを公表しなくなった。そのため、本稿では2019年と2020年はAPIA、2021年と2022年は内務省運転免許自動車登録所(DRPCIV)のデータを利用することにした。
なお、APIAは、一部の車両を乗用車でなく小型商用車として分類する。そのため、DRPCIVの登録台数よりも低めに計上されることに注意。
出所:APIAとDRPCIVのデータを基にジェトロ作成

全国の新車登録台数を動力別にみると、内燃機関だけを動力源にする車、すなわちガソリン・エンジン車、ガソリン・LPガス(LPG)またはガソリン・圧縮天然ガス(CNG)の双方に対応するエンジン車(バイフューエル)、ディーゼル・エンジン車の合計割合は64.4%とまだ大半を占めている(図1参照)。一方、ガソリン・ハイブリッド車とディーゼル・ハイブリッド車の合計割合は26.6%と前年の25.3%から微増、バッテリー式電気自動車(BEV)は9.0%と前年の5.2%から3.8ポイント拡大した。

図1:動力別新車登録台数の割合(2022年)
ガソリン41.2%、ディーゼル12.7%、バイオフューエル10.5%、ガソリン・ハイブリッド24.5%、ディーゼル・ハイブリッド2.1%、BEV 9.0%。

出所:DRPCIVのデータを基にジェトロ作成

BEV市場ではダチアとテスラが2強

2022年のBEVの新車登録台数は、1万1,638台。前年比83.5%増と、大幅に増加したかたちだ(表3参照)。

メーカー別にみると、首位はダチア(注)で6,830台。前年比2.2倍と大きく伸び、シェアは58.7%だった。小型BEV「スプリング」が、その販売の主流だ。2位はテスラの1,020台。4.6倍と伸び率はさらに大きかった。シェアは8.8%だった。

表3:BEVのメーカー別新車登録台数(上位10社)(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2021年 2022年
台数 シェア 伸び率
ダチア 3,066 6,830 58.7 122.8
テスラ 223 1,020 8.8 357.4
フォルクスワーゲン 985 895 7.7 △ 9.1
現代 448 503 4.3 12.3
ルノー 347 423 3.6 21.9
メルセデス・ベンツ 140 350 3.0 150.0
BMW 148 231 2.0 56.1
プジョー 157 226 1.9 43.9
シュコダ 175 183 1.6 4.6
フィアット 83 146 1.3 75.9
合計(その他含む) 6,342 11,638 100.0 83.5

出所:DRPCIVのデータを基にジェトロ作成

HV(ガソリン・ハイブリッド車とディーゼル・ハイブリッド車の合計)も伸びた。その新車登録台数は、前年比12.1%増の3万4,410台。このうち、首位はトヨタで8,428台。シェア24.5%を占めた(表4参照)。2位はフォード4,501台、3位に現代3,400台と続いた。

表4:HVのメーカー別新車登録台数(上位10社)(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2021年 2022年
台数 シェア 伸び率
トヨタ 7,031 8,428 24.5 19.9
フォード 3,749 4,501 13.1 20.1
現代 3,204 3,400 9.9 6.1
スズキ 4,380 2,635 7.7 △ 39.8
ルノー 1,521 2,379 6.9 56.4
BMW 1,916 1,762 5.1 △ 8.0
メルセデス・ベンツ 1,347 1,724 5.0 28.0
マツダ 1,702 1,723 5.0 1.2
アウディ 1,276 1,697 4.9 33.0
起亜 980 965 2.8 △ 1.5
合計(その他含む) 30,706 34,410 100.0 12.1

出所:DRPCIVのデータを基にジェトロ作成

自動車登録台数に占める中古車割合が縮小

2022年の中古車登録台数は32万5,061台。前年比17.9%減だった(図2参照)。一方で、既に見たとおり、新車登録台数は増加していた。結果、新車・中古車登録台数合計に占める中古車の割合は71.5%に縮小した(前年は76.6%)。

なお、ルーマニアでは登録される中古車は、車齢が高い。2022年時点で、3台に1台が車齢15年以上だった(図3参照)。

図2:新車・中古車登録台数の推移
2019年新車登録台数159,696台、中古車登録台数444,601台。2020年新車登録台数125,006台、中古車登録台数381,495台。2021年新車登録台数121,208台、中古車登録台数395,759台。2022年新車登録台数129,328台、中古車登録台数325,061台。

注1:新車に関して、2019年と2020年はAPIA、2021年と2022年はDRPCIVのテータに基づく(表2の注2も参照)。
注2:中古車は、DRPCIVのデータに依拠。
出所:APIAとDRPCIVのデータを基にジェトロ作成

図3:2022年に登録された中古車の生産年(車齢)
2007年以前(車齢15年以上)33.4%、2008~2016年(車齢6~14年)52.6%、2017~2022年(車齢5年以下)14.0%。

出所:DRPCIVのデータを基にジェトロ作成

中古車登録台数を車齢別・県別にみると、首都ブカレストでは車齢5年以下の新しい年式の中古車が多い。対照的に、地方ほど車齢の高い中古車が多い傾向がみられる(図4参照)。

図4:2022年に登録された中古車の車齢別台数(県別)
首都ブカレストでは車齢の若い中古車が多く、地方ほど車齢の高い中古車が多い。

出所:DRPCIVのデータを基にジェトロ作成

環境対応車代替を促す「ラブラ・プログラム」を強化

前述のとおり、ルーマニアでは依然として、車齢の高い中古車の販売割合が高い。環境規制対応した新車への代替を進めるため、政府は「ラブラ・プログラム(Programul Rabla)」の強化に取り組んでいる。このプログラムは新車購入時の補助金制度で、2016年6月から施行。「ラブラ・クラシック」「ラブラ・プラス」の2本立てになっていて、併用可能だ。この取り組みは、中古車登録が減少ながら新車が増加した理由の1つと理解して良いだろう。 ラブラ・クラシックの補助は、二酸化炭素(CO2)排出量が少ない新車を購入し、中古を廃車にする際に申請できる。この新車の排出量は、国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)基準で155 g CO2 / km以下でなければならない。また中古車は、ルーマニア国内で最初に登録されてから6年以上経過している必要がある。条件を満たして1台廃車にする場合、基本的には7,000レイ(約22万4,000円、1レウ=約32円、レイは通貨単位レウの複数形)の補助を受けることができる。2台廃車にする場合1万レイになる。これら補助額は、2022年からそれぞれ1,000レイ増額された結果だ。

さらに上積みもある。(1)WLTP基準で120 g CO2 / km以下の新車の場合1,500レイ、(2)LPガス(LPG)または圧縮天然ガス(CNG)エンジンを搭載した新車の場合1,500レイ、(3)ハイブリッドシステムを搭載した新車の場合3,000レイ、(4)車齢15年以上かつ欧州排ガス規制ユーロ3以下の中古車を廃車にする場合1,500レイが、それぞれ追加で補助される。

ラブラ・プラスは、さらに環境性能の高い自動車を購入する際の補助措置だ。(1) BEVまたは燃料電池車(FCEV)の新車を購入して、中古車を1台廃棄する場合5万1,000レイ、(2) WLTP基準で80 g CO2 / km以下のプラグインハイブリッド(PHEV)新車を購入して、中古1台廃車の場合2万6,000レイ、というのが基本線になる。ただし (1)は、付加価値税(VAT)込みで7万5,000ユーロ未満のBEVを購入する場合に限る。

ラブラ・プラスでも、やはり上積みがある。前段(1)(2)のいずれかで、(3)中古車2台を一度に廃車する場合は3,000レイ、(4)車齢15年以上かつ欧州排ガス規制ユーロ3以下の中古車を廃車にする場合1,500レイが、それぞれ追加で補助される。


注:
ダチアのBEV「スプリング」は、外国産(中国で製造)。
執筆者紹介
ジェトロ・ブカレスト事務所
西澤 成世(にしざわ しげよ)
2003年、ジェトロ入構。海外投資課、輸出促進課、ジェトロ・広州事務所、麗水博覧会チーム、環境・エネルギー課、イノベーション促進課、ジェトロ福井、ジェトロ・ラゴス事務所などを経て、2021年3月から現職。