日本の雑貨を売るための秘訣と売れ筋を探る(メキシコ)
100円ショップのドッコイ・ジャパンに聞く

2023年6月2日

メキシコで日本の日用雑貨や和食材を販売するドッコイ・ジャパン(Dokkoi Japan)は、日本の100円ショップ企業「ワッツ(Watts)」の製品を中心に、輸入販売しているメキシコ企業だ。国内10カ所の販売店に加えて、同社ウェブサイト上でオンラインショップも展開している。同社の取り扱い商品数は店舗で4,000点、カタログでは6,000点と多岐にわたる。ジェトロは、ドッコイ・ジャパンのプランニングマネージャーであるジュン・ハヤセ氏に、メキシコで日本の商品を販売する秘訣(ひけつ)や、近年のメキシコ人の消費動向など、メキシコでB to Cビジネスを展開する日本企業の参考になる話を聞いた。(取材日:2023年2月20日)


プランニングマネージャーのジュン・ハヤセ氏(ドッコイ・ジャパン提供)
質問:
事業概要について。
答え:
日本の100円ショップ企業のワッツから100円雑貨商品を輸入し、実店舗とEC(電子商取引)で販売しており、数年前から、日本食品や酒類の販売も始めた。また新型コロナ禍では、メキシコで日本食材スーパーを展開するMikasaグループと提携し、日本の雑貨、食品、レストランなど、「日本」をコンセプトにして、日本のモノを取り扱うジャパンタウン(Japan Town)という複合施設を設立した。ジャパンタウン内にドッコイ・ジャパンの店舗を出店し、他の出店企業とビルの賃貸料を折半している。

ジャパンタウン内にあるドッコイ・ジャパン(ジェトロ撮影)
質問:
ターゲットとなる顧客は。
答え:
質が高いモノに対して、日本で売られている価格の2倍になっても、お金を払う高所得者層や、既に日本文化を知っている人がメインのターゲット。客単価は約20ドル前後で、来店してくれるお客様の90%はメキシコ人。お客様は主に食品を求めて来店することが多い。そのため、食品を買いに来たついでに、日用雑貨を手に取ってもらうように工夫している。
質問:
競合と差別化している点。
答え:
競合はメイソウ(MINISO名創優品、注)や、商品単価の安い大手小売店。ただ、メイソウの進出によりメキシコで日本の雑貨が認知されるようになり、プラスの影響を受けたことも事実。メイソウはファッション性が高く、ビューティーケア商品もあり、プレゼント用で買うような商品も置いている。一方で、ドッコイ・ジャパンは品ぞろえが豊富な点と、使いやすい便利な雑貨が置いてある点で差別化を図っている。

様々な日本の百均グッズが陳列されている(ジェトロ撮影)
質問:
近年、売り上げが伸びている商品はあるか。
答え:
サイズの小さい便利グッズが人気。メキシコではカップルや一人暮らしの世帯が増え、小さくて便利な日用雑貨の需要が拡大しており、よく売れている。また、キッチングッズの需要も伸びている。新型コロナ禍以降、家庭で料理をする機会が増えたことに加え、日本食が浸透し、レストランで食べるような日本食を家で作りたいお客様が、土鍋や日本の食器などのキッチングッズを買うようになった。

需要が伸びている日本の食器や土鍋(ジェトロ撮影)
質問:
日本の日用雑貨を売る上で工夫していることは。
答え:
日本の便利グッズは機能性が高いが、メキシコ人には使い方が分からないものもある。お客様の手に取ってもらうために、商品の使い方を様々な方法で説明している。説明動画を流したタブレット端末を店舗に置く、スタッフが口頭で製品の使い方を説明する、SNSで使い方の動画を発信して説明したりする、などの工夫をしている。パッケージの写真や絵を見ただけで使い方が分かるような製品は、メキシコ人にとっても使い方が理解しやすく、我々も売りやすい。

SNSを利用して日本の便利グッズの使い方を説明する(同社SNSより)
質問:
食品や酒類で人気な商品は。
答え:
最近はKポップや韓国ドラマなど韓国文化の影響から、韓国系の食材や酒類の需要が伸びている。食材では、キムチラーメンが人気。メキシコ人は基本的に辛い味付けのものが好きで、キムチラーメンはメキシコ人の嗜好(しこう)にマッチしている。酒類では、チャミスルが一番の人気商品。韓国ドラマなどの影響で「ドラマに出てくる緑色のボトルの飲み物を飲んでみたい」という需要が伸び、店頭に置いてある酒類の中で、最も売れている。

酒類で最も人気の高いチャミスル(ジェトロ撮影)
質問:
日本企業ブランドの強みは。
答え:
商品のクオリティと便利さだと考える。しかし、メキシコでは日本企業の製品は高価で、中国企業の製品は安いというイメージが付いている。ただ、メキシコにも日本企業と中国企業の製品の質の違いが分かる人はいるので、その質の違いを理解できる人にアプローチしていきたい。
質問:
メキシコで輸入販売する際の非関税障壁は。
答え:
保健省が定めた量を超過する塩分、脂肪、糖分などが含まれる商品には、「EXCESO」と記された警告表示のラベルを貼る必要がある(2020年5月7日付地域・分析レポート参照)。その場合、税関で特別許可を取得し、商品を保管している倉庫でシールを貼り、税関に再申請する作業が発生する。もしくは包装の製造過程で包装上に当該のラベルが印刷されるようにする必要があるが、これにはコストがかかる。現状として、ほぼ全ての加工品にこのシールがついており、消費者も同シールが貼られていることに抵抗がない。

「EXCESO」の警告表示ラベルが付いた日本のお菓子(ジェトロ撮影)

注:
全世界中で3,600店舗以上を展開する中国資本の雑貨店大手。デザイン性の高いアイデアグッズをはじめ、デイリーグッズ、ヘルス&ビューティー、アクセサリー、食品など様々な商品を低価格で販売している。
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課中南米班
小西 健友(こにし けんゆう)
2022年、ジェトロ入構。米州課中南米班でメキシコ、ブラジルなどの政治・経済の調査を担当。