新車と二輪車の販売が好調、電気自動車の開発も進む(ケニア)

2022年10月4日

2021年の自動車新規登録台数は9万479台だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年は前年比21.5%減と大幅に落ち込んでいたが、そこからの反動もあり伸び率は9.3%だった(図1参照)。部門別にみると、特に好調だったのは貨物自動車やトラック、トレーラーといった商用車で、登録台数は前年比23.1%増の1万258台だった(図2参照)。

図1:新規登録台数の推移
2021年の自動車新規登録台数は9万479台。前年のコロナ禍からの反動もあり伸び率は9.3%増となった。

出所:ケニア自動車工業会(KMI)「Vehicle Sales for year 2013~2019」、Leading Economic Indicator January 2020からジェトロ作成

図2:新規登録台数の内訳
2021年、特に好調だったのは商用車で、登録台数は前年比23.1%増となる1万258台だった。

出所:ケニア国家統計局「Economic Survey 2020」、「Leading Economic Indicators」からジェトロ作成

新車の販売台数は、新規登録台数の15.7%にあたる1万4,250台で、伸び率は29.8%と好調だった。また、中古車販売の見込み台数は、7万6,229台で登録台数の84.3%を占める。伸び率は6.2%で、新車の伸び率と比べると低いものであった(図3参照)。新車の販売実績をクラス別にみると、44.7%を占めたのがトラックで、続くシングルキャブは21.3%だった(図4参照)。それぞれ、販売実績数のうち現地生産車の割合は86.7%、85.2%だった。また、トップシェアは38.4%のいすゞ自動車だった。

図3:新車と中古車の販売・登録台数の推移
新車の販売台数は、新規登録台数の13.5%にあたる1万4,250台で、伸び率は29.8%と好調だった。中古車販売については、7万6,229台で登録台数の84.3%を占め、伸び率は6.2%だった。

出所:ケニア自動車工業会(KMI)「Vehicle Sales for year 2013~2019」、Leading Economic Indicator January 2020からジェトロ作成

図4:2021年の新車販売の内訳
販売実績をクラス別にみると、44.7%を占めたのがトラックで、続くシングルキャブは21.3%だった。それぞれ現地生産車の割合は86.7%、85.2%だった。

注:セミノックダウンはステーションワゴンの1台。
出所:ケニア自動車工業会(KMI)「Vehicle Sales for year 2013~2019」、Leading Economic Indicator January 2020からジェトロ作成

2019年にはケニア産業・貿易・企業開発省が、国内生産の底上げを目的とした中古車規制を含む国家自動車政策(NAP)案を発表した。環境規制や、部品の現地調達に関する規制は部分的に改正されており、強化の傾向にあるものの、新たな自動車政策については施行に至っていない。輸入車の年式による規制は、現行の8年未満が続いている状況だ。ケニアでは、いすゞ自動車やトヨタ自動車がCKD(コンプリートノックダウン)生産を行っている。

バイクの販売台数は過去最高

一方、二輪車の新規登録台数(販売台数)は2017年以降、毎年、過去最高を記録している。特に2021年は好調で、前年比30.6%増となる28万5,203台だった(図5参照)。就労人口の83.2%が非正規雇用というケニアでは、多くの若者が正規雇用につくことができない。個人事業主としてバイクを購入し、配送やタクシー運転手として生計を立てるケースが増加している。バイクを商用利用する場合、ドライバーは通常、ウーバー(Uber)やボルト(Bolt)といったライドシェアアプリケーションを使用する。アプリケーションには就労履歴が残り、融資に必要な与信情報となり得る。バイクドライバーに金融サービスを提供するアサーク(Asaak)は「バイクは資産(アセット)であり、(これまでターゲットにしにくかったインフォーマル層に対しても)ファイナンスを提供しやすい」と解説している(2022年6月24日、ジェトロ取材)。

図5:バイク販売台数の推移
二輪車の販売台数は2017年以降毎年過去最高を記録している。特に2021年は好調で、前年比30.6%増となる28万5,203台だった。

出所:ジェトロ作成

電気バイクの開発が進む

ケニアは非産油国で、ガソリンを輸入に頼っている。ケニアでは特に、二輪車の約9割が商用利用されており、特に個人ドライバーにとっては燃油価格の上昇が収入減に直結する。脱炭素化に向けた投資家の関心に加え、こうしたドライバーからの需要の高まりを受けて、複数のスタートアップが電気自動車(EV)の開発に取り組んでいる。電気バイクを開発・販売するアンパサンド(Ampathand)は、ルワンダでの実証実験と商用化をステップに、ケニアでも試運転を開始した。エンジンの交換を行うスワップステーションを設置し、メンテナンスも併せて行うことで「商用車であれば、ガソリン車よりも経済合理性が高い」という(2022年5月13日、ジェトロ取材)。ケニアで電気バイクの開発に取り組むエーアールシーライド(ARC Ride)には2021年11月、武蔵精密工業がギアボックス一体型モーターユニットを提供した。電気バイクの普及には基礎インフラが不可欠で、整備に時間がかかるとの指摘もあるなか、「リープフロッグ」の代表格とも評価されるケニア市場でバイクの電気化が実現されるのか、注目したい。


すでにルワンダで運用を開始しているアンパサンド(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所 調査・事業担当ディレクター
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。2017年通関士資格取得。