小売り大手が進めるプラスチック包装削減(ドイツ)

2022年9月27日

ドイツでは、商品の容器や包装材のごみが年々増加している。それら廃棄量を減らし、リサイクルを促進するのが課題だ。そのため、容器包装廃棄物法(Verpackungsgesetz)(ドイツ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが2019年1月から施行されている(2022年9月6日付地域・分析レポート参照)。一方、ドイツの小売業では、同法が定める義務の履行以外にも、プラスチック製の容器や包装材の削減・リサイクルに自主的に取り組んでいる。

本稿では、ドイツのスーパーマーケットの代表的な「グッド・プラクティス」を紹介する。

再生プラスチックの使用や廃棄物削減に自主的な取り組み

ドイツの小売業界では、食品売上高上位30社の総売上高の約80%を上位4社が占めている(2021年時点)。その4社とは、(1)エデカ(Edeka)とその傘下のネット(Netto)、(2)レーベ(Rewe)と傘下のペニー(Penny)、(3)シュバルツ・グループ〔運営ブランド:リドル(Lidl)、カウフラント(Kaufland)〕、(4)アルディ(Aldi)だ(表参照)。

表:小売業での企業・ブランド別食品売上高とシェア
(上位30社、2021年)(単位:100万ユーロ、%)(-は値なし)
企業・ブランド名 業態 売上高 シェア
エデカ スーパーマーケット 64,833 27.3
階層レベル2の項目ネット ディスカウントスーパー
レーベ スーパーマーケット 49,515 20.8
階層レベル2の項目ペニー ディスカウントスーパー
シュバルツ・グループ 45,700 19.2
階層レベル2の項目リドル ディスカウントスーパー
階層レベル2の項目カウフラント スーパーマーケット
アルディ ディスカウントスーパー 30,405 12.8
dm ドラッグストア 8,541 3.6
ロスマン ドラッグストア 7,330 3.1
その他 31,264 13.2
上位30社合計 237,588 100.0

注:シェアを計上する上での分母は、企業上位30社の売上高を合計した値。
出所:「ニールセンIQ・トレードダイメンションズ」からジェトロ作成

小売り大手はそれぞれ、容器包装削減や環境に配慮して包装に取り組んでいる。ここでは、先に述べた大手スーパーマーケット・ディスカウントスーパー4社の代表的な取り組みを見ていく(ただしここから先の記述では、必ずしも食品に限らず、生活商材の容器・包装全般を扱う)。

エデカ

ドイツの小売業界の最大手はエデカだ。

エデカは、自社ブランドの洗剤シリーズ「レスペクト」を販売している。このブランドの商品は、ふたを除き全て100%再生プラスチック製のパウチやボトルに入っている。他の特徴としては、環境に配慮した成分や生分解性の高い植物由来の界面活性剤を使用していることが挙げられる。そのため、ドイツのブルーエンジェルおよびEUのエコ・ラベルを取得している(注1)。

2022年の半ばまでには、1,400品目以上の多様な商品を展開している低価格帯の自社ブランド「グート・ウント・グンスティッヒ」でも、洗剤のペットボットルに再生プラスチックを100%利用するとしている。

レーベ

業界2位がレーベ。同社は、自社ブランド品について、2030年までに100%環境配慮包装にする目標を掲げている。

同社は、多くの自社ブランドを展開している。その中には、再生プラスチック100%のボトルウォーターのブランドもある。このブランドを含め、グループ全体で自社ブランドのパッケージを環境に配慮したものにすることで、毎年9,000トンのプラスチックを節約しているという。

シュバルツ・グループ

業界3位のシュバルツ・グループは、ディスカウントスーパー「リドル」とスーパーマーケット「カウフラント」を擁する。これらの店舗では、2021年6月以降、自社ブランドの使い捨てデポジット用ペットボットルには、100%再生プラスチックを使用している(ふたとラベルを除く)。

また、同年11月には、2025年までの目標を発表。同年までに自社ブランド製品の包装を100%リサイクル可能にする上、重量を20%削減。再生プラスチックの利用目標を平均で25%に引き上げるとした。

アルディ

業界4位のアルディは、ディスカウントスーパーを展開する。アルディはリドルの主な競争相手だ。同社は、2018年に包装についての方針を打ち出していた。2022年末までに自社ブランドの包装を100%リサイクル可能にし、2025年末までに包装重量を30%削減することを目指すものだった。

同社は近年、この方針を拡大。2025年末までに、自社ブランドのプラスチック包装について平均30%以上、再生プラスチックを含めることにした。

青果物要に再利用袋を導入

ドイツのスーパーマーケットの青果コーナーでは、多くの野菜や果物は個包装されていない。量り売りで売られるのが通常だ。購入の際は、青果物をビニール袋に入れ、レジで店員に計量してもらう。このビニール袋は使い捨てだ。すなわち、ごみになり、環境に負担をかけることになる。

このため、ドイツのスーパーマーケットやディスカウントスーパーでは2019年、再利用できるネット状の袋を代用品として導入した(有料で販売)。この再利用袋は洗濯や繰り返しの使用も可能。袋の重さは、レジで差し引いてもらえる。なお、青果物は袋に入れず、レジでそのまま計量し精算することも可能だ。


レーベの青果コーナー:再利用袋(茶色の紙包装に封入)とビニール袋の様子(ジェトロ撮影)

リサイクル領域にも進出

リサイクル業者との連携事例も進んでいる。例えば、アルディとシュバルツ・グループは、リサイクル業者との関係強化や買収を推進している。

アルディは2021年9月、リサイクル業者のインテルセロー・プラスとの戦略的提携を2022年1月から開始すると発表した。容器包装廃棄物法では、リサイクル業者との契約が義務化されており、回収のための費用もリサイクル業者へ支払う必要がある。この契約に関して、アルディは同月からインテルセロー・プラスと契約したというかたちだ。同契約に基づきアルディはインテルセロー・プラスに、自社ブランドの包装回収について対価を支払う。それだけではなく今後、共に包装デザインや包装のイノベーションの協力を計画する。このほかにも、包装に関してさらなる協力も考えられるとした。包装分野はサステナビリティ戦略の重要な部分でもあるためだ。

また、シュバルツ・グループは子会社の「プリゼロ」を通じて、リサイクル業者スエズを買収した。この買収は、スエズが欧州複数都市に擁する子会社の買収に発展した(注2)。同グループはこのほか、リサイクルビジネスも徐々に拡大している。2021年12月には、スペイン建設大手のフェロビアルから、スペインとポルトガルの廃棄物処理・リサイクル部門を買収した。

プラスチック削減や再生材料の使用が求められる中、リサイクル業者との積極的な連携も重要になりそうだ。


注1:
ドイツの「ブルーエンジェル」やEUの「エコ・ラベル」は、製品ライフサイクルを評価する認証。表示することで、同種製品より環境負担が少ないことを訴えることができる。
注2:
シュバルツ・グループの子会社プリゼロは2020年12月、スエズのスウェーデン現地法人を買収。さらに2021年6月、オランダ、ルクセンブルク、ポーランド、ドイツの現地法人を買収した。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
作山 直樹(さくやま なおき)
2011年、ジェトロ入構。国内事務所運営課、ジェトロ金沢、ジェトロ・ワルシャワ事務所、企画課、新産業開発課を経て現職。