進出日系企業数が初めて減少(インド)
業種・立地などには大きな変動なし

2022年6月28日

在インド日本大使館は2022年6月、ジェトロと共同で作成した「インド進出日系企業リスト(2021年10月時点)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.8MB) 」を発表した。2021年時点のインド進出日系企業社数は、1,439社(2020年は1,455社)。2006年の調査開始以降、企業数の減少は初めて。なお拠点数は、4,790カ所(2020年4,948カ所)。3年連続で前年比減になった。

拠点数は3年連続減

2021年は、個人出資のサービス業などをはじめとする新規進出や既進出企業による新たな合弁企業の設立などが見られた。しかし、現地拠点の閉鎖や日本法人からの出資引き揚げなどによって撤退した企業がそれを上回った。その結果、インド進出日系企業社数は16社減少した。

また、拠点数についても、3年連続で減少する結果になった。これは日系企業の撤退に加えて、現地拠点の運営合理化などを目的とした統廃合が進んだことなどが一因とみられる(図1参照)。

図:インド進出日系企業数の推移

注1:2006年は1月、2007年は2月、その他は各年10月時点。
注2:2013年、2014年企業数は2015年調査時の修正値。
出所:在インド日本大使館、ジェトロ「インド進出日系企業リスト(2021年10月時点)」などを基にジェトロ作成

進出先の州別傾向に大きな変化は見られず

州別の進出日系企業社数をみると、ハリヤナ州が404社(2020年412社)で、最多だった。同州のグルグラムは空港や首都ニューデリーへのアクセスが良好で、日系企業が多く集積する。次いで、金融都市ムンバイが州都のマハーラーシュトラ州が238社(同250社)。IT産業の中心地ベンガルールを州都とするカルナータカ州が226社(同220社)、自動車産業などが盛んなチェンナイを州都とするタミル・ナドゥ州が191社(同200社)、首都ニューデリーのあるデリー準州が150社(同145社)と続いた。

拠点数ベースでは、マハーラーシュトラ州が787カ所(2020年811カ所)、ハリヤナ州が600カ所(同626カ所)、タミル・ナドゥ州が565カ所(同589カ所)、カルナータカ州512カ所(同519カ所)、デリー準州が311カ所(同311カ所)だった。

企業・拠点数には、地域ごとに増減がある。しかし、日系企業の進出先は依然として既述5州に集中している。企業数では全体の84.0%、拠点数でも57.9%を占める結果になった(表1参照)。

業種別には引き続き製造業が最多

進出企業社数の割合を業種別にみると、「製造業」が全体の48.7%と半数近くを占めた。内訳は、輸送用機械器具が最多の10.4%。これに、電気機械器具の5.4%、化学工業5.4%、金属製品4.3%と続いた。製造業に次ぐ業種では、商社を中心とする「卸売業」が13.3%、「情報通信業」が5.8%、「運輸業・郵便業」が4.8%という結果だった。

増減数に着目すると、「宿泊業・飲食サービス業」が7社減、「輸送用機械器具製造業」と「化学工業製造業」がそれぞれ6社減になった。一方で、「卸売業」「金融業・保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」は各4社増だった。

引き続き、自動車関連業界を中心に製造業が多くを占める。その中で、ものづくり分野以外での新たな進出企業が複数社見られる。こうしたことから、進出分野の多様化が少しずつ進んでいることが確認できる(表2参照)。

執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所
髙際 晃平(たかぎわ こうへい)
2014年、株式会社日本政策金融公庫入庫。2021年4月からジェトロ出向。ビジネス展開・人材支援部ビジネス展開支援課を経て、同年10月からジェトロ・ニューデリー事務所勤務。