対内直接投資は減少の一方、対外は増加、日英間では大幅増

2022年11月18日

2021年、英国の対内直接投資は158億7,700万ポンド(約2兆6,355億8,200万円、1ポンド=約166円)。前年比34.6%減と大きく減少した。一方で、対外直接投資は741億7,300万ポンド。対内とは対照的に、前年の引き揚げ超過から大きく伸びたかたちだ。

日本からの対英直接投資、英国からの対日直接投資はともに大幅に増加した。

対内M&Aが4倍増

英国国家統計局(ONS)の2022年6月30日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)額は158億7,700万ポンド。2020年の242億6,200 万ポンドから34.6%減少した。その結果、対内直接投資残高は2021年末時点で、2兆2,552億ポンドになった(注1)。

またONS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、100万ポンドを超えるクロスボーダーM&A(国境を越える企業の合併・買収)についても発表している。2021年に実行された英国企業に対する当該買収は、789件あった。当該買収金額は、766億8,100万ポンドに及ぶ。ちなみに、2020年は492件、191億6,000万ポンドだった。件数で前年比60.4%増、金額では4倍増と、いずれも極めて大幅に増加したことになる。

国・地域別に金額が最も大きかったのが、米州の449億7,500万 ポンド(384件)だ。このうち米国が325億3,300万ポンド(313件)だった。米国企業による2021年の投資案件としては、9月のアイ・スクエアード・キャピタル・アドバイザーズによるGTTコミュニケーションズのインフラ部門の買収、10月のアルクリ・グローバル・アクイジションによるバビロン・ホールディングス(デジタルヘルスケアサービス)との合併があった(表1参照)。米州に続くのが欧州で、246億600万ポンド(326件)。このうち、EUが157億4,200万ポンド(204件)になった。アジアは64億800万ポンド(47件)だった。

表1:英国の主な対内直接投資案件(2021年)

M&A以外
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
不動産投資・運用 オックスフォード・プロパティーズ・グループ カナダ 2021年7月 約10億ポンド
(2社の出資額の合計)
同業の英国ロジスティクス・キャピタル・パートナーズとともに、ウェスト・ミッドランズに鉄道貨物インターチェンジを備えた英国最大の物流ハブを開発予定と発表。用地の取得・開発に向け合弁会社を設立済みで、2022年上半期に工事開始予定とした。
クリーンエネルギー製造 フルクラム・バイオエナジー 米国 2021年2月 約6億ポンド
(出資額の合計)
フルクラム・バイオエナジー、英エッサール・オイルおよびその子会社スタンローターミナルの3社は、持続可能な航空燃料(SAF)のリファイナリー施設の開発に合意したと発表。リサイクルできない家庭ごみを燃料に転換する新施設を設立予定。フルクラム・バイオエナジーはイングランド北西部のスタンローの製造拠点内に初の海外工場を建設・運営予定。
M&A
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
半導体 ダイアログ・セミコンダクター ルネサス エレクトロニクス 日本 2021年8月 約48億ユーロ ダイアログの買収完了を発表。組み込みソリューションプロバイダーとしてのルネサスのポジション強化を図る。
デジタルヘルスケアサービス バビロン・ホールディングス アルクリ・グローバル・アクイジション 米国 2021年10月 42億ドル アルクリ・グローバル・アクイジションとの合併の完了と、公開会社としてニューヨーク証券取引所で取引を開始する旨を発表した。
通信 GTTコミュニケーションズ アイ・スクエアード・キャピタル・アドバイザーズ 米国 2021年9月 21億5,000万ドル クラウドネットワークを提供するGTTコミュニケーションズは同社のインフラ部門をアイ・スクエアード・キャピタル・アドバイザーズへ売却したと発表。これによりアイ・スクエアード・キャピタル・アドバイザーズは、ファイバーネットワークとデータセンターを獲得。

出所:各社発表および報道などからジェトロ作成

英国からの直接投資は全般に好調

英国の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、2021年に741億7,300万ポンドだった。2020年の409億1,200万ポンドの引き揚げ超過から、プラスに転じた。その結果、対外直接投資残高は2021年末時点で、1兆9,070億ポンドになった(注)。

クロスボーダーM&A案件も好調だった。英国企業による100万ポンド超の買収は2021年中に311件、買収金額458億9,000万ポンドだった。2020年は209件、154億8,400万ポンドだったので、やはり件数、金額ともに増加したことになる。

M&A案件を国・地域別にみると、金額ベースで最大だったのはやはり米州。367億5,600万ポンド(136件)を占めた。このうち米国が361億7,200万ポンド(123件)だった。具体的事例としては7月、アストラゼネカによる米国のバイオ製薬のアレクシオン・ファーマシューティカルズ買収などがある(表2参照)。次いで欧州の25億2,900万ポンド(131件)。このうちEUは 23億8,200万ポンド(121件)だった。

表2:英国の主な対外直接投資案件(2021年~2022年6月)

M&A以外
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
製造 ガルフデベロップメントインターナショナル サウジアラビア 2021年6月 10億ドル サウジアラビアの都市開発プロジェクトであるネオムに世界最大級のモジュール組立工場を建設する計画を発表。約2,200人を雇用し、2022年後半に稼働する予定。
製造 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ イタリア 2021年9月、2022年6月 5億ユーロ 2021年9月、イタリアのトリエステにイノベーション・ハブを開設すると発表。リスクを低減した製品ラインの研究、開発、生産に特化する。翌年6月には建設の第1段階の50%完了を記念する式典を開催し、約2,700人の雇用を創出すると発表。
製造 ディアジオ メキシコ 2021年9月 5億ドル メキシコのハリスコ州に、テキーラの製造施設を新設する計画を発表。2021年に建設を開始し、1,000人以上を雇用する予定。
M&A
買収企業名 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
業種 企業名 国籍
アストラゼネカ 医薬品 アレクシオン・ファーマシューティカルズ 米国 2021年7月 133 億ドル アストラゼネカは、アレクシオン・ファーマシューティカルズの買収を完了。希少疾患向け医薬品業界に参入すると発表。
CNHインダストリアル 精密機械 レーベン・インダストリーズ 米国 2021年11月 非公表 CNHインダストリアルは精密農業技術のレーベン・インダストリーズの買収完了を発表。デジタル戦略を加速させる。

出所:各社発表および報道などからジェトロ作成

日本の対英直接投資が復調

日本銀行の「業種別・地域別直接投資」によると、2021年の日本から英国への直接投資(ネット、フロー)は2兆583億円。前年の2兆3,273億円の引き揚げ超過から、大幅なプラスに転じた。

業種別には、非製造業が1兆4,518億円。うち、通信が7,595億円で最大だった。製造業は6,064億円、うち電気機械器具が6,386億円で、通信業に続いた。

当年の日本企業の主な投資案件としては、ルネサスエレクトロニクスの買収事例がある(表1参照)。同社は8月、半導体大手ダイアログ・セミコンダクターの買収完了を発表。組み込みソリューションプロバイダーとしてのポジションを強化した。また、日産自動車は7月、サプライヤーや地元自治体などと共同で総額10億ポンドを投資。同社サンダーランド工場周辺に電気自動車(EV)生産のエコシステムを構築する計画を発表。ゆくゆくは新世代クロスオーバーEVを生産する予定だ(注2)。

また2021年の英国からの対内直接投資受入額も、前年の273億円から857億円に大幅に増加した。非製造業は707億円、製造業は150億円だった。投資額が最大だったのは通信業で571億円。次いで金融・保険業が180億円になった。一方、不動産業は187億円の引き揚げ超過だった。

主な事例としては、パシフィコ・エナジーによる合弁会社設立案件(2021年11月)がある。合弁相手先は、英国の再生可能エネルギー(再エネ)大手、SSEリニューアブルズ。この合弁事業を通じ、地域社会に利益をもたらし、長期安定かつ大規模な電力源としての再エネ開発に注力する。また、エネルギー大手bpの子会社が丸紅との間でパートナーシップ契約を締結した(2022年3月)。洋上風力をはじめとして、脱炭素化を目的とした案件を共同開発していく。これに関連して、bpは既存日本法人に洋上風力開発チームを設立する。


注1:
2021年の直接投資について、ONSは現時点で総額だけを発表。内訳は、2022年12月に発表予定。
注2:
日産自動車の新世代クロスオーバーEV生産計画に関連して、中国のエンビジョンAESCも超大型バッテリー工場を建設する予定。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
島村 英莉(しまむら えり)
2021年8月、ジェトロ・ロンドン事務所入所。

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