経済成長を背景に2021年の新車販売に堅調な伸び(エジプト)
日本と中国、両ブランドの乗用車が急増

2022年3月7日

エジプトの自動車市場情報委員会(AMIC)は2月1日、報告を公表。同国の2021年の新車販売台数は、前年比25.5%増の29万846台だった。2020年は、23万1,238台で前年比26.8%増。2年連続の大幅増だったことになる。特に、日本ブランドの乗用車の新車販売は55.9%増加した。

購入が拡大している背景に、人口増加や経済成長がある。さらに考えられるのは、大気汚染対策や二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みだ。製造から20年以上経った車の買い替えや天然ガス車普及のため、エジプト政府は補助金を出している。

政府は、新型コロナウイルス禍でも緩やかな行動制限に留めてきた。さらに、公共事業に積極的に投資するなど、経済活動を優先していた。そのこともあり、IMFによると、2020年のGDP成長率は3.6%、2021年は3.3%とプラス成長が維持された。1人当たりGDPは3,850ドルまで上昇。その結果、自動車車の購入が可能な層が広がった。

乗用車とトラックの伸びが顕著

車種別の新車販売では、乗用車が前年比28.2%増で約21万5,072台だった(図1参照)。このうち、排気量1.5~1.6リットルが約10万台で半数を占める。トラックは同35.0%増の4万9,957台で大幅に増加した。特に小型トラック(ピックアップトラック)が3万4,505台で大半を占め、前年から約1万台増加した。

バスは前年比2.3%減で、2万5,817台だった。2020年に公共調達が多く、その反動を受けたのが減少の一因だ。一方、当地では10席程度のバン(小型バス)が市民の足として用いられている。そのため、当年に販売された車種としては、小型バスが大半を占めた。

それ以前の2019年には、新車販売は減少していた。市民がSNSなどで自動車の値下げを訴え、自動車の不買運動まで発展したためだ。しかし2020年以降は、経済成長などを背景に新車販売は増加に転じたことになる(前述のとおり)。

図1:エジプト新車販売台数(台)
2019年から2021年のエジプトにおける現地での組立車および輸入の完成車の新車販売台数は、共に増加傾向。2021年は組立車が17万5,149台、完成車は11万5,697台。

出所:AMIC

現地組み立て車、輸入完成車ともに増加

2021年の新車販売に占める当地組み立て車台数は、前年比22.5%増の11万5,697台。外国からの輸入完成車は28%増の17万5,149台だった(図2参照)。輸入完成車の方が販売台数で勝り、増加率が高い。ただし、当地生産車も、2019年、2020年と連続して、前年比販売台数を伸ばしてきた。

2021年の車種別では、乗用車は、当地組み立て車が5万7,321台、輸入完成車が15万7,751台だった。乗用車については輸入車が大半を占めることが分かる。バスは、現地組み立て車が1万4,896台、輸入完成車1万921台。当地生産組み立て車の方が多いものの、その販売は前年比6.4%減になった。トラックは、当地組み立て車が4万3,480台、輸入完成車6,477台だった。この車種では、当地生産が圧倒していることがわかる(図3参照)。

日系企業には、当地で組み立て製造する企業がある一方で、EU、英国、トルコそれぞれとエジプトとの関税協定(注)を活用して自社ブランドの完成車を輸入するところもある。日系企業の販売は、輸入車と組み立て車のいずれも伸びている。

図2:エジプト組み立て車・完成車販売の推移(台)
2019年から2021年のエジプトにおける現地での組立車および輸入の完成車の新車販売台数は、共に増加傾向。2021年は組立車が17万5,149台、完成車は11万5,697台。

出所:AMIC

図3:2021年エジプト車種別の組み立て車・完成車販売(台)
2021年のエジプトの新車販売において、乗用車では現地組立車より輸入完成車の方が販売が多い。バスとトラックにおいては組立車の販売の方が多い。

出所:AMIC

日本・中国ブランドの乗用車が躍進

2021年の乗用車販売台数(新車、現地組み立て車と輸入完成車の合計)は、前年比27.7%増だった。国・ブランド別にみると、日本車が前年比55.9%増、中国が同67.9%増と急増した。韓国も同37.6%増で全体の伸びに大きく寄与した。一方で、欧州は10.4%減、米国も8.3%減と前年から減少だった。

日本車は約6万台。2021年の新車販売数でシェアが最大になった(図4参照)。中国はシェア2位で、約5万台だった。2019年と比べ3倍以上の伸びを記録している。2020年にシェア最大だった欧州はその余波を受け、中国にもわずかながら水をあけられた。

図4:国・地域ブランド別の乗用車新車販売(台)
2021年の新車販売において、日本ブランドが最大で約6万台となった。次いで、中国が約5万台、欧州が約5万台、韓国が約4万台、米国が約1万台の順となった。

出所:AMIC

シボレーが最大、日産とトヨタが続く

AMICによると、2021年のブランド別の新車販売(乗用車とバス、トラックを含む)では、シボレーがシェア17.6%で最大だ(図5参照)。シボレーは、当地に限ると乗用車の取り扱いは少ない。むしろ、ピックアップトラックの組み立て現地製造などを行う。2020年と比べると、各メーカーの販売台数はトップ12社のうち1社を除いて販売が伸びている。中でも、スズキの販売台数は、前年比で3倍以上だった。

日系ブランドのシェアを見ると、日産9.2%、トヨタ9.0%、スズキ7.5%の順に高い。日産は自社工場をエジプトに持ち、乗用車などを組み立てている。トヨタは委託生産したスポーツ用多目的車(SUV)を扱うほか、バス(マイクロバス、乗り合い用小型バス)や乗用車を輸入販売する。

図5:自動車ブランド別販売台数
2021年の自動車メーカー別の新車販売台数は、最大がシボレーの約五万台となった。次いで、日産、トヨタ、ヒュンダイ、MG、スズキ、KIAの順となった。

出所:AMIC

政府が自動車産業政策やEV普及を計画

エジプト政府は、数年前から自動車産業育成政策を計画してきた。その詳細は、近く公表されることになっている。自動車の現地生産、部品の現地調達を行う企業に対する支援強化が盛り込まれる見込みだ。

政府は、電気自動車(EV)の普及も計画する。2021年12月には、エジプト公共事業省が国内4万2,000カ所にEV充電ステーションを設置すると公表した。また、政府出資で管理会社を設立する予定も示した。また、外国のEVメーカーの工場誘致に取り組んでいる。当面見極めるべきなのは、充電ステーションの拡充と言えるだろう。

政府が天然ガス車やEV普及を目指すのはなぜか。その理由として考えられるのは、排出ガス削減だ。そのほか、輸入に依存するガソリンから他燃料への転換を目指していることも大きいだろう。エジプトは、中東にありながら石油輸入国だからだ。債務が増加するエジプトにとって、ガソリンに対する補助金削減が大きな課題と言える。ガソリンに代えて自国資源を活用できるなら、理にかなう。

片や、地中海沖に巨大天然ガス田が見つかり、外国の資源メジャーによる投資が進展。その結果、国内需要を賄い輸出まで可能な状態に至った。発電源は目下、火力発電が中心ではある。その一方で風力・太陽光発電も推進され、電力余剰が見られる状況だ。そこに、EVで活用の余地が生じることになる。


注:
エジプトは、EUとの間でエジプト・EU連合協定(Egypt-EU Association Agreement)を、英国とエジプト・英国連合協定(Egypt UK-Association Agreement)を、トルコと自由貿易協定(FTA)を、それぞれ発効済み。
執筆者紹介
ジェトロ・カイロ事務所
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課(2010年~2013年)、ジェトロ北海道(2013~2017年)を経て現職。貿易投資促進事業、調査・情報提供を担当。

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