2021年の新車販売台数は前年比4割増を記録(ペルー)
日本車がシェア首位堅持も、中国車躍進

2022年9月1日

2021年のペルーの新車販売台数(注1)は、ペルー自動車協会(AAP)発表によると、前年比39.0%増の16万4,769台に上り、新型コロナウイルスによるパンデミック前の販売台数には及ばないものの、ほぼ同じ水準まで回復した。2019年比では2.9%減にとどまった。部門別では、普通車[乗用車、ステーションワゴン、スポーツ用多目的車(SUV)を含む]の販売台数は41.3%増の11万5,818台で11万台を回復した。パンデミック前の2019年比では3.2%減であった。そのほか、商用車(バン、ピックアップトラックなど)は38.5%増の3万7,491台で、2019年比でも4.9%増とパンデミック前の実績を上回った。トラックは24.4%増の1万810台で、2019年比11.4%減だった。バスは前年比17.4%減と唯一、前年実績を下回った(表1参照)。

表1:部門別新車販売台数表1:部門別新車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
部門 2019年 2020年 2021年 シェア
(2021年)
21/20比 21/19比
普通車 119,616 81,957 115,818 70.3 41.3 △ 3.2
商用車 35,724 27,071 37,491 22.8 38.5 4.9
トラック 12,204 8,688 10,810 6.6 24.4 △ 11.4
バス 2,177 787 650 0.4 △ 17.4 △ 70.1
合計 169,721 118,503 164,769 100.0 39.0 △ 2.9

出所:ペルー自動車協会(AAP)

AAPでは、自動車市場の回復は主に雇用と収入の改善がもたらした内需拡大によるものだとしている。その要因として、前政権の経済活動再開計画や新型コロナウイルスのワクチン接種推進計画による感染者数の抑制などを挙げているほか、政府による勤労時間補償(CTS)積立金(退職時積立金)や民間年金(AFP)積立金などの前倒し受給政策、各社代理店による販売促進活動などが影響している、と分析している。

2021年の自動車ローン市場は、前年比4.95%減の33億5,900万ソル(約1,155億4,960万円、1ソル=約34.4円)となり、パンデミックに加えて新政権に対する不信感からローン負担を嫌う傾向が続いている様子がうかがえる(注2)。主な貸し付け機関は、銀行が全体の52.8%で最も多く、次いで小規模零細企業開発機関(EDPYME)(24.2%)、ローン会社(22.5%)、市営貯蓄貸付銀行(0.32%)、村営貯蓄貸付銀行(0.26%)、となっている。

メーカー別では、ほぼ全てのメーカーが前年の販売実績を下回った2020年に比べ、2021年は多くのメーカーが前年からのプラス成長を達成した。特にトヨタ自動車は、普通車(前年比52.1%増、1万9,683台)、商用車(39.0%増、1万1,826台)ともに首位に立った。トラックとバスの分野においては、日野自動車がそれぞれ32.9%増(2位)、42.6%増(4位)と健闘した。日本メーカー全体では全部門で38.4%の市場シェアを獲得し、2位の中国(24.3%)、3位の韓国(16.8%)とアジアメーカーが上位を占めている(表2参照)。

表2:主要25メーカー新車販売実績(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2019年 2020年 2021年 シェア
(2021年)
21/20比 21/19比
トヨタ自動車 30,019 21,450 31,509 19.1 46.9 5.0
現代 20,324 13,590 16,922 10.3 24.5 △ 16.7
シボレー 8,883 7,791 11,372 6.9 46.0 28.0
KIA 13,894 8,721 10,840 6.6 24.3 △ 22.0
日産自動車 7,566 4,924 8,618 5.2 75.0 13.9
CHANGAN 5,371 4,187 7,206 4.4 72.1 34.2
フォルクスワーゲン 5,924 4,533 7,161 4.3 58.0 20.9
JAC 4,262 3,694 7,102 4.3 92.3 66.6
スズキ自動車 6,806 5,381 6,322 3.8 17.5 △ 7.1
DFSK 4,501 2,767 5,218 3.2 88.6 15.9
三菱自動車 5,440 3,525 4,332 2.6 22.9 △ 20.4
CHERY 2,439 1,844 4,287 2.6 132.5 75.8
フォード 3,476 2,546 3,797 2.3 49.1 9.2
マツダ自動車 4,586 3,088 3,132 1.9 1.4 △ 31.7
RENAULT 5,952 2,766 2,952 1.8 6.7 △ 50.4
本田技研工業 2,277 1,397 2,599 1.6 86.0 14.1
GREAT WALL 3,059 2,112 2,415 1.5 14.3 △ 21.1
FOTON 1,599 1,754 2,395 1.5 36.5 49.8
いすゞ自動車 1,446 1,527 2,039 1.2 33.5 41.0
GEELY 631 649 1,779 1.1 174.1 181.9
日野自動車 1,476 1,265 1,686 1.0 33.3 14.2
スバル自動車 2,765 1,648 1,633 1.0 △ 0.9 △ 40.9
三菱ふそう 1,535 810 1,395 0.8 72.2 △ 9.1
MG 928 859 1,318 0.8 53.4 42.0
メルセデスベンツ 3,189 1,596 1,228 0.7 △ 23.1 △ 61.5
その他 21,373 14,079 15,512 9.4 10.2 △ 27.4
合計 169,721 118,503 164,769 100.0 39.0 △ 2.9

注:日本メーカーのみ太字にしている。
出所:ペルー自動車協会(AAP)

地域別では、首都リマを含むリマ州が全体の60.3%を占めているほか、南部鉱山地域のアレキパ州が9.3%、北部沿岸農業地域のラ・リベルタッド州が6.1%と上位を占めている。

中国車の躍進

「新型コロナ禍」で最も大きく躍進したのが中国車だ。2021年のペルーにおける中国車の市場占有率は24.3%と前年の21.9%から躍進している。吉利汽車(GEELY)の代理店を務めるモトルムンド(MOTORMUNDO)によると、現在ペルーで販売されている中国車メーカー数は12社に上り、中南米域内ではチリに次いで多い国となっている。GEELYの2021年新車販売台数は1,779台と数量的にはまだ少ないが、長安汽車(CHANGAN)は72.1%増の7,206台、江准汽車(JAC)も92.3%増の7,102台、東風小康汽車(DFSK)は88.6%増の5,218台、台奇瑞汽車(CHERY)は2.3倍の4,287台と、既に欧米メーカーと肩を並べる状況にある。また、売り上げを牽引する分野については、ピックアップトラックやSUVを中心に、新中間層が初めて購入する車、さらには「新型コロナ禍」の商用デリバリー需要増によるミニバンの需要が伸びている。

成長を続ける二輪車、三輪車市場

自動二輪車および自動三輪車市場については、二輪車が前年比49.9%増の29万1,490台、三輪車が47.0%増の13万4,122台を記録した。メーカー別では、北東部のイキトスで生産も行っている本田技研工業が81.1%増の8万1,749台(シェア19.2%)となり、2位の中国のワンシン(WANXIN、67.5%増、5万7,057台)と3位インドのバジャージ(BAJAJ、26.2%増、3万6,568台)を引き離し、首位を堅守した(表3参照)。自動二輪車および三輪車市場が成長した背景には、「新型コロナウイルス感染予防のための移動手段として需要増」「デリバリーサービス業の増加」「低燃費・安価モデルの市場投入」の3要因がある、と各社ではみている。

表3:自動二輪・三輪車新車販売台数 (単位:台、%)(-は値なし)
メーカー 2021年 前年比 シェア
本田技研工業 81,749 81.1 19.2
WANXIN 57,057 67.5 13.4
BAJAJ 36,568 26.2 8.6
ZONGSHEN 30,082 51.7 7.1
RONCO 28,591 24.7 6.7
SSENDA 13,830 76.8 3.2
LIFAN 12,665 27.2 3.0
NEXUS 11,743 59.4 2.8
MAVILA 8,829 82.2 2.1
ヤマハ 8,313 9.0 2.0
その他 136,185 32.0
合計 425,612 49.0 100.0

出所:ペルー自動車協会(AAP)

両部門の地域別販売実績をみると、首都リマを含むリマ県が前年比32.9%増の13万5,831台で全体の31.9%を占めている。その他、上位地域は北部沿岸部のチクラジョ県(45.9%増、全体の9.9%)とピウラ県(73.0%増、6.6%)のほか、内陸ジャングル地域のプカルパ県(60.8%増、5.3%)とタラポト県(91.1%増、3.7%)となっている。

電気自動車(EV)普及には政府の支援策が待たれる

燃料種類別では、ガソリン車が前年比33.5%増の11万3,637台(全体の69.0%)を筆頭に、ディーゼル車が31.5%増の3万9,539台(24.0%)と上位を維持した。また、液化石油ガス(LPG)車が8.6倍の5,697台(3.5%)を記録したほか、天然ガス車が3.3倍の1,030台(0.6%)、ハイブリッド車(ガソリン、電気)が3.2倍の1,171台(0.7%)、電気自動車(EV)が70.0%増の17台となった(表4参照)。

表4:燃料別自動車販売統計(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
燃料種類 2019年 2020年 2021年 シェア
(2021年)
21/20
21/19
ガソリン 124,992 85,138 113,637 69.0 33.5 △ 9.1
ディーゼル 40,952 30,074 39,539 24.0 31.5 △ 3.5
液化石油ガス(LPG) 409 661 5,697 3.5 761.9 1292.9
表示なし 2,497 1,948 2,999 1.8 54.0 20.1
天然ガス(NSV) 625 308 1,030 0.6 234.4 64.8
ハイブリッド(ガソリン、電気) 235 364 1,171 0.7 221.7 398.3
バイオ燃料(ガソリン、LPG) 0 0 661 0.4
電気 4 10 17 0.0 70.0 325.0
バイオ燃料(ガソリン、天然ガス) 6 0 17 0.0 183.3
ハイブリッド(ディーゼル、電気) 0 0 1 0.0
デュアル燃料(ディーゼル、天然ガス) 1 0 0 0.0 △ 100.0
合計 169,721 118,503 164,769 100.0 39.0 2.9

出所:ペルー自動車協会(AAP)

特に、国際的なインフレにより燃料費が高騰していることから、政府は、ガソリン車やLPG車を天然ガス車に改造するための無利子による融資制度「天然ガスによる節約計画」を導入している。エネルギー鉱山省によると、2021年は1万8,796台が天然ガス車に改造されたのに対し、2022年は6月時点で既に前年を上回る3万2,278台が改造されている。

AAPによると、2021年に国家登記庁(SUNARP)に登録された新車のEV(ハイブリッド車を含む)は首都リマ(全体の79.2%)を中心に1,455台に上り、過去最大を記録した。内訳としては、ハイブリッド車が1,364台、プラグインハイブリッド車が58台、EVが33台となっており、市場シェアは前年の0.49%から0.88%に拡大した(表5参照)。メーカー別では、トヨタ自動車がハイブリッド車のRAV4とカローラクロスを中心に、前年比88.9%増の644台で市場シェアを44.3%に伸ばしている。次いで、アウディが9.5倍の352台(シェア24.2%)、ボルボが14.9倍の104台(シェア7.1%)で追随している(表6参照)。

表5:EVおよびハイブリッド車新車登録数(単位:台、%)
タイプ 2020年
累計
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2021年
累計
シェア(2021年) 前年比
電気自動車(BEV) 26 7 1 2 2 1 1 1 2 6 4 2 4 33 2.3 26.9
ハイブリッド車(HEV) 542 71 43 81 102 80 103 94 141 137 104 182 226 1,364 93.7 151.7
プラグインハイブリッド車 (PHEV) 10 0 0 1 5 1 6 8 2 15 3 5 12 58 4.0 480.0
合計 578 78 44 84 109 82 110 103 145 158 111 189 242 1,455 100.0 151.7

出所:ペルー自動車協会(AAP)

表6:メーカー別ハイブリッド車およびEV新規登録台数(単位:台/%)(△はマイナス値、-は値なし)
メーカー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2021年累計 2021年
シェア
2020年累計 21/20比
トヨタ自動車 44 24 31 49 35 58 62 69 77 58 72 65 644 44.3 341 88.9
アウディ 7 6 22 28 27 23 11 39 31 19 58 81 352 24.2 37 851.4
ボルボ 0 0 1 3 1 6 8 2 16 7 17 43 104 7.1 7 1385.7
レクサス 10 3 11 15 5 7 3 6 8 5 14 9 96 6.6 68 41.2
メルセデスベンツ 7 8 12 5 4 6 6 9 7 6 7 14 91 6.3 50 82.0
ランドローバー 3 1 5 5 7 5 5 5 5 5 6 3 55 3.8 35 57.1
フォード 0 0 0 0 1 0 2 5 6 4 5 7 30 2.1 0
スズキ 0 0 0 0 0 0 2 0 0 1 6 11 20 1.4 0
KIA 0 0 0 0 1 3 1 7 3 2 2 1 20 1.4 0
現代 6 1 1 0 0 0 1 2 1 0 2 4 18 1.2 15 20.0
ポルシェ 1 0 0 3 0 0 0 1 1 0 0 1 7 0.5 3 133.3
フォルクスワーゲン 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0.1 1 0
テスラ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0.1 1 0
ジャガー 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0.1 0
BMW 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0.1 0
プジョー 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0.1 0
その他 0 0 0 1 1 0 2 0 3 3 0 3 13 89.3 20 △ 35.0
合計 78 44 84 109 82 110 103 145 158 111 189 242 1,455 100.0 578 151.7

出所:ペルー自動車協会(AAP)

メーカー別での2021年EV市場(ハイブリッド車を含まない)には、韓国の現代自動車のほか、欧州のポルシェやボルボが参入しているほか、中国のスカイウェル(SKYWELL)も販売実績があった(表7参照)。

表7:メーカー別EV新車販売統計(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
メーカー名 2019年 2020年 2021年
台数 シェア 前年比
現代 0 9 7 41.2 △ 22.2
ポルシェ 0 0 5 29.4
SKYWELL 0 0 3 17.6
ボルボ 0 0 2 11.8
BORGWARD 1 0 0 0.0
LIANKE 3 0 0 0.0
JOYLONG 0 1 0 0.0 △ 100.0
合計 4 10 17 100.0 70.0

一方で、AAPは、ペルーでさらにEVが普及するには、コロンビアのように自動車税の減税や関税の減免などの政府による支援策が不可欠だとしている。またAAPでは、EV市場の拡大は充電設備建設や充電サービスなどの付帯産業の育成が新たな雇用の創出にも寄与するとしている。同協会では政府に対して、2021年4月に「電気自動車普及のための国家計画」を提案している。これに対し、ペドロ・カスティージョ大統領は2022年7月28日の建国記念日の議会演説で「国際的な燃料の高騰に伴い、公共交通機関および民間分野における安価でクリーンな移動手段としてEV輸入に対する優遇税制を設ける」と述べた。


注1:
各社の販売代理店がAAPに報告している全ての部門の販売台数。
注2:
2019年比では7.32%減とさらにマイナス幅が広がっている。
執筆者紹介
ジェトロ・リマ事務所長
設楽 隆裕(しだら たかひろ)
1992年、ジェトロ入構。ジェトロ・マドリード事務所(1997~2001年)、ジェトロ・ブエノスアイレス事務所長(2006~2010年)、ジェトロ大阪本部情報サービス課長および主幹(2013~2017年)などを経て、2018年8月より現職。