自動車市場は回復途上、中国・インドの存在感が増す(サウジアラビア)

2022年9月12日

2021年は新型コロナウイルス感染拡大による経済活動への影響が軽減され、サウジアラビアの自動車販売台数は、乗用車・商用車ともに回復をみせた。他方で、各国のサウジアラビア向け自動車輸出状況をみると、乗用車・商用車ともに引き続き首位を保つ日本勢を、中国とインドが追い上げている。特に中国は、乗用車・商用車ともに輸出が増えており、中国の存在感が着実に増している。

2021年の自動車市場は回復途上

国際自動車工業連合会(OICA)によると、2021年のサウジアラビア自動車販売台数は、乗用車が前年比22.7%増の47万5,837台、商用車が24.5%増の8万722台となった。2014年以降、原油価格下落による景気低迷や、新型コロナウイルス感染拡大防止措置によるビジネスの停滞、2020年7月1日に導入されたVAT(付加価値税)税率(5%から15%)の大幅引き上げなどにより、高額商品である自動車の販売台数は2020年まで減少していた。2021年に入り、世界的な石油需要の増加と新型コロナの流行の落ち着きにより、自動車市場は回復途上にある。

乗用車で中国車が台頭、サウジアラビア女性に好評

米国商務省国際貿易局(ITA)(2021年9月13日)によると、サウジアラビアの自動車市場シェアは、トヨタ自動車が30%を占め、続いて現代自動車と起亜自動車が26%、ルノー・日産自動車・三菱自動車が9%を占め、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が残りのシェアの多くを占めている。

2021年の主要国におけるサウジアラビア向け乗用車輸出をみると、日本からの輸出は、排気量1,500cc以上3,000cc未満の中型車が前年比2.3%増の6万290台、同3,000cc以上の大型車は25.0%増の2万2,939台と堅調であった(図1参照)。

一方、中国は排気量1,000cc以上1,500cc未満の小型車が前年比52.9%増の7万6,847台、同1,500cc以上3,000cc未満の中型車が18.6%増の4万2,007台で、小型・中型車ともに輸出が大きく増加した。中国車の輸出が増加した理由について、現地日系部品メーカーは「2018年6月に女性の自動車運転解禁後、女性が自動車を購入・選択する場面が増えた。サウジアラビアの女性は『デザイン性と価格』を重視する傾向にあり、中国車はデザインと価格の両面において条件を満たしているため、中国車の人気が年々高まってきている」との見方をしている。しかし、「アフターサービスについては十分に対応できておらず、部品を中国本土または生産地から取り寄せることから修理にかなりの時間を要す、自動車整備士が中国の自動車の整備に慣れていないなど、課題が多い」とのコメントもあった。

図1:主要国の対サウジアラビア乗用車輸出推移(台数)
乗用車では、中国が小型車と中型車で対サウジアラビア輸出を大きく伸ばしている裏で、韓国からの小型車と中型車、米国からの大型車、インドからの小型車の輸出台数の減少が目立っている。

注:便宜的名称として、排気量1,000cc以上1,500cc未満を小型車、同1,500cc以上3,000cc未満を中型車、同3,000cc以上を大型車とした。 出所:グローバル・トレード・アトラス(GTA)からジェトロ作成

小型商用車は中国とインドの存在が増す

サウジアラビアでは、カテゴリー別の販売統計は発表されていないため、主要国側のサウジアラビア向け商用車輸出統計をみると、海外生産分も含めて小型トラック(注)は中国とインドからの輸出が大きく増加しており、中国は前年比2.6倍の9,860台、インドは2.5倍の8,781台であった(図2参照)。小型トラックが増加した背景として、国家改革計画「サウジ・ビジョン2030」によるインフラ需要の高まりを受け、商業用のピックアップトラックおよびバンへの嗜好(しこう)が高まり、自動車の主要生産国である中国、インドからの輸入が増加したことがあるとみられる。

中型トラックでは、日本からの輸出が多く、前年比45.8%増の6,646台であった。中型トラックのカテゴリーでは、いすゞ自動車が日本ブランドでは唯一、サウジアラビア国内で組み立て製造を行っている。

図2:主要国の対サウジアラビア商用車輸出推移(台数)
商用車では、小型トラックについて中国とインドからの輸出が大幅に増加している。中型トラックでは引き続き日本がトップシェアを占めている。

注:タイからの小型トラック輸出の単位についてだけ「10台」。
出所:グローバル・トレード・アトラス(GTA)からジェトロ作成

執筆者紹介
ジェトロ・リヤド事務所
林 憲忠(はやし のりただ)
2005年、ジェトロ入構。市場開拓部、ジェトロ大阪、ジェトロ・プノンペン事務所、ジェトロ・チェンナイ事務所、農林水産部、国税庁、海外調査部中東アフリカ課を経て、2022年8月から現職。