巣ごもり需要からインターネット普及進展(メキシコ)
2021年全国情報技術世帯普及利用調査結果から

2022年9月14日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は2022年7月、2021年の全国情報技術世帯普及利用調査(ENDUTIH2021)の結果を発表した。ENDUTIH2021によると、インターネットの人口普及率は75.6%。世帯普及率は66.4%だった。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年から、前者は6.0ポイント、後者は10.6ポイントも上昇した。

インターネットにアクセスする場所も、新型コロナ禍前後で変化がある。以前は家庭以外でアクセスしていた人が1,400万人以上いた。それが、2020年以降800万人強まで減少。2021年は、家庭からのアクセスがインターネット利用者全体の81.7%、人口比で72.0%に達した。コロナ禍による巣ごもりの影響が強くみられる。

電子商取引(EC)による販売額も大きく伸びた。メキシコ・オンライン販売協会(AMVO)によると、EC小売り販売は、2021年に前年比27.0%増。インドと並び、メキシコは主要国で最も高い伸びを見せたことになる。

インターネットの人口普及率は75.6%、世帯普及率も66.4%まで上昇

INEGIは毎年、連邦通信院(IFT)と協力してENDUTIHを実施している。その狙いは、世帯などでITがどの程度普及し利用されているか、状況を調査するところになる。結果は、前年実施の調査について7月に発表されるのが通例だ。ENDUTIH2021は、2021年8月2日~9月24日に実施された。対象者は15歳以上の住民。そこから、全国6万5,179世帯が標本として抽出された。

この調査結果によると2021年時点で、パソコン(PC)の人口比普及率は、37.4%。インターネットは75.6%、携帯電話78.3%だった。5年前(2016年)と比較すると、PCは9.5ポイント低下した。対照的に、インターネットは16.1ポイント、携帯電話は4.7ポイント、それぞれ上昇したことになる。新型コロナ前の2019年と比較すると、PCが4.9ポイント減、インターネットが6.0ポイント増、携帯電話が3.4ポイント増だった(表1参照)。

表1:PC、インターネット、携帯電話の利用者数および人口比普及率(単位:1,000人,%)
PC インターネット 携帯電話
利用者数 普及率 利用者数 普及率 利用者数 普及率
2015年 55,736 51.3 62,449 57.4 77,711 71.5
2016年 51,708 47.0 65,521 59.5 81,028 73.6
2017年 49,826 45.2 70,290 63.7 79,587 72.1
2018年 49,936 44.7 73,142 65.5 81,865 73.3
2019年 48,362 42.4 79,489 69.6 85,550 74.9
2020年 43,534 37.5 82,979 71.5 87,218 75.1
2021年 43,845 37.4 88,562 75.6 91,732 78.3

注:普及率は15歳以上の人口に占める比率。
出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

世帯普及率としては、PC・インターネット・電話に加え、テレビ、有料テレビ放送、ラジオ、電力についても調査。2021年調査では、PCが44.8%、インターネットが66.4%、テレビ91.2%、有料テレビ放送43.3%、電話94.9%、ラジオ48.5%、電力99.4%だった(表2参照)。

電話の世帯普及率94.9%の内訳としては、携帯電話だけを所有している世帯が2021年に全世帯の55.8%、固定電話だけが1.4%、両方が37.7%。近年は他国同様、固定電話を所有する世帯が少なくなっている。

テレビの普及率91.2%の内訳は、デジタルテレビだけを所有する世帯が全世帯の66.0%、アナログテレビだけが12.8%、両方が12.3%。また、デジタルテレビの世帯普及率は78.3%だった。なおメキシコでは、2015年末に地上波テレビ放送のデジタル化完了済みだ。ただし、都市部の多くの世帯では、ケーブルテレビや衛星テレビの受信機を介して地上波放送を視聴している。そのため、アナログテレビでも地上波テレビ放送が視聴できることが多い。

表2:情報通信技術関連製品とサービスの利用世帯数および世帯普及率(単位:1,000世帯,%)
PC インターネット テレビ 有料テレビ 電話 ラジオ 電力
世帯数 普及率 世帯数 普及率 世帯数 普及率 世帯数 普及率 世帯数 普及率 世帯数 普及率 世帯数 普及率
2007年 5,937 22.1 3,222 12.0 25,038 93.3 6,628 24.7 19,784 73.7 23,824 88.8 25,787 96.1
2008年 7,127 25.7 3,752 13.5 25,885 93.2 6,641 23.9 20,967 75.5 24,246 87.3 27,465 98.9
2009年 7,460 26.8 5,119 18.4 26,514 95.1 7,584 27.2 22,101 79.3 23,135 83.0 27,587 98.9
2010年 8,445 29.8 6,290 22.2 26,834 94.7 7,559 26.7 22,838 80.6 23,398 82.5 28,158 99.3
2011年 9,030 30.0 6,995 23.3 28,473 94.7 9,125 30.4 24,703 82.2 24,343 81.0 29,812 99.2
2012年 9,836 32.2 7,934 26.0 29,007 94.9 9,849 32.2 25,556 83.6 24,219 79.3 30,299 99.2
2013年 11,146 35.8 9,574 30.7 29,546 94.9 11,438 36.7 26,634 85.5 23,954 76.9 30,930 99.3
2014年 12,023 38.3 10,798 34.4 29,787 94.9 11,965 38.1 19,907 63.4 23,011 73.3 31,226 99.5
2015年 14,685 44.9 12,810 39.2 30,581 93.5 14,304 43.7 29,188 89.3 21,531 65.8 32,422 99.2
2016年 15,184 45.6 15,659 47.0 30,993 93.1 17,339 52.1 30,002 90.1 20,473 61.5 33,084 99.3
2017年 15,236 45.3 17,055 50.7 31,375 93.2 16,616 49.4 30,900 91.8 19,733 58.6 33,467 99.4
2018年 15,286 44.7 17,975 52.5 31,798 92.9 16,137 47.1 31,515 92.1 19,215 56.1 33,993 99.3
2019年 15,505 43.9 19,690 55.8 32,594 92.4 16,089 45.6 32,596 92.4 18,956 53.7 35,090 99.4
2020年 15,615 43.8 21,389 59.9 32,624 91.4 15,204 42.6 33,423 93.7 18,329 51.4 35,508 99.5
2021年 16,410 44.8 24,328 66.4 33,380 91.2 15,872 43.3 34,741 94.9 17,772 48.5 36,403 99.4

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

PC、テレビ、有料テレビ放送、ラジオは、5年前と比較して世帯普及率が低下した(それぞれ、0.8ポイント、1.9ポイント、8.7ポイント、12.9ポイント減)。一方で上昇したのは、インターネット、電話、電力だ(それぞれ、19.4ポイント、4.8ポイント、0.1ポイント増)。

新型コロナ前の2019年と比較すると、テレビが1.2ポイント減、有料テレビ放送が2.2ポイント減、ラジオが5.2ポイント減、電力が0.02ポイント減だった。一方で、PCは0.9ポイント増、インターネットは10.6ポイント増、電話は2.5ポイント増と上昇した。特にインターネットの世帯普及率が大きく上昇したことが目を引く。これは、新型コロナ禍の下、巣ごもり需要が影響した結果と考えられる。

スマホによるアクセスが中心、行政手続きやネットバンキング利用も拡大

この調査では、インターネット利用者がインターネットに接続する機器(複数回答)についても聞いている。

2021年の調査結果では、スマートフォンが96.8%と圧倒的だった。ネット利用者のほぼ全てが、スマホでインターネットを利用していることになる。これにラップトップPCの27.0%、インターネットTV25.7%、デスクトップPC15.4%が続く(図1参照)。5年前と比較すると、PCによる接続比率が大幅低下した一方、スマホは5年間で12.1ポイント、インターネットTVは同17.7ポイントとそれぞれ上昇したかたちだ。伸びたのはスマホだけでなく、インターネットにアクセスできるデジタルテレビの普及も進んでいる。

図1:インターネットに接続する機器
スマートフォンでインターネットに接続している利用者は2015年に全体の73.8%、2016年に84.7%、2017年に89.6%、2018年に92.7%、2019年に95.2%、2020年に96.0%、2021年に96.8%。ラップトップPCで接続している利用者は2015年に全体の44.5%、2016年に46.2%、2017年に32.8%、2018年に32.5%、2019年に32.9%、2020年に28.1%、2021年に27.0%。デスクトップPCで接続している利用者は2015年に全体の51.7%、2016年に41.6%、2017年に33.1%、2018年に31.8%、2019年に28.6%、2020年に16.3%、2021年に15.4%。インターネットTVで接続している利用者は2015年に全体の5.4%、2016年に8.0%、2017年に12.4%、2018年に16.4%、2019年に23.1%、2020年に22.0%、2021年に25.7%。タブレット端末で接続している利用者は2015~2016年はゼロ(設問に選択肢として設定せず)、2017年に18.5%、2018年に17.7%、2019年に17.6%、2020年に10.9%、2021年に9.7%。ビデオゲーム機で接続している利用者は2015年に全体の5.9%、2016年に5.1%、2017年に6.2%、2018年に6.9%、2019年に8.3%、2020年に6.0%、2021年に6.5%。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

調査から、インターネットが幅広く利用されていることが改めて確認された。なお利用目的としては、(1)「連絡手段(eメールの利用など)」という回答が93.8%で最高。これに、(2)「情報検索」の89.9%、(3)「SNSの利用」89.8%、(4)「娯楽」88.5%、(5)「研修・教育」83.1%、(6)「画像・音楽コンテンツ」78.0%が続いた(表3参照)。5年前と比較すると、「画像・音楽コンテンツ」、「新聞・雑誌購読」を除いて、おおむね上昇している。また新型コロナ前(2019年)とでは、「連絡手段」が3.3ポイント、「SNSの利用」が2.1ポイント、「行政手続き」が6.9ポイント、「ネット購入」が8.0ポイント、「ネットバンキング」が7.9ポイント、「クラウドサービス」が3.3ポイント、「ネット販売」が3.3ポイント、それぞれ上昇した。「行政手続き」や「ネットバンキング」は、過去5年間で2桁の伸びを見せた。新型コロナの影響もあり、行政手続きの電子化やインターネットを通じた銀行利用が普及してきたこともうかがわれる。

表3:インターネットを利用する目的(複数回答)(単位:%)(-は値なし)
目的 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
連絡手段(E-mailなど) 84.1 88.9 89.9 90.2 90.5 93.7 93.8
情報検索 88.7 84.5 96.9 86.8 90.5 91.0 89.9
娯楽 71.4 80.1 91.4 90.4 91.4 88.7 88.5
SNS 71.5 75.8 76.5 77.8 87.7 88.9 89.8
研修・教育 56.6 51.8 70.8 83.6 83.5 85.6 83.1
画像・音声コンテンツ 76.6 81.9 78.1 78.0 80.4 77.2 78.0
ソフト・アプリダウンロード 31.1 30.0 50.0 49.1 48.1 46.7 45.7
行政手続き 20.8 22.2 28.0 30.9 35.4 32.5 42.3
新聞・雑誌購読 42.9 45.3 49.3 48.5 47.1 44.3 42.1
ネット購入 9.7 15.9 16.5 19.6 22.1 27.4 30.1
ネットバンキング 9.3 9.9 12.9 15.3 16.6 21.5 24.5
クラウドサービス 15.6 17.0 19.2 21.2 22.5
ネット販売 8.0 9.3 9.3 11.2 12.6
その他 0.3 0.1 0.0 0.0 0.0 2.2 2.4

注:四捨五入のため、本文中で言及した増減値が、表の数値の差に合わない場合もある。
出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

インターネットを利用する場所については、新型コロナ禍を受け、家庭での利用が急速に増えた。逆に、家庭以外からのアクセス(注)が減っている状況だ。家庭でインターネットを利用している利用者の比率(人口比)は2021年に72.0%に及んだ。2017年比で19.0ポイント、2019年比でも10.0ポイントの上昇になった。他方、家庭以外でインターネットを利用している比率は、2017年時点では10.7%あった。これが、2019年7.6%、2021年には3.6%まで低下した(図2参照)。

図2:利用場所別インターネット普及率(人口比)
家庭でインターネットを利用している人の比率は2017年に全人口の53.0%、2018年に56.7%、2019年に62.0%、2020年に67.1%、2021年に72.0%。家庭以外でインターネットを利用している人の比率は、2017年に10.7%、2018年に8.9%、2019年に7.6%、2020年に4.4%、2021年に3.6%。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

PCを利用する場所についても、同様の傾向がみられる。そもそもメキシコでは、PCの利用者は減少傾向にある。それでも、家庭でのPC利用者の比率(人口比)は横ばいで推移している。減ったのは、家庭以外のPC利用だったのだ(図3参照)。

図3:利用場所別PC普及率(人口比)
家庭でPCを利用している人の比率は2017年に全人口の30.9%、2018年に31.2%、2019年に29.8%、2020年に30.5%、2021年に30.6%。家庭以外でPCを利用している人の比率は、2017年に14.2%、2018年に13.5%、2019年に12.5%、2020年に7.0%、2021年に6.9%。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

PCを利用する目的は、「インターネットの利用」という回答が83.8%で最多だ。ただし、以前と比べるとむしろ低下傾向にある。多くの国民にとってインターネットへのアクセス手段はスマホのため、PCの重要性が低下したと考えられる。ただし、例外的に5年前と比較して回答率が上昇している用途もある。例えば、「仕事」(37.2%→49.2%)、「研修手段」(20.8%→26.8%)だ。これらは、新型コロナ禍でリモートワークやリモート研修が普及したことが影響したと考えて良いだろう。また、2020年4月から2021年半ばまでは、感染拡大抑制のため、学校が全て遠隔教育化された(テレビやインターネット経由)。そのため2020年には、「学校の勉強・宿題」という用途が51.5%に達した(前年比で6.0ポイント増、表4参照)。

表4:PCを利用する目的(複数回答)(単位:%)
目的 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
インターネットの利用 87.0 92.8 88.7 88.0 89.6 83.1 83.8
娯楽 72.2 78.2 72.1 69.9 70.1 61.6 63.4
仕事 36.7 37.2 37.6 40.8 44.4 45.8 49.2
学校の勉強・宿題 51.3 52.2 46.7 46.8 44.5 51.5 46.5
研修手段 24.2 20.8 13.4 18.1 24.5 28.6 26.8
その他 0.9 0.6 2.1 0.2 0.6 0.2 0.3

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

改めて、大多数の国民がインターネットにアクセスする手段として特に重要なのが、スマホだ。その普及に伴い、所有する携帯電話に占めるスマホの割合も、大きく増加している。2021年の携帯電話所有人口のうち、93.9%(人口比73.6%)が「スマホだけを所有」しているというのだ。「フィーチャーフォンだけを所有」するのは5.9%(同4.6%)、「両方とも持っている」のは0.2%(同0.2%)にとどまる。スマホの人口普及率は、過去5年間で17.8ポイントも上昇した(2016年56.0%→2021年73.8%、図4参照)。

図4:携帯電話の種類別人口比普及率
スマートフォンのみの利用者は2015年に46.5%、2016年に55.1%、2017年に57.8%、2018年に61.4%、2019年に65.9%、2020年に68.8%、2021年に73.6%。フィーチャーフォンのみは2015年に24.1%、2016年に17.7%、2017年に13.8%、2018年に11.4%、2019年に8.3%、2020年に6.2%、2021年に4.6%。両方を利用している人は2015年に0.8%、2016年に0.9%、2017年に0.5%、2018年に0.6%、2019年に0.7%、2020年に0.2%、2021年に0.2%。

出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

個人用品、家庭用品、食品・飲料を中心にEC拡大

インターネットやスマホが普及し、新型コロナ禍下で巣ごもり需要が伸びたのは、これまで見てきたとおりだ。その影響を受け、メキシコでもネット購入が急増している。ENDUTIHによると、2016年にインターネットで何らかの商品やサービスを購入した人は約775万人。人口比で7.0%にすぎなかった。しかし、2021年には2,666万人。人口比で22.8%に達した(表5参照)。

表5:インターネット購入を利用したことがある国民(単位:1,000人,%)
項目 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
人数 6,076 7,749 11,593 14,322 17,557 22,763 26,661
比率(注) 5.6 7.0 10.5 12.8 15.4 19.6 22.8

注:比率は15歳以上の人口に占める比率。
出所:国立統計地理情報院(INEGI)「全国世帯情報通信技術利用調査」(ENDUTIH)

インターネットで購入した商品・サービスとしては、(1)「個人用品」が最多だった(72.1%)。これに、(2)「家庭用品」(38.5%)、(3)「食品・飲料」(34.7%)、(4)「Uberなどの配車プラットフォーム」(31.9%)、(5)「携帯電話・アクセサリー」(27.5%)、(6)「電子製品」(25.2%)、(7)「旅行(航空券など)やコンサートなどの娯楽の予約」(22.7%)と続いている。なお新型コロナ前の2019年と比較して回答比率が大きく上昇したのは、(3)「食品・飲料」(21.9%→34.7%)、(2)家庭用品(25.9%→38.5%)、(1)個人用品(62.7%→72.1%)だった。明らかに、新型コロナ禍での巣ごもり需要が影響した結果と言えるだろう。

またAMVOは2022年2月、「2022年オンライン販売調査(スペイン語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を発表した。この調査によると、メキシコのEC小売り販売額の2021年の前年比伸び率は27.0%に達した。インドと並んで、主要国で最も高い伸び率を示したかたちだ(図5参照)。しかし、小売り販売全体に占めるECの割合は11.3%にとどまる。中国(43.9%)、英国(36.3%)、韓国(28.9%)、米国(16.1%)などと比べ、その水準は低い。それだけに、今後の伸びが期待できるという。

図5:電子商取引(小売り)の前年比伸び率(2021年)
メキシコが27.0%、インドが27.0%、ブラジルが26.8%、ロシアが26.1%、アルゼンチンが26.0%、フランスが17.5%、世界平均は16.3%。

出所:メキシコ・オンライン販売協会(AMVO)

消費者には、EC利用に不安感も

ECのさらなる普及に向けた課題としては、(1)ネット決済の不安解消、(2)確実で迅速な宅配サービス、(3)支払い方法の多角化、(4)商品や販売事業者に関する情報の充実化、などが挙げられる。

ENDUTIH2021で、2021年にインターネットを通じた購入の課題として最も多く挙げられたのは「商品の配送」に関するもの。回答全体の58.1%に上った。これに、「商品の品質」に関する不安が28.2%、「代金決済の安全性」が23.0%、「商品の状態」に関する不安が18.5%と続いた。

AMVOの2022年オンライン販売調査でも、インターネット購入を利用しない人に、その理由を聞いている。そこで挙げられた問題とて最も大きかったのが、(1)「ネット購入の安全性」(全体の82%)だった。ネット詐欺や、購入商品に欠陥がある可能性などが念頭にあったとみられる。このほか、(2)「代金の決済手段に関する問題」(クレジットカードやデビットカードに決済手段が限定されることなど;50%)、(3)「商品の配送に関する問題」(商品が届くまでの時間や、返品手段の迅速性など;46%)、(4)「情報不足をめぐる問題」(商品や販売業者に関する情報が乏しく、写真を見ただけではわからない、など;43%)などが挙げられた。


注:
この記事で言う「家庭以外」とは、自身のアクセス手段を持っていなくて、家庭以外でしかインターネットを利用できない場合を意味する。従って、家庭でアクセスがあって家庭以外でもインターネットを利用することがある場合は、「家庭」からのアクセスになる。
執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所長
中畑 貴雄(なかはた たかお)
1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『FTAガイドブック2014』、共著『世界の医療機器市場』など。