新車販売・生産とも、前年から大きく回復(モロッコ)

2022年9月27日

モロッコ自動車輸入者協会(AIVAM)によると、2021年のモロッコの新車販売台数は、17万5,360台(小型商用車2万1,237台を含む)。前年の13万3,308台(同1万6,325台)から31.5%増だった。2019年(新型コロナウイルス感染拡大前)と比べても5.7%増ということになる。一方でAIVAMは、半導体問題が販売回復の伸びを鈍らせたとしている。

新車販売は前年比3割超の増

AIVAMによると、2021年のメーカー・ブランド別の乗用車販売台数1位は、前年に引き続きダチア(注1)。4万4,029台を売り上げた(前年比20.5%増、表1参照)。2位も前年同様にルノーで、2万386台(43.2%増)。3位と4位は順位が入れ替わった。2021年の3位はプジョーで1万2,230台(60.4%増)。わずかながら、4位の現代(1万2,008台、42.3%増)を上回った。このランキングでトップ10に入っている自動車メーカーをみると、フランス系(ダチアを含む)が54.5%と他を圧倒している。アジア勢では、日本のトヨタ、韓国の現代と起亜が入っている。モロッコ市場では韓国勢の存在感が強い。

小型商用車の2021年メーカー・ブランド別販売順位は、1位が中国の東風小康汽車(DFSK)で4,074台(25.1%増)。これに、2位ルノー3,291台(41.7%増)、3位フォード2,029台(9.1%増)が続く。日本勢では、6位に三菱自動車の1,834台(32.2%増)、8位にトヨタの1,596台(30.7増)が入った(表2参照)。DFSKの主力商品は、商業や農業・林業などで使用される荷台付きの小型商用車で、年々、販売台数を伸ばしている。なお、その販売価格は税込みで9万9,000ディルハム(約128万7,000円、1ディルハム=約13円)からとなっている。

2021年は、輸入車を含め、モロッコ国内の完成車の在庫が不足した。これは、国際的な半導体不足に起因する完成車減産の影響を受けた結果だ。AIVAMは「需要を満たすのに十分な完成車の販売在庫を確保できていたとすると、販売実績がもっと伸びていた可能性が高い」との見解を示している。

表1:メーカー・ブランド別の乗用車(新車)販売台数(単位:台数、%)(△はマイナス値、-は値なし)
2020年
順位
2021年
順位
メーカー・ブランド 2020年
販売台数
2021年
販売台数
前年比 2021年
シェア
1 ダチア  36,548 44,029 20.5% 28.6%
2 ルノー  14,235 20,386 43.2% 13.2%
3 プジョー  7,626 12,230 60.4% 7.9%
4 現代  8,441 12,008 42.3% 7.8%
5 シトロエン  5,378 7,317 36.1% 4.7%
6 オペル  5,679 6,964 22.6% 4.5%
7 フォルクスワーゲン  7,227 6,929 △4.1% 4.5%
11 8 トヨタ 3,116 5,357 71.9% 3.5%
9 フィアット  4,051 4,741 17.0% 3.1%
13 10 起亜 2,206 4,345 97.0% 2.8%
  -   - その他  22,452 29,817 32.8% 19.3%
合計  116,959 154,123 31.8% 100.0%

出所:AVIAMの統計を基にジェトロ作成

表2:メーカー・ブランド別の小型商用車(新車)販売台数 (単位:台数、%)(-は値なし)
2020年
順位
2021年
順位
メーカー・ブランド 2020年
販売台数
2021年
販売台数
前年比 2021年
シェア
1 1 DFSK 3,256 4,074 25.1% 19.2%
2 2 ルノー  2,322 3,291 41.7% 15.5%
3 3 フォード 1,859 2,029 9.1% 9.6%
4 4 ダチア 1,625 2,015 24.0% 9.5%
8 5 フィアット  1,138 1,891 66.2% 8.9%
5 6 三菱自動車 1,387 1,834 32.2% 8.6%
6 7 現代 1,248 1,654 32.5% 7.8%
7 8 トヨタ 1,221 1,596 30.7% 7.5%
9 9 プジョー 715 848 18.6% 4.0%
10 10 メルセデス・ベンツ 533 627 17.6% 3.0%
  -   - その他  1,045 1,378 31.9% 6.5%
合計  16,349 21,237 29.9% 100.0%

出所:AVIAMの統計を基にジェトロ作成


荷物運搬用に改造されたDFSKの小型商用車、サレの商業地区にて(ジェトロ撮影)

自動車生産も前年比62%増

国際自動車工業連合会(OICA)によると、2021年のモロッコの自動車生産台数は40万3,007台。前年の24万8,430台から62.2%増となった。2019年の39万4,652台をわずかに上回ったかたちだ。ルノー・グループ・モロッコの幹部は、2022年1月の記者会見で「新型コロナ感染拡大や半導体不足が生産に影響した。それでも、2021年の業績は好調だった」と述べた。

モロッコでは、ルノーがタンジェとカサブランカに工場を設置。生産車種は「ルノーエクスプレス」や「ダチア・ロガン」など、乗用車と小型商用車の複数モデルに及ぶ。また、ステランティス(旧PSA、注2)も、ケニトラに工場を持つ。ここではプジョーの「208」モデルやシトロエンの小型電気自動車(EV)「アミ」などを生産している。これらの工場では、2020年に新型コロナ感染拡大の影響を受けて生産を一時停止していた。それに対し、2021年は通年で生産できた。

なおルノーは、タンジェ工場に高性能スタンピング設備を導入した。また、2021~2030年の現地部品調達計画も公表している。その計画に基づいて、2025年までに25億ユーロを調達、最終的には調達規模を全体の80%(30億ユーロ)に引き上げる考えだ。

一方、ステランティスは2021年から、小型EV「アミ」の兄弟車「オペル・Rocks-e」の生産を始めている。


注1:
ダチアは、ルーマニア系自動車メーカーで、フランス・ルノーグループの傘下にある。モロッコ国内に生産工場も擁している。
注2:
旧PSAは2021年、新会社ステランティスに統合された。
執筆者紹介
ジェトロ・ラバト事務所長
本田 雅英 (ほんだ まさひで)
1988年、ジェトロ入構。総務部、企画部、ジェトロ福井、ジェトロ静岡などで勤務。海外はハンガリーに3度赴任。ジェトロ鳥取を経て2021年7月から現職。