自動車の販売台数、2021年は前年比19%増(UAE)
自動運転の実証実験やEV国内組み立ての計画も進む

2022年11月10日

国際自動車工業連合会(OICA)によると、2021年のアラブ首長国連邦(UAE)の自動車販売台数は18万8,844台、前年比で19.0%回復したが、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の水準には依然として戻っていない(表1参照)。内訳をみると、乗用車が15万6,780台(20.7%増)、商用車が3万2,064台(11.3%増)でいずれも増加し、特に乗用車の伸びが顕著だった。

表1:アラブ首長国連邦(UAE)の自動車販売台数(単位:台)(△はマイナス値)
項目 2019年 2020年 2021年 21/20年比 20/19年比 21/19年比
乗用車 198,520 129,901 156,780 20.7% △34.6% △21.0%
商用車 33,785 28,810 32,064 11.3% △14.7% △5.1%
全体 232,305 158,711 188,844 19.0% △31.7% △18.7%

出所:国際自動車工業連合会(OICA)

このような販売台数の増加は、観光業を中心とした経済回復や、雇用の戻りによる需要の増加が主要因と考えられる。2021年10月から翌年3月までの半年間開催されたドバイ万博が、国外からの観光客を呼び込み、ドバイへの観光客数が大きく回復した(2022年9月28日付地域・分析レポート参照)。それに伴い、万博運営や観光産業における車両の需要も増加したといえる。また、国内の雇用も順調に戻り、社用車需要に加えて、コロナ禍で減少していたUAEの外国人人口が戻り、個人需要も増加したと考えられる。2022年に入っても、「足元の需要は引き続き底堅い」と現地日系メーカーは語る。一方で、半導体不足や輸送費の高騰は続いており(2022年6月3日付地域・分析レポート参照)、自動車の供給が追い付かない事態も発生している。「車種によっては、納車まで半年待ちの状況」だ。

輸出入額ともに増加、新型コロナ前の約9割の水準に

UAEの2021年の乗用車(HSコード8703)貿易額(通関ベース)をみると、輸入は470億5,560万ディルハム(約1兆8,352億円、1ディルハム=約39円)で、前年比24.2%増となった。新型コロナ前の2019年(510億7,950万ディルハム)の92.1%まで戻している。そのうち、日本からの輸入は189億4,250万ディルハムで17.0%増。輸入総額の40.3%を占め、輸入相手国としては第1位だ(表2参照)。

表2:アラブ首長国連邦(UAE)の乗用車貿易(国別輸出入)

輸入(単位:10万ディルハム、%)
国名 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
日本 161,918 189,425 40.3 17.0
米国 55,435 66,315 14.1 19.6
ドイツ 33,817 43,426 9.2 28.4
英国 19,871 25,626 5.4 29.0
タイ 18,611 22,097 4.7 18.7
インド 13,771 18,089 3.8 31.4
合計 379,006 470,556 100.0 24.2
地場輸出(単位:10万ディルハム、%)(△はマイナス値、-は値なし)
国名 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
南スーダン 2 73 36.9 3,550.0
オマーン 27 17 8.6 △ 37.0
英国 3 17 8.6 466.7
中国 0 15 7.6 全増
香港 22 13 6.6 △ 40.9
日本 0 0 0.0
合計 3,932 198 100.0 △ 95.0
再輸出(単位:10万ディルハム、%)(△はマイナス値、-は値なし)
国名 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
イラク 31,852 35,628 14.3 11.9
オマーン 25,757 34,762 14.0 35.0
サウジアラビア 38,892 23,098 9.3 △ 40.6
中国 26,754 15,005 6.0 △ 43.9
日本 4,369 10,915 4.4 149.8
ヨルダン 4,449 7,535 3.0 69.4
合計 217,087 248,989 100.0 14.7

注1:HS8703の統計を抽出。
注2:本統計にはFOB、CIFの掲載がない。
注3:地場輸出はUAE内で生産した自動車の輸出を指す。
出所:UAE連邦競争・統計局から作成

地場輸出と再輸出を合わせた輸出総額は249億1,870万ディルハムで、前年比12.7%増だった。そのうち、輸出全体の99.9%を占める再輸出が248億9,890万ディルハムで14.7%増となり、2019年(280億7,390万ディルハム)の88.7%となった。これに対して、地場輸出は1,980万ディルハムで95.0%減となった。輸入された乗用車の大宗は再輸出されており、UAEは、自動車の貿易ハブとしての役割を担っている。それゆえ、貿易量は世界の需給に左右されるといえる。

自動運転の実証実験が着々と進む

UAE国内では、経済成長に伴う交通渋滞の緩和や、高速道路の安全性向上などを狙いとして、自動運転車の普及に向けた取り組みが進んでいる(2021年12月7日付地域・分析レポート参照)。2021年4月に米国自動運転車開発スタートアップのクルーズとドバイ交通局(RTA)が提携を発表し、2023年から全電気自動運転車両による配車サービスをドバイで開始。2030年までに4,000台に増やすとしており(2021年4月21日付ビジネス短信参照)、2022年7月にはドバイの道路で「マッピング」を開始。自動運転の実装に向けて、専用車両を持ち込んでデータ収集を行っている。予定では、2022年末までに無人での路上試験走行を実施するとしている。アブダビでも、UAEのIT企業G42の傘下バユナットが無人運転タクシーの実証実験を行う「TXAI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」プロジェクトを発表。2021年11月末にはアブダビのヤス島内の限られたエリアで走行試験が開始された。実証実験は現在でも実施されており、専用アプリをダウンロードすれば無料で利用が可能だ。

中国発EV企業がアブダビで組み立て拠点

また、UAEは温室効果ガス削減への取り組みを積極的に進めており、電気自動車(EV)の導入にも前向きだ。EVを製造・販売する中国発のNWTN(注)は2022年6月、アブダビ・ハリーファ工業団地(KIZAD)にセミノックダウン(SKD)工場を設置すると発表した。脱炭素への取り組みの一環として注目される。2022年内に年間5,000~1万台の生産キャパシティを持つ第1フェーズ、2024年までに5万台の生産が可能な第2フェーズの完成を目指す。また、アブダビのエネルギー局は2022年5月、EV充電インフラ整備のための政策を発表。充電ステーションを首長国内にくまなく設置し、適切に管理しEV導入を促進する。テスラモーターズ、BMW、シボレー、ルノー、ヒュンダイなど大手メーカーがすでにEVを販売しており、市中でもEVを目にする頻度が増えている。


注:
2016年に「アイコニック・モーターズ」(Iconiq Motors)名で中国・上海で創業。2022年に社名変更し、ドバイに本社を移転。
執筆者紹介
ジェトロ・ドバイ事務所
山村 千晴(やまむら ちはる)
2013年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ岡山、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2019年12月から現職。執筆書籍に「飛躍するアフリカ!-イノベーションとスタートアップの最新動向」(部分執筆、ジェトロ、2020年)。