グジャラート州政府、「自立したグジャラート-産業支援策2022」発表(インド)

2022年10月24日

2022年11月末以降、年末のいずれかの日程で実施される予定の州議会選挙を目前にして、インドのグジャラート(GJ)州のブペンドラ・パテル州首相は10月5日、「アトマニルバァール・グジャラート(自立したグジャラート)-産業支援策2022」を発表した。その中で州政府は「今後、州内に12兆5,000億ルピー(約22兆5,000億円、1ルピー=約1.8円)の投資を呼び込み、150万人の新規雇用を生み出す」との方針を示した。これまで以上に産業振興を強力に推し進め、新たな雇用創出につなげる路線をあらためて打ち出して、中央政府と州内に強いメッセージを送った。

同産業支援策は「インド独立100周年となる2047年までに『自立したインド』を実現する」という中央政府のモディ首相の構想(2020年5月14日付ビジネス短信参照)に応じ、製造業を牽引する工業州として同構想に積極的に貢献していく方針を明確にした。インドの産業界がグローバルなサプライチェーンの一部に位置付けられることを目指し、同時に国際的な競争力を維持しつつ、グリーンな製造手法に移行する取り組みを州政府として支援することが、モディ首相が2021年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)サミットで示した脱炭素化の方針にも寄与することになるとしている(2021年11月5日付ビジネス短信参照)。

今後、同産業支援策によって、(1)中小零細企業(MSMEs)、(2)大企業、(3)大規模企業の3つの企業規模に応じた各カテゴリーに、さまざまなインセンティブを付与することになる。これらの支援策は雇用機会の創出と連動しているとしており、インセンティブを高めることで、投資のリスクを軽減するだけでなく、若者の技術革新と起業精神を後押しするという。加えて、新進気鋭の起業が実現すれば、大規模で質の高い雇用機会の創出につながり、GJ州の新しい製造業とそれに関連するエコシステムが発展するとしている。

同産業支援策では、「GJ州の330万存在する中小零細企業は、GJ州の包括的な経済成長と、特に半都市部や農村部の持続可能な雇用機会の創出に大きく貢献してきた」(ジャグディシュ・ビシュワカルマ州産業相)として、同州経済での中小零細企業の役割と振興の重要性を強調している。その上で、産業セクター横断の大規模投資は雇用創出のみならず、州や国全体の経済にも乗数効果をもたらしてきたとし、大規模投資は中小零細企業に多角的な波及効果を及ぼし、大きなチャンスを生み出すとしている。さらに、国際的な競争力を高めるには、大規模な製造企業を誘致し、規模の経済を構築することも重要との考えを示している。

同産業支援策の骨子は以下のとおり。

(1)中小零細企業(MSME)へのインセンティブ

  1. MSMEに対し、10年間、固定資本投資額の最大75%までの総SGST(州別物品サービス税:GST)を還付
  2. マイクロインダストリーに対する最大350万ルピーまでの資本金補助
  3. 最長7年までMSMEに対する年間350万ルピーの利子補助金の付与
  4. 10年間の従業員積立基金(EPF)払い戻し
  5. 女性起業家、若手起業家、新興企業、障害者起業家への優遇措置の拡大
  6. 5年間の電力税の免除

(2)大企業へのインセンティブ

製造業の世界的な動向と将来性を考慮し、「自立したインド」構想のビジョンに沿った「9産業セクター(22のサブセクター)」を推進製造セクターとして設定している(表1参照)。

表1:「自立したインド」構想のビジョンに沿った「9産業セクター(22のサブセクター)」
NO セクター サブセクター
1 グリーン・エネルギー・エコシステム
  • グリ-ン水素/グリーンアンモニア
  • 電解槽
  • 再生可能エネルギー設備
  • 蓄電池
  • 燃料電池
2 輸送機器
  • 航空関連製造業
  • 電気自動車
  • 自動車、自動車部品
  • 宇宙関連製造業
3 資本設備
  • 電気機器 and/or 設備
  • 産業用機械 and/or 設備
  • 通信機器 and/or 設備
4 金属と鉱物
  • 金属
  • 鉱物処理・加工
  • セラミックス
5 テキストタイルとアパレル
  • テクニカル・テキスタイル
  • テキスタイル、アパレル&衣料品
6 持続可能性 都市固形・液体廃棄物リサイクル設備の製造
7 農産加工 農業と食品加工
8 宝石とジュエリー 人工ダイヤモンドを含む宝石とジュエリー
9 ヘルスケア
  • 医薬品製造 and/or API製造
  • 医療機器

出所:「Aatmanirbhar Gujarat schemes 2022」から引用

  1. 大企業に対して10年間、固定資本投資額の最大75%までの総SGST(州GST)を還付
  2. 固定資本投資額の12%までの利子補助金の付与
  3. 10年間のEPF払い戻し
  4. 主要製造業への継続的な支援強化
  5. 5年間の電力税の免除

(3)大規模企業へのインセンティブ

製造業の世界的な動向と将来性を考慮し、「自立したインド」構想のビジョンに沿った「 10 産業セクター(23 のサブセクター)」を推進製造セクターとして認定している(表2参照)。

表2:「自立したインド」構想のビジョンに沿った「10産業セクター(23のサブセクター)」
No セクター サブセクター
1 グリーン・エネルギー・エコシステム
  • グリ-ン水素/グリーンアンモニア
  • 電解槽
  • 再生可能エネルギー設備
  • 蓄電池
  • 燃料電池
2 輸送機器
  • 航空関連製造業
  • 電気自動車
  • 自動車、自動車部品
  • 宇宙関連製造業
3 資本設備
  • 電気機器 and/or 設備
  • 産業用機械 and/or 設備
  • 通信機器 and/or 設備
4 金属と鉱物
  • 金属
  • 鉱物処理・加工
  • セラミックス
5 テキストタイルとアパレル
  • テクニカル・テキスタイル
  • テキスタイル、アパレル&衣料品
6 持続可能性 都市固形・液体廃棄物リサイクル設備の製造
7 農産加工 農業と食品加工
8 宝石とジュエリー 人工ダイヤモンドを含む宝石とジュエリー
9 化学薬品 化学薬品
10 ヘルスケア
  • 医薬品製造 and/or API製造
  • 医療機器

出所:「Aatmanirbhar Gujarat schemes 2022」から引用

これらの推進産業セクターに該当し、250億ルピー以上を投資し、2500人以上を雇用する大規模産業ユニットにインセンティブを付与する。

  1. 大規模企業に対して20年間、固定資本投資額の18%を上限に総SGST)を還付
  2. 固定資本投資額の12%を上限とする利子補助金の付与
  3. 資本財投入で支払われたSGSTの100%を20年間で払い戻し
  4. プロジェクト用地の購入、またはリースのためにGJ州政府に支払った印紙税と登録料の100%払い戻し
  5. 10年間のEPF払い戻し
  6. 5年間の電力税の免除

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2022年11月22日)
最終段落
(誤)3.資本財投入で支払われたSGSTの100%の20年間払い戻し
(正)3.資本財投入で支払われたSGSTの100%を20年間で払い戻し
(誤)6.5年間の電気代免除
(正)6.5年間の電力税の免除
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所長
古川 毅彦(ふるかわ たけひこ)
1991年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ北九州、大阪本部、ニューデリー事務所、ジャカルタ事務所、ムンバイ事務所長などを経て、2020年12月からジェトロ・アーメダバード事務所長。