韓国の2021年の自動車は輸出が好調

2022年3月29日

韓国自動車産業協会(KAMA)が発表した自動車産業統計によると、2021年の国内生産台数は前年比1.3%減、国内販売台数(輸入車を除く)は10.6%減だった。一方、輸出は8.2%増と好調で、エコカーの輸出も増加した。

国内生産・国内販売ともに減少、輸出は増加

国内生産は、自動車向け半導体不足の影響で生産に支障が出たことから、前年比1.3%減の346万2,564台だった(表1参照)。生産はやや減少したものの、中国、米国、日本、インドに次ぎ、自動車生産台数は世界第5位の座を維持した。

表1:メーカー別・部門別国内生産台数の推移

メーカー別(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
現代 1,786,131 1,618,411 1,620,296 0.1
起亜 1,450,102 1,307,265 1,398,966 7.0
韓国GM 409,830 354,800 223,623 △ 37.0
ルノーサムスン 164,974 114,630 128,328 11.9
双龍 132,994 106,840 82,009 △ 23.2
その他 6,583 4,828 9,342 93.5
合計 3,950,614 3,506,774 3,462,564 △ 1.3
部門別(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
乗用車 3,612,587 3,211,706 3,162,915 △ 1.5
トラック 231,253 206,823 222,118 7.4
バス 88,882 72,305 61,722 △ 14.6
特装車 17,892 15,940 15,809 △ 0.8
合計 3,950,614 3,506,774 3,462,564 △ 1.3

出所:韓国自動車産業協会(KAMA)

国内販売台数(輸入車を除く)は、2020年に過去最高の販売台数を記録したことの反動と、生産減少が販売に影響を及ぼしたことにより、主要メーカーの販売台数は軒並み減少し、前年比10.6%減の144万786台だった(表2参照)。

表2:メーカー別・部門別国内販売台数の推移

メーカー別(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
現代 741,842 787,854 726,838 △ 7.7
起亜 520,205 552,400 535,016 △ 3.1
ルノーサムスン 86,859 95,939 61,096 △ 36.3
双龍 107,789 87,889 56,363 △ 35.9
韓国GM 76,471 82,955 54,292 △ 34.6
その他 5,660 4,181 7,181 71.8
合計 1,538,826 1,611,218 1,440,786 △ 10.6
部門別(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
乗用車 1,294,139 1,374,715 1,212,216 △ 11.8
トラック 170,531 171,546 170,716 △ 0.5
バス 57,390 48,963 41,901 △ 14.4
特装車 16,766 15,994 15,953 △ 0.3
合計 1,538,826 1,611,218 1,440,786 △ 10.6

注:輸入車は含まない。
出所:韓国自動車産業協会(KAMA)

輸出台数は、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による海外での需要減少を受けて大きく減少したが、2021年は小幅に回復し、前年比8.2%増の204万577台となった。地域別にみると、北米向けが7.1%減の93万876台と減少したものの、輸出台数全体の約半数を占めた。一方、欧州向けは30.6%増の58万157台と好調だった(表3参照)。

表3:メーカー別・地域別輸出の推移

メーカー別(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
現代 1,042,732 838,838 917,984 9.4
起亜 900,704 721,625 838,826 16.2
韓国GM 340,774 285,490 182,748 △ 36.0
ルノーサムスン 90,566 20,227 71,673 254.3
双龍 25,010 19,436 27,743 42.7
その他 1,596 1,067 1,603 50.2
合計 2,401,382 1,886,683 2,040,577 8.2
部門別(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
北米 1,086,854 1,002,122 930,876 △ 7.1
欧州 653,285 444,162 580,157 30.6
中東 245,157 196,976 186,063 △ 5.5
大洋州 172,283 131,483 160,250 21.9
中南米 130,534 62,630 107,641 71.9
アフリカ 58,973 25,334 47,077 85.8
アジア 54,296 23,976 28,513 18.9
合計 2,401,382 1,886,683 2,040,577 8.2

出所:韓国自動車産業協会(KAMA)

海外生産は、各国・地域の工場での全面もしくは一部稼働停止などにより生産が大幅に減少した2020年に比べ、5.5%増の328万2,305台だった。ただし、新型コロナウイルス拡大拡大前の2019年の水準までは回復していない(表4参照)。

韓国2大メーカーの海外生産台数をみると、現代自動車は、中国を除くすべての国・地域で増加し、前年比6.0%増の212万3,990台だった。起亜も同じく、中国を除くすべての国・地域で増加し、前年比4.5%増の115万8,315台だった。

表4:2大メーカーの海外生産台数の推移(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・国 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
現代 2,623,976 2,003,157 2,123,990 6.0
階層レベル2の項目インド 682,100 521,282 636,000 22.0
階層レベル2の項目中国 663,491 465,388 337,900 △ 27.4
階層レベル2の項目米国 336,000 268,700 291,500 8.5
階層レベル2の項目チェコ 313,347 240,977 275,000 14.1
階層レベル2の項目ロシア 245,000 219,100 234,150 6.9
階層レベル2の項目ブラジル 206,038 150,610 187,300 24.4
階層レベル2の項目トルコ 178,000 137,100 162,140 18.3
起亜 1,259,349 1,108,738 1,158,315 4.5
階層レベル2の項目スロバキア 344,000 268,200 307,600 14.7
階層レベル2の項目中国 293,100 232,000 150,970 △ 34.9
階層レベル2の項目米国 270,700 224,200 255,100 13.8
階層レベル2の項目メキシコ 286,600 206,800 219,400 6.1
階層レベル2の項目インド 64,949 177,538 225,245 26.9
合計 3,883,325 3,111,895 3,282,305 5.5

他方、韓国輸入自動車協会(KAIDA)によると、2021年の輸入乗用車販売台数(同協会会員企業の登録ベース)は、前年比0.5%増の27万6,146台だった(表5参照)。輸入車市場におけるシェアは、欧州ブランドが81.4%(22万4,839台)、米国ブランドが11.1%(3万759台)、日本ブランドが7.4%(2万548台)だった。日本ブランドの国内販売台数は、2018年に4万5,253台と過去最高を記録して以降、減少傾向(2019年:3万6,661台、2020年:2万564台、2021年:2万548台)にある。このような状況を背景に、2020年12月末に日産およびインフィニティが韓国市場から撤退している。

表5:メーカー・ブランド別輸入乗用車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
メルセデス・ベンツ(ドイツ) 78,133 76,879 76,152 △ 0.9
BMW(ドイツ) 44,191 58,393 65,669 12.5
アウディ(ドイツ) 11,930 25,513 25,615 0.4
ボルボ(スウェーデン) 10,570 12,798 15,053 17.6
フォルクスワーゲン(ドイツ) 8,510 17,615 14,364 △ 18.5
MINI(英国) 10,222 11,245 11,148 △ 0.9
クライスラー(米国) 10,251 8,753 10,449 19.4
レクサス(日本) 12,241 8,911 9,752 9.4
シボレー(米国) 3,270 12,455 8,975 △ 27.9
ポルシェ(ドイツ) 4,204 7,779 8,431 8.4
フォード(米国) 8,737 7,069 6,721 △ 4.9
トヨタ(日本) 10,611 6,154 6,441 4.7
ホンダ(日本) 8,760 3,056 4,355 42.5
リンカーン(米国) 3,378 3,627 7.4
ランドローバー(英国) 7,713 4,801 3,220 △ 32.9
プジョー(フランス) 3,505 2,611 2,320 △ 11.1
キャデラック(米国) 1,714 1,499 987 △ 34.2
マセラティ(イタリア) 1,260 932 842 △ 9.7
シトロエン(フランス) 962 930 603 △ 35.2
ベントレー(英国) 129 296 506 70.9
ランボルギーニ(イタリア) 173 303 353 16.5
ジャガー(英国) 2,484 875 338 △ 61.4
ロールスロイス(英国) 161 171 225 31.6
日産(日本) 3,049 1,865
インフィニティ(日本) 2,000 578
合計 244,780 274,859 276,146 0.5

注1:韓国輸入自動車協会(KAIDA)会員企業の登録ベース。
注2:シボレーは2019年11月から集計。
出所:韓国輸入自動車協会(KAIDA)

エコカーの国内販売、輸出が好調

KAMAによると、国内メーカーの2021年の低公害車(エコカー)の国内販売台数は前年比40.3%増の23万1,526台だった。また、KAIDAによると、輸入された低公害車の国内販売は99.6%増の9万9,421台だった(表6参照)。国産車では電気自動車(EV)、輸入車ではハイブリッド車(HEV)が大きく増加した。

プラグインハイブリッド車(PHEV)については、2021年1月から500万ウォン(約47万5,000円、1ウォン=約0.095円)の政府補助金支給制度が廃止された。これにより、国内メーカーがPHEVの国内生産および国内販売に消極的な姿勢をとる一方、輸入車販売は増加傾向が続いている。これについて国内メディアは、輸入車は比較的高価であることから、輸入車の購入者にとって補助金廃止の影響は限定的である、と分析している。

表6:低公害車の種類別国内販売

国内生産車 (単位:台、%)(△はマイナス値)
車種 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
ハイブリッド車(HEV) 75,966 127,996 149,489 16.8
電気自動車(EV) 29,807 31,016 73,535 137.1
プラグインハイブリッド車(PHEV) 376 235 0 △ 100.0
燃料電池自動車(FCEV) 4,194 5,786 8,502 46.9
合計 110,343 165,033 231,526 40.3
輸入車 (単位:台、%)(△はマイナス値)
車種 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
ハイブリッド車(HEV) 22,844 35,988 73,380 103.9
電気自動車(EV) 2,369 3,357 6,340 88.9
プラグインハイブリッド車(PHEV) 4,879 10,467 19,701 88.2
合計 30,092 49,812 99,421 99.6

出所:韓国自動車産業協会(KAMA)、韓国輸入自動車協会(KAIDA)

他方、2021年の低公害車の輸出台数は前年比49.2%増の40万4,897台だった(表7参照)。HEVの輸出が特に大きく増加し、輸出台数の9割以上が欧州および北米地域に輸出された。

表7:低公害車の種類別輸出 (単位:台、%)
車種 2019年
台数
2020年
台数
2021年
台数 前年比
ハイブリッド車(HEV) 150,615 124,503 211,807 70.1
電気自動車(EV) 76,099 119,718 154,014 28.6
プラグインハイブリッド車(PHEV) 31,435 26,065 37,957 45.6
燃料電池自動車(FCEV) 788 1,041 1,119 7.5
合計 258,937 271,327 404,897 49.2

出所:韓国自動車産業協会(KAMA)

2022年は、生産・輸出が増加する見通し

KAMAは2022年の自動車産業について、世界的な需要回復による輸出増加が下支えし、生産台数は2021年に比べ増加すると見込む。また、輸出は、EUおよび米国などの主要先進国の環境規制強化、自動車向け半導体の供給不足などの懸念材料があるものの、世界的な需要回復により前年に比べ増加すると見込んでいる。

一方、国内販売については、国産車は、自動車に課される個別消費税率の引き下げ(5%から3.5%に引き下げ)が2022年6月で終了する点(注)、各社の新モデル発売が低調である点などから、2021年に比べやや減少すると見込む。輸入車は、販売戦略の強化、新モデルの投入、エコカー販売の拡大などにより、増加すると見込む。


注:
個別消費税率の引き下げの期限は、当初2021年12月までだったが、2022年6月まで延長された。
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所
柳忠鉉(ユ・チュンヒョン)
2012年、ジェトロ・ソウル事務所入所。経済調査チームにて調査を担当。