自動車生産・販売台数ともに前年比減、輸出額は増加(トルコ)

2022年3月4日

トルコの2021年の自動車産業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による半導体の供給不足や原料価格の上昇などを受け、生産台数は前年比1.7%減となった。国内の自動車販売台数(小売り)は全体で4.6%減だった。輸出台数は、2020年の前年比26.7%減から増加に転じたものの、同2.6%増の限定的な回復にとどまった。他方、自動車・同部品の輸出額は前年比14.9%増で、世界的なサプライチェーンの混乱とそれに伴う再編の中、トルコからの調達が増える傾向がみられた。

自動車生産は1.7%減、自動車輸出額は9.5%増

自動車工業協会(OSD)によると、2021年の自動車生産台数は前年比1.7%減の127万6,140台だった。主な減少要因は、国内自動車生産の65.9%(2020年)を占めていた乗用車の生産台数が前年比8.4%減に落ち込んだことにある。これにより、2021年の乗用車生産の比率は61.3%まで縮小した(表1参照)。

報道からジェトロが集計したところによると、2021年は、乗用車メーカーのオヤク・ルノーが約80日間、トファシュ(フィアット)は約15日間、商用車のフォード・オトサンは約50日間、生産を一時停止しており、半導体不足による部品調達問題の影響を強く受けたようだ。

表1:車種別生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 構成比 前年比
乗用車 1,142,906 1,026,461 982,642 855,043 782,835 61.3 △ 8.4
商用車 552,825 523,689 478,602 442,811 493,305 38.7 11.4
階層レベル2の項目大型トラック 19,386 22,883 17,604 21,169 34,652 2.7 63.7
階層レベル2の項目小型トラック 4,116 2,654 1,399 2,081 3,922 0.3 88.5
階層レベル2の項目ピックアップトラック 462,389 429,361 386,245 358,182 400,078 31.4 11.7
階層レベル2の項目大型バス 8,166 8,541 9,199 7,896 5,567 0.4 △ 29.5
階層レベル2の項目小型バス 55,036 56,934 61,629 51,464 46,870 3.7 △ 8.9
階層レベル2の項目中型バス 3,732 3,316 2,526 2,043 2,216 0.2 8.5
自動車計 1,695,731 1,550,150 1,461,244 1,297,854 1,276,140 100.0 △ 1.7

出所:自動車工業協会(OSD)

一方、自動車工業協会(OSD)によると、自動車の輸出額は前年比9.5%増の180億5,000万ドル、自動車関連全体(完成車と部品の合計)の輸出額は、前年比15.2%増の298億7,850万ドルとなり、2020年の下落から回復を見せた。特に自動車部品は、サプライチェーンの多様化と再編の中で欧州がトルコからの調達に力を入れる姿勢がみられ、輸出額は前年比25.2%増の118億2,850万ドルと好調で、新型コロナ禍前の2019年をも上回った(表2参照)。

トルコ自動車・自動車部品工業会(TAYSAD)のアルベルト・サイダム会長は「新型コロナウイルスの影響で、欧州の自動車企業は調達先を中国など東アジアからトルコに変更した。トルコは調達先として大きなチャンスをつかんでおり、この機会を逃さないようにするべきだ。2022年の自動車部品の輸出目標額は、前年比19%増の140億ドルとしている」と述べている(2022年1月10日付「デュンヤ」紙)。

表2:自動車関連(部品を含む)の輸出額(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 前年比 構成比
自動車合計 19,257.1 21,350.3 20,613.8 16,491.1 18,050.0 9.5 60.4
階層レベル2の項目乗用車 11,790.6 12,421.0 11,864.8 9,312.1 9,272.1 △ 0.4 51.4
階層レベル2の項目大型・軽商用車 4,849.0 5,376.4 4,945.4 4,254.5 5,420.3 27.4 30.0
階層レベル2の項目大型バス 1,308.2 1,503.2 1,759.4 1,300.7 1,015.4 △ 21.9 5.6
階層レベル2の項目中・小型バス 217.7 215.5 222.9 188.4 193.9 2.9 1.1
階層レベル2の項目その他の自動車 1,091.5 1,834.3 1,821.2 1,435.0 2,148.3 49.7 11.9
自動車部品合計 9,835.9 10,881.6 10,616.4 9,451.3 11,828.5 25.2 39.6
階層レベル2の項目スペアパーツ 7,785.4 8,406.4 8,071.3 7,251.5 9,188.8 26.7 77.7
階層レベル2の項目タイヤなどゴム製品 1,131.8 1,353.9 1,479.1 1,248.0 1,630.3 30.6 13.8
階層レベル2の項目エンジン 486.4 582.0 518.1 461.4 296.6 △ 35.7 2.5
階層レベル2の項目バッテリー 295.8 388.1 397.3 353.0 509.4 44.3 4.3
階層レベル2の項目セーフティーガラス 136.5 151.1 150.6 140.3 203.1 44.8 1.7
合計 29,093.0 28,986.5 31,230.1 25,941.9 29,878.5 15.2 100.0

出所:自動車工業協会(OSD)

トルコ輸出業者会議(TIM)(トルコ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年のトルコの輸出総額は前年比32.9%増の2,253億6,768万ドルで、そのうち13.0%を占める自動車関連(部品を含む)の輸出額は前年比14.9%増の293億4,279万ドルだった。国・地域別でみると、主な輸出先のドイツ、フランス、英国などの国々への輸出額が10%超の増加を見せているほか、ロシアへの輸出が前年比50.9%増と好調だった(表3参照)。

表3:自動車・同部品の国別輸出額 (単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
順位 国・地域名 2020年 2021年 構成比 前年比 寄与度
EU 17,039,689.32 18,966,187.09 64.6 11.3 7.5
1 ドイツ 3,569,893.98 4,167,666.94 14.2 16.7 2.3
2 フランス 2,962,942.03 3,371,418.74 11.5 13.8 1.6
3 英国 2,223,794.25 3,093,557.55 10.5 39.1 3.4
4 イタリア 2,136,092.90 2,448,548.02 8.3 14.6 1.2
5 スペイン 1,401,921.98 1,606,540.69 5.5 14.6 0.8
6 米国 950,996.14 1,227,428.79 4.2 29.1 1.1
7 ポーランド 966,459.19 1,173,313.49 4.0 21.4 0.8
8 スロベニア 1,170,066.75 1,171,994.58 4.0 0.2 0.0
9 ベルギー 1,101,076.45 1,123,515.57 3.8 2.0 0.1
10 ロシア 467,739.35 705,971.47 2.4 50.9 0.9
11 エジプト 501,869.95 613,808.67 2.1 22.3 0.4
12 ルーマニア 696,138.54 598,046.81 2.0 △ 14.1 △ 0.4
13 イスラエル 704,292.02 586,005.81 2.0 △ 16.8 △ 0.5
14 モロッコ 459,764.79 547,111.02 1.9 19.0 0.3
15 オランダ 560,234.13 512,550.05 1.7 △ 8.5 △ 0.2
16 ハンガリー 353,209.15 387,146.88 1.3 9.6 0.1
17 スウェーデン 366,933.14 362,586.85 1.2 △ 1.2 △ 0.0
18 デンマーク 240,438.70 262,323.65 0.9 9.1 0.1
19 ポルトガル 222,660.26 260,374.79 0.9 16.9 0.1
20 ブルガリア 222,464.93 255,148.26 0.9 14.7 0.1
51 日本 40,709.26 46,379.40 0.2 13.9 0.0
総額 25,544,947.36 29,342,794.83 100.0 14.9 14.9
トルコ輸出総額 169,637,755.31 225,367,676.12 13.0 32.9 2.2

完成車の輸出台数をメーカー別でみると、オヤク・ルノーが11.3%減、トファシュ(フィアット)が4.6%減と、半導体不足による生産停止の影響が輸出でもみられた。ホンダは2021年9月末にトルコの完成車工場での生産を終了したため、前年比の下落幅が大きかった。全てのメーカーの合計では、前年比2.6%増の95万4,043台だった(表4参照)。

表4:完成車メーカー別輸出台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2018年 2019年 2020年 伸び率 2021年 伸び率
フォード・オトサン 328,502 333,734 254,003 △ 23.9 287,609 13.2
オヤク・ルノー 280,411 295,275 211,954 △ 28.2 187,923 △ 11.3
トヨタ 237,451 227,019 182,089 △ 19.8 187,907 3.2
現代・アッサン 190,347 169,803 128,003 △ 24.6 138,730 8.4
トファシュ・フィアット 243,796 194,107 117,886 △ 39.3 112,465 △ 4.6
テュルク・トラクター 14,502 15,207 12,553 △ 17.5 16,176 28.9
メルセデスベンツ 16,309 16,324 11,184 △ 31.5 13,910 24.4
ホンダ 13,699 7,528 6,421 △ 14.7 2,305 △ 64.1
カルサン 3,419 2,713 755 △ 72.2 2,135 182.8
マン 2,425 2,892 2,628 △ 9.1 1,573 △ 40.1
アナドル・いすゞオート 964 1,433 510 △ 64.4 1,100 115.7
ハッタト・トラクター 621 637 942 47.9 862 △ 8.5
オトカル 901 1,156 862 △ 25.4 749 △ 13.1
合計 1,333,992 1,268,430 930,033 △ 26.7 954,043 2.6

出所:自動車工業協会(OSD)

自動車販売台数は4.6%減、日本企業は好調

トルコ自動車販売協会(ODD)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(857.04KB)によると、2021年の国内自動車販売台数(小売り)は全体で4.6%減の73万7,350台で、うち乗用車が56万1,853台(前年比7.9%減)、軽商用車が17万5,497台(前年比7.9%増)だった。2021年の販売台数は、過去10年間の平均台数の80万4,398台(乗用車60万9,076台)を下回った。

乗用車販売を車種別にみると、セダンタイプが39.6%(22万2,632台)のシェアを占め、例年通り主流になっている。スポーツ用多目的車(SUV)は34.6%(19万4,506台)のシェアで、前年の29.8%(18万1,554台)を上回り、販売台数、シェアともに拡大した唯一の車種となった。ハッチバックのシェアは23.8%(13万3,670台)で、前年の23.2%(14万1,271台)から微増した。 軽商用車の販売シェアでは、バンが78.6%(13万8,020台)で、例年どおり大半を占めた。軽トラックが10.3%(1万8,067台)、ミニバスが4.8%(8,347台)、ピックアップが6.3%(1万1,063台)だった。

燃料タイプ別にみると、例年と同じくガソリン車が構成比66.5%で大半を占め、次いでディーゼル車が19.7%、LPG(液化石油ガス)車が4.5%を占めた。ハイブリッド車の販売台数は前年から2.1倍の4万9,493台で、シェアが8.8%に拡大した。電気自動車(EV)も3.4倍となり、全体の0.5%(2,846台)を占めた。

メーカー別にみると、フィアットが前年比11.7%減となったものの、12万1,254台で2021年も首位を維持した。ルノーが19.9%減(8万1,280台)で2位、フォルクスワーゲンが5.3%増(6万8,186台)で3位だった。日本企業では、トヨタが30.2%増(5万2.588台、5位)、ホンダが26.7%増(2万8,150台、10位)、日産が6.3%増(1万4,096台、16位)、スズキが28.5%増(3,826台、21位)、いすゞが2倍(1,107台、26位)、スバルが18.2%増(796台、29位)、レクサスが62.2%増(232台、33位)と、前年比で好調だった。マツダは1.9%減(153台、35位)だった(表5参照)。

表5:販売台数上位15社(2021年、総計ベース)

乗用車(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 伸び率
1 フィアット 71,992 1,089 73,081 13.0 △ 20.9
2 ルノー 66,276 9,285 75,561 13.4 △ 23.6
3 フォルクスワーゲン 0 53,523 53,523 9.5 1.5
4 フォード 2,326 11,726 14,052 2.5 △ 49.1
5 トヨタ 43,624 2,275 45,899 8.2 17.8
6 プジョー 0 28,998 28,998 5.2 △ 20.7
7 ヒュンダイ 22,147 14,788 36,935 6.6 34.1
8 ダチア 0 27,672 27,672 4.9 6.8
9 シトロエン 0 22,551 22,551 4.0 1.3
10 ホンダ 19,592 8,558 28,150 5.0 26.7
11 オペル 0 20,754 20,754 3.7 △ 33.5
12 シュコダ 0 25,228 25,228 4.5 4.4
13 メルセデスベンツ 0 15,398 15,398 2.7 △ 1.4
14 キア 0 15,250 15,250 2.7 12.6
15 BMW 0 15,555 15,555 2.8 9.0
合計(その他を含む) 225,957 335,896 561,853 100.0 △ 7.9
軽商用車(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 伸び率
1 フィアット 45,670 2,503 48,173 27.4 7.1
2 ルノー 0 5,719 5,719 3.3 117.1
3 フォルクスワーゲン 0 14,663 14,663 8.4 21.8
4 フォード 51,427 1,790 53,217 30.3 △ 18.0
5 トヨタ 0 6,689 6,689 3.8 372.1
6 プジョー 0 9,970 9,970 5.7 40.7
7 ヒュンダイ 0 1,595 1,595 0.9 61.1
8 ダチア 0 7,194 7,194 4.1 47.1
9 シトロエン 0 6,220 6,220 3.5 19.0
10 ホンダ 0 0 0 0 0
11 オペル 0 5,167 5,167 3 0
12 シュコダ 0 0 0 0 0
13 メルセデスベンツ 0 6,100 6,100 3.5 17.9
14 キア 0 1,333 1,333 1 0
15 BMW 0 0 0 0 0
合計(その他を含む) 97,670 77,827 175,497 100.0 7.9
総合(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 伸び率
1 フィアット 117,662 3,592 121,254 16.4 △ 11.7
2 ルノー 66,276 15,004 81,280 11.0 △ 19.9
3 フォルクスワーゲン 0 68,186 68,186 9.2 5.3
4 フォード 53,753 13,516 67,269 9.1 △ 27.3
5 トヨタ 43,624 8,964 52,588 7.1 30.2
6 プジョー 0 38,968 38,968 5.3 △ 10.8
7 ヒュンダイ 22,147 16,383 38,530 5.2 35.0
8 ダチア 0 34,866 34,866 4.7 13.2
9 シトロエン 0 28,771 28,771 3.9 4.7
10 ホンダ 19,592 8,558 28,150 3.8 26.7
11 オペル 0 25,921 25,921 3.5 △ 24.4
12 シュコダ 0 25,228 25,228 3.4 4.4
13 メルセデスベンツ 0 21,498 21,498 2.9 3.4
14 キア 0 16,583 16,583 2.2 7.4
15 BMW 0 15,555 15,555 2.1 9.0
合計(その他を含む) 323,627 413,723 737,350 100.0 △ 4.6

注:順位は総合の販売台数による。
出所:トルコ自動車販売協会(ODD)

自動車工業協会(OSD)によると、2021年の国内自動車販売(出荷)台数は前年比2.9%減の77万2,722台だった。国内生産車は6.0%減、輸入車は0.3%減となった(表6参照)。国内生産の多いオヤク・ルノー、トファシュ(フィアット)、フォード・オトサンの生産の一時停止による影響がみられた。このため、国内販売での輸入車比率も2020年の53.6%から55.1%に上昇した。2021年の自動車登録台数(2,524万9,119台)のうち、54.3%(1,370万6,065台)が乗用車となっている(表7参照)。

表6:自動車販売(出荷)台数(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
項目 2018年 2019年 2020年 2021年 前年比
国内販売 641,541 491,909 796,150 772,722 △ 2.9
階層レベル2の項目国内生産車 244,275 214,839 369,172 347,064 △ 6.0
階層レベル2の項目輸入車 397,266 277,070 427,028 425,658 △ 0.3
階層レベル2の項目国内販売における輸入車比率 61.9% 56.3% 53.6% 55.1%

出所:自動車工業協会(OSD)

表7:登録自動車数、 2017-2021(遡及台数)(単位:台)
合計 乗用車 小型バス バス ピックアップ トラック 自動二輪 その他 トラクター
2017年 22,218,945 12,035,978 478,618 221,885 3,642,625 838,718 3,102,800 60,099 1,838,222
2018年 22,865,921 12,398,190 487,527 218,523 3,755,580 845,462 3,211,328 63,359 1,885,952
2019年 23,156,975 12,503,049 493,373 213,358 3,796,919 844,481 3,331,326 65,470 1,908,999
2020年 24,144,857 13,099,041 493,395 212,407 3,938,732 859,670 3,512,576 70,309 1,958,727
2021年 25,249,119 13,706,065 484,806 208,882 4,115,205 886,303 3,744,370 78,482 2,025,006

出所:トルコ統計機構(TUIK)

欧州市場の販売ランキングで6位維持、国内市場では価格や金利の上昇が問題

トルコの自動車販売を欧州市場と比較すると、2021年は2020年と同じく6位だった(表8参照)。トルコは2019年に9位にランクダウンしたが、2014年以降のそれ以外の年は、欧州市場のランキングで6位を維持している。

表8:欧州市場とトルコ市場の2021年の自動車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2021年 2020年 前年比
乗用車販売台数 商用車販売台数 合計 合計
EU + EFTA + 英国 11,774,885 2,358,771 14,133,656 14,084,802 0.3
ドイツ 2,622,132 351,187 2,973,319 3,266,749 △ 9.0
フランス 1,659,003 483,272 2,142,275 2,100,020 2.0
英国 1,647,181 401,849 2,049,030 1,968,559 4.1
イタリア 1,457,952 211,395 1,669,347 1,564,767 6.7
スペイン 859,477 174,582 1,034,059 1,030,746 0.3
トルコ 561,853 210,869 772,722 796,150 △ 2.9
ポーランド 446,647 107,966 554,613 510,153 8.7
ベルギー 383,123 80,686 463,809 511,106 △ 9.3
オランダ 322,831 80,525 403,356 426,996 △ 5.5
スウェーデン 301,006 42,876 343,882 330,215 4.1
オーストリア 239,803 66,373 306,176 291,833 4.9
スイス 238,481 33,586 272,067 269,205 1.1
チェコ 206,876 29,345 236,221 228,834 3.2
デンマーク 185,324 36,613 221,937 233,211 △ 4.8
ノルウェー 176,276 41,188 217,464 180,885 20.2
ポルトガル 146,637 33,640 180,277 176,992 1.9
ハンガリー 121,920 28,467 150,387 153,968 △ 2.3
ルーマニア 121,208 22,772 143,980 145,015 △ 0.7
アイルランド 104,669 31,457 136,126 112,123 21.4
フィンランド 98,481 16,811 115,292 112,974 2.1
ギリシャ 100,916 11,448 112,364 88,710 26.7
スロバキア 75,700 11,649 87,349 84,909 2.9
スロベニア 53,988 11,710 65,698 63,154 4.0
クロアチア 44,915 9,361 54,276 43,803 23.9
ルクセンブルク 44,372 5,781 50,153 50,814 △ 1.3
リトアニア 31,371 11,476 42,847 47,594 △ 10.0
ブルガリア 24,537 9,935 34,472 29,663 16.2
エストニア 22,336 5,183 27,519 22,756 20.9
ラトビア 14,344 4,131 18,475 16,433 12.4
アイスランド 12,755 1,466 14,221 10,608 34.1
キプロス 10,624 2,041 12,665 12,007 5.5

出所:欧州自動車工業会(ACEA)、トルコ自動車工業協会(OSD)

2021年のトルコの自動車市場は、半導体供給不足による影響で生産が滞り、新車の需給バランスが崩れ、中古車も含めた自動車全体の価格が上昇した。トルコでは、自動車に対する特別消費税(SCT)と、その税率設定の基準となるベース価格(税抜き価格基準)、自動車ローンの金利水準が販売に直接影響する。自動車の特別消費税率設定の基準となるベース価格(税抜き価格基準)は外貨ベースで決定され、45%・50%・80%のカテゴリーで課税されるが、2021年は通貨トルコ・リラが年間で44%も下落した影響で、多くの自動車が80%の課税対象となり、これが半導体不足による自動車生産減と重なった結果、販売価格の高騰につながった。なお、トルコ政府は2021年1月13日、為替下落に起因する特別消費税の問題を解決するために、自動車の特別消費税の税率設定の基準となるベース価格(税抜き価格基準)を変更し、従来の45%・50%・80%の特別消費税率に、新たに60%と70%の税率カテゴリーを追加した(2022年1月17日付ビジネス短信参照)。

また、自動車ローンの金利は、2021年初は年率15.4%だったが、同年末には26.2%まで上昇した。さらに、トルコ銀行調整監視機構(BDDK)は7月1日、自動車ローンの返済期限の満期を2~5年から1~4年へ12カ月間短縮させた。これらも販売に影響したと考えられる。

EV生産、充電ステーションの設置の加速に注目

2021年の注目ポイントとして、EVの販売は3.4倍、ハイブリッド車は2.1倍になり、販売全体におけるシェアが合わせて9.3%に達したことが挙げられる。欧州市場の37.6%に比べるとまだ低い比率ではあるが、今後の動きが注視されている。

トルコ初の国民車生産に向けて2017年に設立されたTOGGは、ブルサ県ゲムリキ市に工場を設立し、CセグメントのEVを製造するとしている。バッテリーに関しては、中国の孚能科技(ファラシス・エナジー)との合弁会社シロ(SiRo)を設立し、TOGGの工場敷地内で生産する。また、充電ステーションの普及に向け、関連会社TOGGスマート・急速充電ソリューションズ(TOGG Akilli ve Hizli Sarj Cozumleri A.S.)を設立した。TOGGのゲムリキ工場は2022年7月に試作品製造を始め、2022年末に量産に入る予定となっている。

フォードは、電気商用車として、商用車ブランドのトランジットカスタム(Transit Custom)のEVバージョン生産に向け、フォード・オトサンのコジャエリ工場に20億ユーロを投資し、2023年前半に生産を開始する準備を進めている。

なお、カルサン、アナドル・いすゞ、テムサ、オトカルの4社は既にトルコ国内でEVバスを生産している。

全国のEV向け充電ステーションの数は2021年末時点で全国3,457件、うちイスタンブールが1,265件(36.6%)、アンカラが320件(9.3%)、イズミルが235件(6.8%)、アンタリアが162件(4.7%)と大都市に集中している。主にゾルル・エナジー(ゾルル財閥)傘下のゾルル・エナジー・ソリューションズ(Zorlu Energy Solutions)、エネルジサ(サバンジュ財閥)傘下のエシャージ(Esarj)が投資しており、住宅やガソリンスタンド、ホテル、ショッピングモールの駐車場などに設置されている。

トルコ電気自動車ハイブリッド車協会(TEHAD)のベルカン・バイラム会長によると、全国の全県に充電ステーションがあり、うち15%が急速充電のタイプとなっている。バイラム会長は「充電ステーション設置に十分な投資インセンティブが提供されれば、その数は増えるだろう」と述べている。

また、米国のEVメーカーのテスラは公式ウェブサイトで、トルコ国内12カ所にテスラ・スーパーチャージャーを設立すると発表した。報道によると、テスラは2022年にトルコ市場で4つのモデルのEVの販売を開始するという。

執筆者紹介
ジェトロ・イスタンブール事務所 国際貿易専門家
エライ・バシュ
2009年6月にトルコのチャナッカレ・オンセキズ・マルト大学教育学部日本語教育学科を卒業。その後、大阪大学に留学し、2014年3月に言語文化研究科言語文化専攻博士前期課程を修了。2015年3月からジェトロ・イスタンブール事務所で調査担当として勤務。