日本企業とのビジネスに積極的な深センのスタートアップ企業(中国)

2021年7月30日

「ハードウエアのシリコンバレー」と呼ばれた深セン。ここ数年は第5世代移動通信システム(5G)、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などの発展を背景に業界を超えた協業やDX(Digital Transformation)が一層進み、ハードウエアにとどまらない新たな企業やビジネスモデルが誕生している。大きく変わる今の深センにおいて、1.モビリティ・蓄電池、2.スマート製造・リテールテック、3.新機能素材・デバイス、4.デジタルガジェット・IoTデバイス、5.ヘルステック・バイオテクノロジー、の5分野から、日本企業との連携やビジネスに積極的な26社のスタートアップ企業を紹介する(順不同)。

1. モビリティ・蓄電池

AutoX(深セン裏動智駕技術有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2016年設立の自動運転技術を開発する企業。米国カリフォルニア州政府から公道自動運転許可を取得した初の中国系スタートアップ企業でもある。創業者の肖健雄氏は香港大学卒業後、2013年にMIT(マサチューセッツ工科大学)でコンピュータサイエンスのPh.D.を取得。プリンストン大学准教授を経て2016年にAutoXを創業。深センとシリコンバレーに本社を持つ。2019年6月、ロボタクシーサービス「XTaxi」をカリフォルニア州で開始した。2020年1月には、ラスベガスで開催されたハイテク技術見本市「CES2021」でFCA(現ステランティス)との提携を発表。中国初となる完全無人運転のロボタクシーをリリースし、深センで運用が進んでいる。2021年4月には、本田技研工業の中国法人である本田技研科技との提携を発表、最新の「AutoX ジェネレーション5 自動運転システム」を搭載したホンダ「アコード」と「インスパイア」の自動運転テストを開始した。
Streamax(深セン市鋭明技術股份有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2002年に深センで設立した、AIをコア技術とした商用車向け安全運転、事故防止システムの開発・製造、技術ソリューションを提供する上場企業。AI搭載のドライブレコーダー、車載監視カメラなど安全運転、事故防止システムやソリューションの構築に取り組む。国内外の専利(特許、実用新案、意匠)出願件数は192件。うち、特許は39件ある(2021年6月時点)。主な製品は、商用車向けのドライブレコーダー、車載監視カメラのほか、管理システムソフトウエアなど。100カ国を超える販売ネットワークを持つ。
Ecoflow(深セン市正浩創新科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2017年に元DJI電池研究開発部のリーダーが創業した蓄電池関連企業。車中泊やアウトドア、非常時や災害時などにバックアップ電源として利用可能な大容量ポータブル電源(288Wh~1万800Whまで対応可能)や蓄電システムの研究開発・販売を行っている。製品の特長は、(1)持ち運べるポータブルサイズで最大10,800Wh(2021年6月時点)という特大容量のバッテリーを搭載、(2)充電スピードが業界トップクラスの最大4,200W、(3)太陽光パネルや風力発電に接続し充電(蓄電)できることである。
LeiShen Intelligent System(深セン鐳神智能システム有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に深センで設立した、LiDAR(レーザー光を利用したセンサー)およびトータルソリューションを提供する企業。高性能かつ安定したLiDARの環境認知技術を持ち、自動運転、スマートモビリティ、鉄道、ロボット、物流、マッピング、セキュリティ、港湾、工業自動化など幅広い分野でサービスを展開している。世界で唯一、飛行時間(ToF)方式、位相シフト方式、三角測量方式、周波数変調連続波(FMCW)方式といった4つの測定原理を同時にマスターし、かつ中国初の車載LiDARとなる32/64/128チャンネルの3モデルで構成されるハイブリッドソリッドステート式のLiDAR(注1)「CHシリーズ」を量産した企業である。1550nm(ナノメートル、1nm=10億分の1メートル)ファイバーレーザー、レーザーコアコンポーネント、自社開発チップ、車載ライダー生産能力、機能安全性、アンチジャミング技術、およびディープラーニングによるLiDARセンサーなどの分野でノウハウを積み重ね、取引先は全世界30カ国に及んでいる。

2. スマート製造、リテールテック(産業用ロボット、品質検査、生産効率化など)

Dorabot(深セン藍胖子機器人有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国大手物流会社UPSの経営幹部および10年以上のロボット研究開発経験を持つ技術者などが2015年に深センで設立した企業。物流ロボットのコンピュータビジョン、運動制御および軌道計画、自主走行および多数のロボットでの協働、マシンラーニング、人とロボットの協働などの技術を応用する研究開発を行っている。ハードとソフトが一体となった物流、製造業向けのロボットソリューションを開発し、物流倉庫サービス企業、EC(電子商取引)企業、メーカーを主な顧客として、ピッキング、運搬、パレタイズ、バンニングなどにおけるソリューションを提供している。
Standard【斯坦德机器人(深セン)有限公司】外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2014年に深センで設立した、3C(コンピュータ、通信機器、娯楽用途を中心とした消費者向け電子製品)、自動車部品工場などの生産現場、物流現場で自立走行ナビゲーションシステム(AGV)、ロジスティックソリューションを提供する企業。創業者チームはハルビン工業大学出身。スマート製造関連の特許を数多く取得し、出願専利件数(特許、実用新案、意匠)は131件(2021年6月時点)で、うち特許は63件、PCT出願は5件である。中国国内で発明特許を最も多く出願するAGV企業の一つでもある。主力製品のOasis自律移動ロボットは磁気テープやインフラ変更が不要で、搭載センサーにより障害物の特定や回避が可能なため、倉庫を改装せずに導入できる。走行速度は時速7キロメートル以上、自動充電により24時間体制で運転が可能。また、マルチタスクにも対応可能で、100台のAGVロボットをコントロールできるマネジメントシステムも提供している。
Syrius【炬星科技(深セン)有限公司】外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2018年に深センで設立した自律走行型ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)、ロボット管理・制御システム・サービスの開発・製造・販売を行う企業。北京にも拠点を持つ。CEOの蒋超氏はシリコンバレー、東京での勤務経験を持つ。軽量貨物を自律移動により運搬するロボットを開発・生産・販売するほか、倉庫の自動化ソリューション・サービスも提供している。小型の空き倉庫であれば、24時間以内に貨物の保管レイアウト設計や指定棚の組み立て、貨物の積込み、倉庫内のロボット走行コースの設計などを完了できる。主な顧客はEC、物流(倉庫)会社が多く、中国大手EC企業にも納品している。
AICROBO Robotics (Shenzhen)【隆博机器人(深セン)有限公司】外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に深センで設立した、自律走行型ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)の製造を行う企業。工場や倉庫向けにAMRによるフレキシブルな物流総合ソリューションを提供している。業界内で知名度の高い賞を数十件受賞しており、EUの安全基準条件であるCE認証を取得している。世界トップ500など国内外メーカーや物流企業とのビジネスが進んでおり、日用化学品、太陽光発電、バスルーム用品、3PL(第三者企業委託による物流管理)、EC、税関、スポーツ用品メーカーなど多岐にわたる。同社には京東、フォックスコン、順豊エクスプレス、BYDなどの出身者が多く、業界経験は平均10年以上、豊富な物流ソリューションの経験などを持つ。
Microblue(深セン市微藍智能科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2018年に深センで設立した、産業用AIのソフト・ハード一体でソリューションを提供する企業。「AIに世界を認知させる」をビジョンに、技術で産業のスマート化を推進している。マシンビジョン応用技術において豊富な実務経験を有し、研究開発したAIビジョンプロジェクト管理システムにより、高効率化、低コスト化、モジュール化により工場、オートメーションインテグレーター、自動化機械メーカー、ロボットメーカーにマシンビジョンと関連ソリューションを提供している。状況に応じてオンプレミス(内部設置)展開、クラウド展開などさまざまな提案も行うなど、顧客ニーズに合わせたインテリジェント設備のカスタマイズが可能。現在、エアバス、フォックスコン、シーメンス、富士通など世界トップ500企業にもサービスを提供している。
Malong(深セン碼隆科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2014年に深センで設立した、画像認識を中心とした人工知能(AI)技術の開発とサービスの提供を行う企業。蓄積された膨大なデータをもとに写真や画像に映し出された物体の画像認証を行うことで、画像内の物体を特定するというAIを活用したディープラーニング画像認識の技術を開発。オーダーメイドのリテールソリューションの開発とサービスを提供している。2017年7月にハワイにおいて開催された、画像認識サービスを提供するスタートアップ企業100社あまりが世界中から集まるコンテスト「WebVision」において、同社は画像認識正解率94.78%で1位を獲得した。
AIATOR(深セン市微埃智能科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
深センで設立した、AIソリューションを提供する企業。コンピュータビジョンとディープラーニング技術を各製造業(自動車、ロボット、電子、紡績など)に提供し、品質検査、溶接、ピッキング、仕分け、積み込みなどで優れた実績を上げている。品質検査では、「ハイブリッドアルゴリズム+マシンビジョン」(注2)により検査スピードを向上し、些細(ささい)なエラーも正確に検出し、製造した部品すべての最高品質を実現した。ロボット分野では、定点溶接、正確な仕分け作業、フレキシブルピックアップ、自動積み込みなど、ロボットの性能や生産プロセスの効率向上、品質管理、生産設備の故障防止などにつなげている。主力製品は溶接機械ロボットと紡績糸の原料投入ロボット。このほかデータ分析により、顧客の購買予測、人流予測、自動アーカイブといったデータ処理・予測も行っている。
BMF(深セン摩方材料科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2016年に深センで設立した、高精度3D プリント技術および関連新材料の研究開発を行う企業。その技術は2014年、2015年連続して、「MIT テクノロジーレビュー」で「ブレイクスルーテクノロジートップ10」と評された。創業者の方絢莱氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)・機械工学部の終身教授で、ナノフォトニクス・3Dナノ生産技術ラボの創設者でもある。もう一人の創業者の賀暁寧氏は、清華大学・電子工学部卒業後、米国ペンシルバニア州立大学博士課程で電子工学を専攻。通信業界とものづくり業界で20年近くの勤務実績がある。2019年10月に日本法人を設立。2~10マイクロメートルの高精度3Dプリント技術を持ち、その精度は高く、3Dプリント機器はMITや東京大学、清華大学、北京大学などの研究室や多くの日米欧企業に導入されている。電子コネクターやチップ製造、医療精密部品、バイオニック材料など運用できる分野は多岐にわたる。

3. 新機能素材・デバイス

HoloKOOK Technology (深セン市光科全息技術有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に深センで設立した、光学フィルムの開発製造を行う企業。東京大学(博士研究員)で学んだ創業者の郭濱剛氏は、創業前10年にわたり日本の大学や企業でフォトニクス関連の研究開発を行った経験を持つ。商業施設、広告メディア、セキュリティセンターなどでよく使われる薄膜型ディスプレイ、携帯電話、パソコンおよび眼鏡用ブルーライトカットフィルム、光学フィルタ材料、光通信についての光半導体材料など光学技術を活用した製品開発・製造を行っている。光を媒介して大容量データを伝送する研究のほか、殺菌・消毒の機能を持つナノ素材の医療用フィルムを開発。マスクや住居用、医療現場などで使用されている。
Shenzhen CONE Technology  (シーワン・テクノロジー・ジャパン株式会社)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2016年に深センで設立した、カーボンナノチューブの開発・製造を行う企業。創業者の鄧飛氏は、筑波大学の工学修士、東京大学の博士号(科学)を取得している。日本学術振興会特別研究員、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)客員科学者、米国デラウェア大学パーマネント研究員を歴任後、同社を起業した。2017年に日本法人を設立。カーボンナノチューブは、鉄鋼に比べて引張強度は100倍、材料の硬さを表す定数であるヤング率は5倍で、密度は6分の1となり、力学的性質は同じ炭素原子からなる炭素繊維生地をも上回っている。眼鏡、テニスラケットなどの日用品から、自動車、精密機器、航空宇宙の分野にまで利用される。同社は太さや長さが均一のカーボンナノチューブを量産できるという技術で、年産100トンの生産能力を有する工場を深センに持つ。
Royole (深セン市柔宇科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2012年に深センで設立した、フレキシブルディスプレイを開発、販売するユニコーン企業。深センに巨大な製造工場と研究開発施設がある。創業者は清華大学卒業後、スタンフォード大学で電子工学博士号を取得した劉自鴻氏。2014年世界初のフレキシブルディスプレイを発表、2018年にはディスプレイの量産化を実現し、世界初のフレキシブル携帯をリリースした。2020年1月には日本法人を設立。世界で最も早く、薄型のカラーフレキシブルディスプレイ、フレキシブルセンサー技術の研究開発・製造・販売を行った。曲がるディスプレイ技術やセンサー技術を活用し、スマートモバイルデバイス、スマート交通、メディア・エンターテイメント、スポーツ・ファッション、スマートホーム、オフィス・教育への応用を進めている。
Shenzhen BASiC Semiconductor(深セン基本半導体有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中国次世代パワー半導体業界のリーディングカンパニーで、シリコンカーバイド(SiC)パワーデバイス(電力の変換や制御を行う半導体)の研究開発と実用化に注力している。現在、深セン市、北京市、南京市、無錫市に生産工場を持ち、2021年2月には日本・名古屋市にSiCパワーモジュールの研究開発センターを設立した。同社のコアメンバーはケンブリッジ大学、清華大学など著名な大学の博士で構成され、国際的な研究開発と生産体制を有している。主要製品はSiCパワーデバイスとその駆動回路で、SiCショットキーバリアダイオード(SBD)、SiC MOSFET、SiCモジュール、SiC MOSFETドライバといった各種デバイスを含めたトータルソリューションを提供する。これらの製品は、家電、産業用電源、新エネ発電、電動自動車などに使われ、装置の小型化・軽量化や省エネ、高効率化を実現している。

4. デジタルガジェット・IoTデバイス

UBTECH Robotics(優必選科技股份有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2012年3月に深センで設立した、AI、人型ロボットの研究開発から製造、販売までを一貫して行う企業。AIとロボットコア技術の応用に向けた研究開発と商業化に注力し、高性能サーボドライブ、制御アルゴリズム、サービスロボット向けのコンピュータビジョンアルゴリズム、AIロボット自律走行の測位アルゴリズムなどのコア技術を開発した。業務用サービスロボット、個人・家庭用サービスロボットなどのシリーズ製品を開発。AI教育、ビジネスサービス、セキュリティ監視、公衆衛生、スマート物流、スマートヘルスケアなどさまざまな業界向けにソリューションを提供している。AIロボット、AI技術を中心に、各顧客にワンストップサービスを提供。「ハードウエア+ソフトウエア+サービス+コンテンツ」といったインテリジェントサービス・エコシステムの構築に取り組んでいる。
Dianmao(深セン点猫科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に深センで設立した、4~16歳の青少年向けにプログラミング教育と製品の研究開発を行うEdTech企業。自社開発のコア技術をベースに、ツール、製品、コンテンツのグレートアップを継続。ユーザーや業界内の提携パートナーと、ツールとコンテンツの開放型エコシステムを共同で構築している。プログラミングツールとカリキュラム、プログラミング教育管理プラットフォーム、ユーザーコミュニティー、プログラミングコンテンツ・エコシステムが一体化したプログラミング教育システムを構築した。プログラムをテキストで記述するのではなく、視覚的なオブジェクトでプログラミングするビジュアルプログラミングで、積み木のようなグラフィック要素をドラッグし、さまざまな機能を重ね合わせることで、ストーリー、動画、ゲーム、音楽をインタラクティブに作成できるのが特徴。子供の論理的思考、計算力、創造性を育むことを目的とし、学習を楽しむことで子供の創造力を向上させ、将来、「未来を創る」ことができる人材の育成を目指す。
Insta360 Japan(Insta360Japan株式会社)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に深センで設立した、360度パノラマカメラ、アクションカメラ、VR撮影用カメラおよびそれに関わるソフトウエアを開発する企業。2019年に東京で日本法人を設立。アクションカメラ、360度パノラマカメラ、VR撮影用カメラは、不動産会社では物件情報を3D・VRモデルにして不動産販売ツールとして、教育や研修の分野では火災や外科手術の現場を3D・VRモデルにして研修や手術の訓練ツールとして活用されている。文化財展示では、博物館の期間限定イベントを3D・VRモデルにして、遠隔地にいる人でも参加できるサービスを提供する。自撮り棒を自動的に消す機能、手ブレ補正、3D・VRカメラを使用した撮影後のデータ処理などのソフトウエアも開発している。
Amsu(Shenzhen) New Technology 【阿木(深セン)新科技有限公司】外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に深センで設立した、リアルタイム心電図など心臓データを測定できるセンサーを搭載した車用ハンドルやアパレルウェアなどを開発・生産する企業。2019年に日本法人である株式会社日本ヘルスケア研究所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを設立。センサー機能は運動負荷心電図のデータを計測し、心臓の異常やリスクなどの警告を出す。車用ハンドルは運転手の心拍変動解析(HRV)を計測し、疲労やストレス、精神状態などを分析し事故や危険運転のリスクを判断する。センサー機能を持つ衣服は、心拍数などを計測するもので、300回以上洗っても正確的にデータを収集できる。同社が開発した専用アプリで分析すると、発病率が高い9種類の心臓関連の疾病を診断できる。
Bixuange(深セン市贔玄閣科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2015年に元東大留学生が深センで設立。温度、湿度、騒音、大気汚染物質など「環境要素」を観測するアルゴリズムおよび観測デバイスを開発する企業。台風がもたらす影響を予測するシステムを開発。データを入力するとシミュレーションができる。結果に基づいて風力が大きいところを特定でき、どのような対策を取る必要があるかなどを判断できる。深セン市政府にサービスを提供している。

5. ヘルステック・バイオテクノロジー

Eureka Biotechnology(深セン市深研生物科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2014年に深センで設立した、遺伝子治療や細胞治療分野における、コア技術とコアプロセスの研究開発を行う企業。コンピュータサイエンス、電子工学、ナノ材料、化学工学などと生命科学との統合、技術革新により、生命科学技術の迅速な発展を推進している。細胞治療分野において、細胞調製コストの高さ、プロセスの複雑さなどの難題を解決するため、細胞調製コストを削減し一貫性を向上させるCellSep PRO完全閉鎖式自動細胞調製システムを開発。遺伝子治療および細胞治療において、ウイルスベクターの作製コストの高さ、一貫性の欠如という問題に対しEuLVシステムを開発。同システムでは、細胞株の安定生産を前提にしてレンチウイルスベクターを生産するため、一単位当たりの生産量は従来の100倍に達する。生産プロセスを50%以上削減できるため、遺伝子治療におけるコア材料の生産コストの80%以上削減が可能となる。
Apostle(深セン市南科征途公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国のシリコンバレー出身の若手技術者が2018年に創立した企業。創立メンバーは、スタンフォード大学、ハーバード大学、デューク大学などの教育・科学研究や世界Top500のバイオ系、医療系企業での経験を持つ。中国の「千人計画」(海外ハイレベル人材の招致)、米国臨床検査技師免許、フォーブスが発表した「30歳以下のエリート」などにも選ばれている。生体試料の調製と臨床検査用製品分野で世界トップレベルを目指し、液体生検技術の感度と正確度を根本的に向上させることを目指している。特許を取得した技術は、Apostle MiniMax®敏邁®遊離核酸の有効保存技術、有効抽出・精製技術など。この技術はがんの早期発見、腫瘍の観察、遺伝子疾患検査、投薬ガイドライン、感染症、臓器移植、CAR-T医薬品研究開発などに応用可能である。
Yi-Yuan (深セン市宜遠智能科技有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2017年に深センで設立した、医療向け人工知能(AI)技術を開発する企業。CTスキャン、レントゲンなどのデータを人工知能で読み取り、病気の診断や肌のコンディション測定などに活用するための画像認識技術を開発している。Alibaba Cloudが主催した医療用AI大会でカリフォルニア大学に次ぐ2位を受賞した。中国の著名な病院と協力関係を持つ。中国では医師不足が大きな問題となっており、欧米などと比べ患者の個人情報や医療現場での新技術導入に対する規制が厳格ではないため、医師不足をAIによって補うなど保健医療にAI技術を積極的に取り入れている。
Healtell(Guangzhou) Medical Technology【瞬知(广州)健康科技有限公司】外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2018年1月に設立した、独自(知的財産権を有する)のマイクロ流体制御MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップポンプの設計と製造を行う企業。広州には本部、上海と深センには研究開発センターを持つ。製品は皮膚に貼り付けるインシュリン・ポンプ、人間用薬液微量注入ポンプ、薬物実験動物用微量注入ポンプ、細胞培養の自動化、液体処理の自動化などバイオ医薬品分野で幅広く活用される。2021年下半期にはマイクロ流体制御MEMSチップポンプから開発した、中国初の、全世界でもトップレベルの薬物実験動物用装着型微量注入ポンプシステムを新発売する予定で、ラット、ハムスター、マウス、ウサギ、犬、豚などモデル動物作製、薬効薬理試験、薬物代謝研究、毒性試験など、幅広い分野で活用できる。
MedicaTech(深セン市邁迪加科技発展有限公司)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2011年に深センで設立した、装着不要の睡眠センサーデバイスおよびアルゴリズムを開発する企業。100以上の知的財産権を取得。「Sleepace享睡」系列の製品は、睡眠解析製品、睡眠改善製品、企業向けのスマート睡眠ソリューションなどがあり、介護、ベビーケア、スマートベッド、IoT、スマート家具など幅広い分野に活用されている。国内外の企業300社以上と提携し、製品は60カ国以上で販売している。装着不要の生理パラメータ監視技術により、心拍数、呼吸、歩行状況、寝返り、睡眠周期、生体リズムなどの指標を監視できる。ユーザーの心拍数と呼吸の異常、睡眠中の一時的な無呼吸状態を即座に通知し、ユーザーの心臓病、呼吸疾患、一次的な呼吸停止、床ずれ、転倒リスクの警告と早期警戒をタイムリーに行うことが可能。特に高齢者の安全確認などに活用される。

注1:
LiDARの解像度はレーザー数、つまりチャンネルと対応しており、数が大きくなるほど解像度が上がり、高精細な点群が取得できる。ハイブリッドソリッドステート式とは、LiDARに機械的な回転装置を搭載することにより360°全方位の測定を可能にする従来のアプローチと異なり、機構部を廃してMEMS(微小電気機械システム)を代わりに内蔵する方式。広範囲の測定能力を確保しつつデバイスの小型化・軽量化、さらにはコスト低減が可能になる。
注2:
AIATORが独自に開発した、従来の画像処理技術とディープラーニングを組み合わせたアルゴリズムの体系。これによりターゲットとなる物体の形状や大小が異なる場合や、ターゲットの背後に映り込んだ背景が異なる場合でも、迅速に検出結果を返すことができる。
執筆者紹介
ジェトロ・広州事務所