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2020年の新車販売台数は大幅減も、中古車市場は活況(チリ)
エコカー推進に期待かかる2021年

2021年4月1日

チリの2020年新車販売台数は、新型コロナ禍を受け大幅に減少した。大規模なワクチン投与計画を進める政府は、2021年6月終わりごろまでに80%以上の国民にワクチン接種を行う意向を示している。この計画が予定通り進めば経済回復を後押しし、新車販売台数もそれに伴って増加することが予想される。チリ政府は、公共交通で電気自動車の利用促進、2022年から始まる排ガス規制「ユーロ6」の導入など、環境に配慮した社会づくりを進めている。2040年までに公共交通の100%、2050年までに個人使用の自動車の40%を電気自動車に置き換える目標を掲げる。

新車販売台数は大幅減も依然高い日本車シェア

チリ全国自動車産業協会(ANAC)によると、2020年の新車販売台数(バスなど大型車を除く)は前年比30.6%減の25万8,835台だった。新型コロナウイルスが国内でまん延したことによる外出規制や、販売店の営業時間の短縮などにより、3月から8月までの6カ月間で販売台数が大きく落ち込んだ。9月からは、規制措置の緩和に伴って、販売台数は新型コロナ感染拡大前の水準近くまで回復した。しかし、年間でみると過去9年間で最低の水準となった(図1参照)。

図1:年間新車販売台数の推移
年間新車販売台数は2012年338,826台、2013年378,240台、2014年337,594台、2015年282,232台、2016年305,540台、2017年360,900台、2018年417,038台、2019年372,882台、2020年258,835台、2021年予測値は356,540台。前年比は2012年1.4%増加、2013年11.6%増加、2014年10.7%減少、2015年16.4%減少、2016年8.3%増加、2017年18.1%増加、2018年15.6%増加、2019年10.6%減少、2020年30.6%減少、2021年の予測値は37.7%増加。

注:2021年は予想値。
出所:チリ全国自動車産業協会(ANAC)

2020年の新車販売台数をブランド別にみると、トップ5はシボレー(シェア10.5%)、起亜(7.4%)、スズキ(7.2%)、日産(7.0%)、現代(6.7%)の順だった(表1参照)。トップ15のブランドのうち、ほとんどが前年比でマイナスとなった。そうした中、中国のMGは28.6%増と販売台数を好調に伸ばした。同社は、チリで乗用車とスポーツ用多目的車(SUV)だけを取り扱っている。中でもSUVの販売台数が近年著しく増加。2020年には日産に次ぐ2位(シェア7.0%)を記録した。ブランド別のトータルの新車販売台数でも、2018年には全体の23位にとどまったのに対し、2019年に16位、2020年には8位まで順位を上げた。この躍進の要因としては、チリ国内のSUV人気もさることながら、MGが他社と比較して低価格帯の車種を取りそろえ、中間所得層への訴求力を高めている点が考えられる。

表1:2020年主要ブランド別新車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 ブランド 2018年 2019年 2020年 前年比
合計 合計 乗用車 SUV 商用車 ピックアップ 合計
台数 台数 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア
1 シボレー 36,166 35,395 15,362 17.1 5,155 5.3 1,800 6.8 4,948 11.0 27,265 10.5 △ 23.0
2 起亜 32,432 28,013 12,269 13.6 4,559 4.7 2,359 8.9 0.0 19,187 7.4 △ 31.5
3 スズキ 33,238 27,880 15,353 17.1 3,108 3.2 280 1.1 0.0 18,741 7.2 △ 32.8
4 日産 30,535 26,774 5,050 5.6 8,228 8.5 172 0.6 4,736 10.5 18,186 7.0 △ 32.1
5 現代 32,710 28,302 8,192 9.1 5,391 5.5 3,776 14.3 0.0 17,359 6.7 △ 38.7
6 トヨタ 29,951 22,799 3,258 3.6 4,859 5.0 60 0.2 6,044 13.4 14,221 5.5 △ 37.6
7 プジョー 19,246 17,911 3,198 3.6 4,315 4.4 4,265 16.1 5 0.0 11,783 4.6 △ 34.2
8 MG 5,406 8,386 3,958 4.4 6,829 7.0 0.0 0.0 10,787 4.2 28.6
9 三菱自動車 15,720 16,504 90 0.1 2,486 2.6 0.0 7,808 17.3 10,384 4.0 △ 37.1
10 フォード 18,480 15,520 207 0.2 4,671 4.8 760 2.9 4,603 10.2 10,241 4.0 △ 34.0
11 マツダ 19,752 16,889 2,925 3.3 4,909 5.0 0.0 1,741 3.9 9,575 3.7 △ 43.3
12 VW 15,925 13,571 4,665 5.2 2,246 2.3 138 0.5 2,324 5.1 9,373 3.6 △ 30.9
13 チェリー 8,261 7,178 1,030 1.1 6,048 6.2 0.0 0.0 7,078 2.7 △ 1.4
14 長安汽車 7,805 8,896 186 0.2 5,198 5.3 1,150 4.3 192 0.4 6,726 2.6 △ 24.4
15 シトロエン 8,879 7,903 2,213 2.5 1,467 1.5 2,072 7.8 0.0 5,752 2.2 △ 27.2
その他 102,532 90,957 11,938 13.3 27,861 28.6 9,635 36.4 12,743 28.2 62,177 24.0 △ 31.6
合計 417,038 372,878 89,894 100.0 97,330 100.0 26,467 100.0 45,144 100.0 258,835 100.0 △ 30.6

注:SUV:スポーツ用多目的車。
出所:ANAC

一方で、日本ブランドの販売台数は、前年比で大きく減少した。とは言え、チリ国内での人気は依然として高い。ブランド別新車販売台数を国別(メーカーの本社所在国別)にみると、日本の割合は全体の30.3%を占め、トップを維持している(図2参照)。中国(シェア:19.3%)、米国(16.8%)、韓国(15.1%)が続く。この上位4カ国で新車販売台数全体の8割超を占めた。

図2:2020年主要国別新車販売台数の割合
日本30.3%、中国19.3%、米国16.8%、韓国15.1%、その他の国18.5%。日本車のブランド数は9で、SUZUKI,NISSAN,TOYOTA,MITSUBISHI,MAZDA,SUBARU,HONDA,LEXUS,FUSO。中国車のブランド数は20で、MG,CHERY,CHANGAN,JAC,GRUPO GREAT WALL,MAXUS,BRILLANCE,FDM,HAVEL,FOTON,KYC,DFSK,BAIC,FAW,GEELY,ZXAUTO,LIFAN,ZNA,JETOUR,GAC GONOW。米国車のブランド数は6で、CHEVROLET,FORD,RAM,JEEP,DODGE,CHRYSLER。韓国車のブランド数は3で、KIA,HYUNDAI,SSANGYONG。その他の国の車のブランド数は23である。

出所:ANACの資料を基にジェトロ作成

販売台数をモデル別にみると、最も販売されたモデルトップ3は三菱自動車のピックアップ「L-200」(7,808台)、トヨタのピックアップ「HILUX」(5,972台)、MGのSUV「MG ZS」(5,886台)だった(表2参照)。トップ15のうち日本車は7車種ランクインしている。スズキの「BALENO」(5,654台)は、乗用車の中で最多の販売台数となった。

表2:2020年モデル別売り上げトップ15
順位 ブランド モデル タイプ 台数
1 三菱自動車 L-200 ピックアップ 7,808
2 トヨタ HILUX ピックアップ 5,972
3 MG MG ZS SUV 5,886
4 スズキ BALENO 乗用車 5,654
5 シボレー SAIL 乗用車 5,208
6 起亜 RIO 乗用車 4,842
7 日産 NP 300 ピックアップ 4,733
8 シボレー SPARK GT 乗用車 4,203
9 日産 VERSA 乗用車 4,081
10 トヨタ RAV4 SUV 3,903
11 起亜 MORNING 乗用車 3,532
12 チェリー TIGGO 2 SUV 3,475
13 日産 KICKS SUV 3,186
14 シボレー ONIX 乗用車 3,148
15 MG MG3 乗用車 3,124

注:SUV:スポーツ用多目的車。
出所:ANAC

新車の供給不足の影響で、中古車販売が急増

苦境に立つ新車マーケットとは対照的に、2020年9~12月の4カ月間の中古車販売台数は、前年同期比1.7倍に増加した(図3参照)。新型コロナ禍により、港に到着した新車の荷下ろしに遅れが生じ、国内マーケットへの供給量が不足したのがその一因だ。消費者の関心が入荷待ちの新車よりも、すぐに入手が可能な中古車へと移り、販売台数の増加につながった。年が明けて2021年1月になっても、中古車販売台数は前年同月比2.1倍の大きな伸びを記録している。この傾向は「コロナ禍」が過ぎ去らない限り、一定期間続くとみられる。なお、チリ政府の計画によると、2021年6月の終わりごろには国民の80%に当たる1,500万人に対してワクチン接種が完了する。このことから、経済状況の改善とともに新車販売台数についても、新型コロナ感染拡大前の水準に回復することが期待される。

図3:新車・中古車販売台数の推移
2019年は、1月新車36,543台、中古車69,836台、2月新車27,912台、中古車77,879台、3月新車30,199台、中古車94,264台、4月新車32,716台、中古車88,308台、5月新車31,204台、中古車84,578台、6月新車28,446台、中古車82,083台、7月新車31,474台、中古車87,403台、8月新車33,059台、中古車89,579台、9月新車37,925台、中古車72,311台、10月新車28,038台、中古車76,783台、11月新車24,276台、中古車71,570台、12月新車31,090台、中古車81,211台。2020年は、1月新車32,104台、中古車68,485台、2月新車25,028台、中古車82,218台、3月新車19,056台、中古車72,431台、4月新車8,906台、中古車32,169台、5月新車8,681台、中古車39,448台、6月8,971台、中古車44,627台、7月新車11,464台、中古車53,596台、8月新車19,037台、中古車91,041台、9月新車31,897台、中古車130,068台、10月新車36,243台、中古車137,383台、11月新車29,486台、中古車134,033台、12月新車27,962台、中古車125,485台、2021年1月は新車24,984台、中古車141,237台。

出所:ANAC、2021年2月3日付「El Mercurio」紙の掲載データを基にジェトロ作成

エコカー販売台数は伸び悩むも、力点が置かれる環境政策

ANACによると、2020年のエコカー(注1)販売台数は、前年比24.4%減の871台だった。うちハイブリッド車(HV)は21.1%減の671台、電気自動車(EV)は41.5%減の127台、プラグインハイブリッド車(PHV)は14.1%減の73台と、それぞれ減少した。

新車販売台数全体に占めるエコカーのシェアは、0.3%と微々たる水準にとどまる。しかし、近年、チリ政府は、エコカーの利用推進を含むさまざまな施策を実行してきた。首都圏州への人口集中による排気ガスの増加を主因とする大気汚染などの環境問題を解決するのが、その狙いだ。自動車関係では、2050年までのカーボンニュートラル(注2)達成という政府目標と関連して、2040年までに公共交通機関として利用されている車両の100%、2050年までに個人使用の自動車の40%をEVに置き換えることが定められている。これら目標の達成に向けて、公共バスへのEVの導入、EVへの乗り替えを促進するためのタクシー運転手らへの補助金支給、充電スタンドの増設、教育機関と連携してのEVに関する専門家や技術者の育成、などの取り組みが並行して進められている。併せて、2020年9月30日付政令40号を官報公示。一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの有害物質の排出上限を定める排ガス規制「ユーロ6」の導入が決定した。同令の公示から、2年後にはまず「ユーロ6b」が、4年後には「ユーロ6c」が、それぞれ導入されることになっている。

一方で、消費者にとってエコカーへの乗り換えのインセンティブとなるような、減税や電気料金の割引などの制度(注3)はいまだ十分には整備されていない。今後に期待が持たれる。

新型コロナ感染拡大以前の水準への回復が期待される2021年

自動車に関連した先進的な取り組みの一例として、自動運転技術を搭載した電動ミニバス運行が試行されたことも見逃せないだろう。2019年12月下旬から3カ月間にわたって、実施された。中南米では初の試みとなる。

 ANACは、2021年の新車販売台数について2020年より約10万台増加し、35万6,540台になるとの見通しを発表している。チリ政府が主導する各種の自動車関連の政策に、新型コロナからの立て直しの渦中にある国内の自動車市場がどのような反応を見せるのか、今後も注目が集まる。


注1:
ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を指す。
注2:
二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロに保たれ、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない状態を指す。
注3:
2017年から個人用に購入される新車に対し、購入価格、燃費(km/lit)、NOx(窒素酸化物)排出量(g/km)に従って課税される「自動車グリーン税」という制度は存在する。
執筆者紹介
ジェトロ・サンティアゴ事務所
岡戸 美澪(おかど みれい)
2017年、ジェトロ入構。現在に至る。

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