2020年の乗用車新車登録台数と生産台数、ともに大幅に減少(ハンガリー)
EVの新車登録台数は急増

2021年8月26日

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年のハンガリーの乗用車新規登録台数と生産台数はともに前年から大幅に減少した。他方、政府の支援策もあり、バッテリー電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の新規登録台数が急増している。

乗用車新車登録台数は2桁減、スズキが首位維持

ハンガリーの民間調査会社データハウスによると、同国の2020年の乗用車新車登録台数は前年比18.9%減の12万8,031台となった。13万台を下回るのは3年ぶり。新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると、スズキは前年比42.6%減の1万4,783台となり、シェアも前年の16.3%から11.5%に低下したものの、首位を維持した(表1参照)。モデル別にみると、同社が国内のエステルゴム工場で生産する(2020年1月27日付ビジネス短信参照)2つのモデル「ビターラ」(登録台数6,882台、シェア5.4%)と「SX4 S-CROSS」(同5,578台、4.4%)が同社の登録台数の8割超を占めた(表2参照)。

表1:メーカー・ブランド別の新車登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー・ブランド 2019年 2020年 シェア 前年比
1 スズキ 25,766 14,783 11.5 △42.6
2 トヨタ 10,963 12,672 9.9 15.6
3 フォード 15,727 11,741 9.2 △25.3
4 ダチア 10,589 10,469 8.2 △1.1
5 シュコダ 12,639 10,186 8.0 △19.4
6 フォルクスワーゲン(VW) 10,901 9,657 7.5 △11.4
7 フィアット 5,544 6,777 5.3 22.2
8 起亜 7,949 6,293 4.9 △20.8
9 オペル 11,265 6,110 4.8 △45.8
10 ルノー 7,559 5,039 3.9 △33.3
合計 (その他含む) 157,909 128,031 100.0 △18.9

出所:データハウス

表2:モデル別の新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー・ブランド モデル 2019年 2020年 シェア 前年比
1 スズキ ビターラ 12,106 6,882 5.4 △43.2
2 スズキ SX4 S-CROSS 9,246 5,578 4.4 △39.7
3 シュコダ オクタビア 6,960 4,929 3.8 △29.2
4 フィアット 500 3,284 4,420 3.5 34.6
5 ダチア ロッジー 2,254 3,915 3.1 73.7
6 ダチア ダスター 4,376 3,806 3.0 △13.0
7 トヨタ カローラ 3,080 3,789 3.0 23.0
8 フォード トルネオ・カスタム 3,156 3,662 2.9 16.0
9 ルノー クリオ 2,838 2,678 2.1 △5.6
10 トヨタ ヤリス 1,766 2,657 2.1 50.5
合計(その他含む) 157,909 128,031 100.0 △18.9

注:太字は日本企業。
出所:データハウス

次いで、トヨタが前年比15.6%増の1万2,672台、シェアを前年の7.0%から9.9%へと伸ばして2位となった。モデル別にみると、特に「カローラ」と「ヤリス」の2つのモデルの登録台数が大きかった。

一方、2位を維持してきたフォードは前年比25.3%減の1万1,741台で、3位となった。他のアジア企業では、韓国の起亜が20.8%減の6,293台だった。

EV販売台数は引き続き増加

乗用車全体の新車登録台数は減少したものの、電気自動車(EV)の登録は増加している。欧州自動車工業会(ACEA)によると、ハンガリーのBEVの新規登録台数は3,046台と、前年比で66.2%増加(表3参照)。これに伴い、乗用車の新規登録台数全体に占めるBEVの割合は、2019年の1.2%から2020年には2.4%に増加した。PHEVも増加し、2.7倍の2,996台となった。EV購入に対する2020年の総額58億8,200万フォリント(約21億7,634万円、1フォリント=約0.37円)の政府補助金もEV増加を支えた(2021年2月2日付地域・分析レポート参照)。

表3:電気自動車新車登録台数(単位:台、%)
項目 2019年 2020年 前年比
外部充電可能な電気自動車の合計 2,939 6,042 105.6
階層レベル2の項目バッテリー電気自動車(BEV) 1,833 3,046 66.2
階層レベル2の項目プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)(注) 1,106 2,996 170.9
ハイブリッド電気自動車(HEV) 9,170 31,772 246.5

注:長距離電気自動車(EREV)を含む。
出所:欧州自動車工業会(ACEA)

BEVの新規登録台数を車種別にみると、起亜の「e-ニーロ」が374台で首位となった(表4参照)。同車種については、航続距離が289キロと455キロの2つのバージョンが販売されているが、前者は価格が1,100万フォリント未満で最大250万フォリントの政府のEV購入補助金を受けることができる点、後者はタクシー車両に適している点がそれぞれ強みとされている(「ベゼシュ」ニュース2021年1月15日)。日産の「リーフ」は前年比20.9%減の358台だった。

表4:モデル別電気自動車新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 モデル 販売台数 前年比
1 起亜 e-ニーロ 374 12,366.0
2 ルノー・ゾエ 370 345.7
3 日産リーフ 358 △20.9
4 フォルクスワーゲン e-Up 274 51.3
5 ヒュンダイ・コナ 226 26.9
6 BMW i3 187 △16.1
7 フォルクスワーゲン e-ゴルフ 185 △48.3
8 マツダ MX-30 153 新規参入
9 シュコダ・シティゴ 142 新規参入
10 ヒュンダイ・イオニック 134 143.6

出所:「ベゼシュ」ニュース(vezess.hu)

政府は2021年もEV購入支援を行うとしている。技術・革新省は2021年5月19日、同年分のEV購入補助制度を発表、6月14日から申請受け付けを開始した。新制度では、総額30億フォリントを車両の購入価格と定員数に応じて、返済不要の補助金として支給する(表5参照)。これにより、ハンガリーのEV市場のさらなる活性化に期待がかかる。

表5:EV購入支援制度の概要
定員数 購入価格
(フォリント)
最大補助額
(フォリント)
最大補助率(%)
5 100万~1,200万 250万 50
1,200万~1,500万 150万 12.5
7 100万~1,400万 250万 50
1,400万~1,700万 150万 11

出所:ハンガリー政府

登録台数で中古車が新車上回る

データハウスによると、2020年の中古車登録台数は13万430台で、前年比16.6%減となった。メーカー・ブランド別にみると、フォルクスワーゲン(VW)が17.5%減の1万5,216台と2019年に引き続き最大で、次いでオペル(同18.5%減、1万3,070台)、フォード(同18.2%減、1万1,871台)が続いた(表6参照)。トヨタは13.8%減の8,303台だったものの、シェアは6.4%と前年比0.2ポイント増となった。

表6:メーカー・ブランド別の中古車登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー・ブランド 2020年 シェア 前年比
1 フォルクスワーゲン(VW) 15,216 11.7 △17.5
2 オペル 13,070 10.0 △18.5
3 フォード 11,871 9.1 △18.2
4 トヨタ 8,303 6.4 △13.8
5 アウディ 7,812 6.0 △21.7
6 BMW 7,211 5.5 △22.0
7 メルセデス・ベンツ 7,035 5.4 △23.5
8 ヒュンダイ 6,013 4.6 △3.4
9 ホンダ 4,850 3.7 △11.1
10 起亜 4,731 3.6 △1.1
合計 (その他含む) 130,430 100.0 △16.6

出所:データハウス

中古車登録台数は2019年には7年ぶりに新車登録台数を下回っていたが、2020年については新車登録台数ほどの減少ではなかったため、再び新車登録台数を上回った(図1参照)。この要因として、2020年春の新型コロナ感染拡大に伴う規制や工場閉鎖の結果、新車生産は減少、消費者も支出に慎重になったことで、低価格の中古車への需要が相対的に高まったとみられる(「MTI」ニュース2021年1月5日)。また、感染拡大に伴う公共交通機関利用に対する人々の不安の高まりもあり、これまで乗用車を購入できない、または購入する予定のなかった層が安価な車の購入に関心を持つようになったことが背景にあるとも指摘された。その結果、2020年上半期の中古車登録台数は新車登録台数を16.9%上回った(図2参照)。しかし、下半期には国内規制の緩和や上半期の繰延需要もあり、新車登録のペースが回復し、9月の国境閉鎖で個人による輸入が減少した中古車の登録台数を上回った(「MTI」ニュース2021年1月5日)。

図1:自動車登録台数の推移(新車・中古車)
ハンガリーの2011年の新車登録台数は45097台、中古車登録台数は31313台、 2012年の新車登録台数は53059台、中古車登録台数は53533台、 2013年の新車登録台数は56139台、中古車登録台数は70700台、 2014年の新車登録台数は67476台、中古車登録台数は96747台、 2015年の新車登録台数は77171台、中古車登録台数は122620台、 2016年の新車登録台数は96555台、中古車登録台数は142002台、 2017年の新車登録台数は116265台、中古車登録台数は155414台、 2018年の新車登録台数は136601台、中古車登録台数は158790台、 2019年の新車登録台数は157906台、中古車登録台数は156475台、 2020年の新車登録台数は128031台、中古車登録台数は130430台。

出所:データハウスの各年統計からジェトロ作成

図2:2020年の登録台数の推移
ハンガリーの2020年1月の新車登録台数は10114台、中古車登録台数は12897台、 2月の新車登録台数は11077台、中古車登録台数は13084台、 3月の新車登録台数は11477台、中古車登録台数は11778台、 4月の新車登録台数は6188台、中古車登録台数は7590台、 5月の新車登録台数は6471台、中古車登録台数は8908台、 6月の新車登録台数は10355台、中古車登録台数は10828台、 7月の新車登録台数は12047台、中古車登録台数は12197台、 8月の新車登録台数は10924台、中古車登録台数は9723台、 9月の新車登録台数は11449台、中古車登録台数は11917台、 10月の新車登録台数は11951台、中古車登録台数は11341台、 11月の新車登録台数は13265台、中古車登録台数は10197台、 12月の新車登録台数は12713台、中古車登録台数は9970台。

出所:データハウスの統計からジェトロ作成

新型コロナ感染拡大の影響で生産台数も2桁減

ACEAによると、ハンガリーの2020年の乗用車生産台数は前年比17.5%減の43万2,603台となった。新型コロナ感染拡大による完成車メーカーの工場停止などの影響がでた。

メーカー・ブランド別にみると、メルセデス・ベンツが16万台で首位、アウディ、マジャールスズキが続いた。メルセデス・ベンツ、マジャールスズキがそれぞれ前年比15.8%減、33.4%減と2桁の減少となる中で、アウディは5.9%減の15万5,157台と比較的減少幅が小さかった。これは、2019年夏にジュールで生産が開始されたアウディQ3スポーツバックの生産台数の増加(前年比3.1倍)がQ3の生産減(約3万台)を相殺したことによる(表7参照)。

表7:メーカー・ブランド・モデル別生産台数(2020年)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
車種・モデル 2019年 2020年 伸び率
メルセデス・ベンツ
(CLA、CLAシューティングブレーキ、Aクラス)(注1)
190,000 160,000 △15.8
アウディ・ハンガリア 164,817 155,157 △5.9
階層レベル2の項目Q3 120,230 94,659 △21.3
階層レベル2の項目Q3スポーツバック 15,300 47,232 208.7
階層レベル2の項目TTクーペ 11,791 6,793 △42.4
階層レベル2の項目TTロードスター 3,208 1,853 △42.2
階層レベル2の項目A3カブリオレ 7,302 4,620 △36.7
階層レベル2の項目A3リムジン 6,986
マジャールスズキ 168,774 112,475 △33.4
合計(注2) 523,591 427,632 △18.3

注1:メルセデス・ベンツの生産台数は概数。
注2:「合計」は各社発表の生産台数の合計であるため、ACEAの発表とは一致しない。
出所:各社発表からジェトロ作成

執筆者紹介
ジェトロ・ブダペスト事務所
バラジ・ラウラ
2000年よりジェトロ・ブダペスト事務所に勤務、ハンガリー国内の市場調査を担当。英語、数学の修士号のほか、日本語検定1級、経済貿易大学の学士を有する。