インドにおける日本食品の商機
現地輸入者の視点から

2021年3月25日

インドの主要都市を中心に日本食品の輸入・卸売りを手掛けるDaily Need Exim(以下、Daily)は2月19日、自社EC(電子商取引)サイト「MAIN DISH.in外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を開設し、小売業に本格参入した。インドでは一般的に、日本産食品を現地で調達することが難しく、在留邦人は一時帰国や休暇の旅行先などで日本食品をまとめて購入したり、食料送付制度を利用したりしている。DailyのECサイト開設により、在印邦人の日本食品調達が容易になることが見込まれる。同社で最高経営責任者を務める高橋一弥氏に、インドにおける日本食品の商機について話を聞いた(2月24日)。

インド主要4都市を拠点に、今後拡大予定も

質問:
日本からインドへの食品輸出は増加傾向にある(図1参照)。貴社の概要とビジネスモデルは。
答え:
食品の輸入・卸売業を営む内資法人として、2017年にインドで登記した。食品は日本産を中心として、ベルギー産やタイ産、インド産などを幅広く取り扱っている。ただし、すべての食品を自社で輸入しているわけではなく、一部は他の輸入業者から購入している。商品の主な納品先は、現地の外資系ホテルや高級レストランで、日本食レストランに限らない。現在、拠点はデリー、ムンバイ、ベンガルール、コチといった主要都市を中心に計4カ所ある。インドの主要都市をカバーするために、チェンナイ、コルカタにも拠点を増設したいと考えている(図2参照)。
図1:日本からインドへの食品輸出額の推移
2016年37億1,210万円、2017年39億1,595万円、2018年46億9,770万円、2019年49億4,452万円、 2020年65億109万円と増加傾向にある。

注:輸出統計品目表のうち、食品に該当する分類(第2~4、7~11、15~22類)の輸出金額を各年1~12月で積算した。
出所:財務省貿易統計からジェトロ作成

図2:Daily Need Eximの拠点図(計画含む)
インドの地図にDaily Need Eximの拠点をプロットしている。 現在のインド拠点は、デリー、ムンバイ、ベンガルール、コチの4拠点。今後コルカタ、チェンナイでの増設を計画している。

注:現在は4カ所に拠点を置き、チェンナイ、コルカタでの増設も計画している。
出所:同社ヒアリングからジェトロ作成

質問:
インドにおける日本食品の商機は。新型コロナウイルスの影響はあるか。
答え:
当社ビジネスに関して言えば、売り上げは堅調に推移してきており、商機は十分にあると思う。上述のとおり、当社では日本食レストランに限らず食品を供給しており、感覚的には、その8割以上が日本人ではなく、インド人に消費されている。今後、富裕層人口の増加が見込まれるインドにおいて、現地の食生活に日本食材が浸透していけば、さらなる販売拡大が見込めるだろう。新型コロナウイルスの影響としては、輸送代が以前の2倍以上に高騰しているために、商品価格を上げざるを得ないことが大きな痛手となっている。他方で、在印邦人がこれまで利用していた日本からの食料送付制度が新型コロナの影響で滞っており、インド国内で調達可能な日本食品の供給元として、弊社に対する需要が拡大している。

コールドチェーンなどに課題、今後小売りにも注力

質問:
インドへの食品輸入手続きの流れは。また、輸入に関する障壁や日本・インド包括的経済連携協定(日印CEPA)の利用は。
答え:
追加的に動物検疫証明書の申請が必要な水産物などを除き、一般的にインドに食品を輸入するために、輸入側では、輸入業者コード(Importer-Exporter Code: IEC)と食品安全基準局(Food Safety & Standards Authority of India: FSSAI)発行のランセンスの取得が必要。輸入後の流れとしては、毎輸入時に、FSSAIが輸入品のサンプルを回収し、検査する。表示ラベルや梱包(こんぽう)の状態など、同局の定める基準に違反していなければ、4営業日ほどで、検査結果および非該当証明書(No Objection Certificate: NOC)が発行され、通関となる。
障壁については、まず、コールドチェーンが発達していないことが挙げられる。当社では日本から冷凍水産品などを輸入しているが、日本からの輸出時に、発泡スチロールにドライアイスを入れて梱包するなど、商品の劣化を防ぐ工夫をしている。また現在、当社ではデリーなどで輸入通関をした後、ムンバイなど他都市へ空輸しているが、輸送の遅延や梱包の破損などが、年に複数回発生している。
日印CEPAについては、例えば、しょうゆは同EPAを活用すれば、基本税率は30%から2.7%(2021年4月1日からは0%)まで関税が軽減されるメリットがあるが、当社では現状、同EPAの恩恵を受けることができる商品の取り扱いが少なく、利用は限定的だ。
質問:
今後のビジネスプランは。
答え:
2月19日に、業者および消費者向けに自社ECサイト「MAIN DISH.in外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を開設した(図3参照)。現在は試験的な導入のため、商品は既存の業務用規格が中心で、販売地域も上述の4拠点周辺に限定している。まずは日本人をターゲットにして、自社サイトの広報に力を入れたい。そして、徐々に小売用規格の商品もそろえつつ、将来的にはインド全国に販売網を広げていきたい。
図3: 2月中旬にオープンしたDailyの自社ECサイト
「MAIN DISH.in」
Daily Need Eximの自社ECサイト「MAIN DISH.in」のトップページ画像。 「Japanese Food Online Shop」の記載に、日本食の写真がある。

出所:同社ホームページ

執筆者紹介
ジェトロ・ムンバイ事務所
榎堀 秀耶(えのきぼり しゅうや)
2016年、ジェトロ入構。サービス産業部、ジェトロ・チェンナイ事務所、ジェトロ神戸、デジタル貿易・新産業部を経て、2020年12月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ムンバイ事務所
比佐 建二郎(ひさ けんじろう)
住宅メーカー勤務を経て、大学院で国際関係論を専攻。修了後、2017年10月より現職。