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エレクトロニクスが増加、多様化進むタミル・ナドゥ州への製造業進出(インド)
中央政府と州政府の投資優遇政策で相乗効果

2021年4月8日

インド南部タミル・ナドゥ(TN)州は、新型コロナウイルス禍の中でも好調な外国直接投資(FDI)の流入が続いているが、昨今は進出する製造業の分野に変化が見られる。TN州は自動車産業の集積地として「インドのデトロイト」とも呼ばれているが、それに加えて、エレクトロニクス分野の進出が増加している。本稿では、最近のTN州への投資動向や製造業のための優遇政策、州の投資誘致体制などについて報告する。

携帯電話関連の事業投資相次ぐ

TN州は、ヒュンダイや日産、ヤマハ、ダイムラー、BMW、フォード、プジョーシトロエンなどの自動車・二輪車メーカーと自動車部品メーカーを中心に製造業が集積している。しかし近年、自動車関連以外では、エレクトロニクス、特に携帯電話関連の事業進出・拡大が目立つ。電子機器受託生産(EMS)大手である台湾のフォックスコンは、TN州都チェンナイの近郊でiPhone12の生産を発表、同じくiPhoneを生産する台湾のペガトロンも工場建設中だ。携帯電話用充電器を製造するフィンランドのサルコンプも旧ノキアの工場を買収して進出している。

EV関連企業を積極的に誘致

自動車関連分野では、TN州が主要6都市の全てのタクシーや二輪車、三輪車を、2030 年までに電気自動車(EV)にするという目標を掲げていることもあり、特にEV関連の進出が増加している。ヒュンダイなど既存の進出自動車メーカーのEV製造計画に加え、地場配車サービス大手のOLAがTN州に世界最大の電動二輪車工場を着工外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 。総面積500エーカーの土地に総額20億ドルの投資を計画しているという。第1期計画は電動スクーターを年間200万台製造、将来には年間1,000万台を目指し、バッテリー製造設備も併設する予定だという(「ザ・ヒンドゥ・ビジネスライン」紙3月8日)。同社は配車サービスを提供するにとどまらず、EVメーカーとして開発から製造・販売までのバリューチェーン全体の構築を見据えており、近い将来には小型EVの製造も視野に入れている。隣接地にはサプライヤーパークが設置される予定で、現地調達率も高める方針だ。

中央政府、州政府とも製造業の進出を後押し

こうした進出傾向は、インド政府が製造業振興のための「メーク・イン・インディア」や、経済のデジタル化を目指す「デジタル・インディア」を推進するために打ち出した「生産連動型奨励制度(PLI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.91KB) 」と、エレクトロニクス分野でこれを補完するインセンティブスキームである「電子部品・半導体製造促進政策(SPECS)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.93KB) 」が一定の効果を発揮しているとみられる。加えて、中央政府の政策とTN州政府による投資優遇政策がうまく連動していることもあり、2020年にPLIの奨励金支給対象に選ばれた携帯電話・電子機器・電子部品企業の中でも数社がTN州に進出を決定している。TN州政府は2020年に「電子機器産業振興政策」(2020年9月17日付ビジネス短信参照)や「EV政策」(2019年9月27日付ビジネス短信参照)を発表し、2021年2月には「TN州産業政策2021」(2021年2月22日付ビジネス短信参照)により、州としてのインセンティブも拡充している。 製造拠点を他国からTN州に移転する場合にも新たにインセンティブを用意して、積極的に投資を誘致する姿勢だ。PLIの対象範囲はその後、自動車・同部品や家電、再生可能エネルギー、先端化学、医薬等にも拡大しており、今後は日系企業が得意とする分野など、さらに多様な分野の産業の進出も期待される。

州議会議員選挙による投資誘致政策への影響

新型コロナ禍の2020年でも、パラニスワミTN州首相は自ら、アップルやアマゾン、サムスンなどのトップに投資インセンティブの提案を送り、同州への誘致に積極的に取り組んできた。2021年4月の州議会議員選挙で10年ぶりに政権交代の可能性もあるが、与野党の政策に大きな違いは従来なく、同州の積極的な投資誘致政策は今後も継続されるとみられる。一方、唯一懸念されるのは、現在の最大野党・ドラビダ進歩連盟(DMK)が政権を奪取した場合の公約の1つに、「TN州の各企業に対し、州内からの雇用比率を75%以上とすることを義務付ける」という政策を掲げている点だ。隣接するアンドラ・プラデシュ州でも、2019年の政権交代を機に同様の要件が義務付けられており、既進出企業にとっては課題の1つとなっている。

執筆者紹介
ジェトロ・チェンナイ事務所 海外投資アドバイザー
奥野 幸彦(おくの ゆきひこ)
2017年から現職。

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